WiMAXかLTEか各社の次世代戦略はまだまだ不透明
このように、Sprintに要所を握られているClearwireだが、もう1つの懸念が、いまだに不明確なSprintの4G戦略だ。VerizonをはじめKDDI、さらにChina Telecomと、世界の有力なCDMAキャリアがLTEの導入を明らかにしている。WiMAXの強力なプッシュ役だったロシアのYotaもLTEとの混合戦略にシフトしている。
現在、SprintのWebサイトの「4G」のセクションには「Clearwireと提携し、4G WiMAXを提供する」と書かれているが、カバーエリアに加え、現時点で提供する端末は3種類(「Samsung Epic 4G」「HTC EVO 4G」「HTC EVO Shift 4G」)と課題は多い。対するVerizonは、LTEネットワーク構築と端末拡充を急いでいる。そういったことから、SprintがLTEネットワークを構築する企業のLightSquaredと組むという噂や、T-Mobile USA(GSMキャリア)の買収話も根強かった。
当のSprintは、まだ計画を練っている段階という。3月9日、「Deutsche Bank 2011 Media and Telecom Conference」でスピーチした同社CEOのDan Hesse氏は、WiMAX/Clearwireの将来性を強調し、「検討している全ての選択肢に、WiMAXとClearwireは入っている」と述べたとReutersなどが報じている。
その翌日(10日)にClearwireが発表した新人事によると、前述のMorrow CEO、それに最高営業責任者(CCO)のMike Sievert氏、最高情報責任者(CIO)のKevin Hart氏という、3人の“C”がつくレベルの幹部が辞任する。暫定CEOは、会長のJohn Stanton氏が務めるが同氏のもとで難航していたSprintとの契約交渉が進むと期待されている。同時に赤字対策の一部となっていた周波数帯売却にも着手すると見られており、有力な買取先としてT-Mobile USAが挙がった。
そして20日、そのT-Mobile USAを、AT&Tが買収することが発表された。ともにGSM系キャリアで、モバイルブロードバンドではHSPA+を提供している。CDMAキャリアのSprintと組むよりも納得がいく組み合わせだが、これまで噂がなかっただけに驚きが生まれた。規制当局の承認が最初の課題となり、その後、合併後の戦略が明らかになるだろう。アメリカのモバイル業界はスマートフォンに加え、WiMAXとLTEという次世代技術の発展でも注目の市場だ。4Gに向けた激動はまだ続きそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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