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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第28回

「ブルーレイDIGA」がライバルを突き放す怪物に進化!?

その価値はBDレコ2台超! パナの「DMR-BZT900」

2011年03月09日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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プレミアム仕様ならではの
こだわりの音質

 ここからは画質・音質をチェックしていく。本機は最上位モデルならではのプレミアム仕様となっているが、基本的な機能は従来機どおり。

 色情報を補完する「リアルクロマプロセッサplus」や、細部の質感を豊かにする「ディテール・クラリティ・プロセッサ for BD」などの高画質回路に加え、192kHz/32bit対応のD/Aコンバーターや各種高音質パーツ、オーディオ回路用のOFC電源トランスなどの高音質化が図られている。

 さらに内蔵HDDはAV機器用に開発された選別品が使われている。具体的には、ディスクの偏心による振動の発生が少ないものを選ぶことで、振動の影響による音質劣化を抑えている。BZTシリーズのほかのモデルと比べ、本機だけが突出して高価だが、それに見合うだけのこだわりの内容だ。画質・音質にこだわる人には気になるところだろう。

新搭載された「ハイクラリティサウンド」は音声設定で選択できる。アナログ映像出力を使用しない場合は、常に「有効」でいいだろう

新搭載された「ハイクラリティサウンド」は音声設定で選択できる。アナログ映像出力を使用しない場合は、常に「有効」でいいだろう

ソフトの再生中に使用できる再生設定で、音声の「ハイクラリティサウンド」の「入/切」を選択できる。それぞれの音質差を聴き比べてみるのも一興

ソフトの再生中に使用できる再生設定でも、ハイクラリティサウンドの「入/切」を選択できる。それぞれの音質差を聴き比べてみるのも一興

 今回、新たに追加された「ハイクラリティサウンド」は、HDMI出力のみでテレビやシアター機器と接続している場合など、音質への影響が出やすいアナログ映像信号出力をカットする機能だ。映像のD/Aコンバーターの動作を止めることで、より高音質になる。

 この機能は、S/N比の向上など音質的な効果も優れているが、実はそれ以外に政治的な背景も見え隠れする。著作権保護規格「AACS(Advanced Access Content System)」の規定変更により、今春発売のBDレコーダーはすべて、テレビ放送など著作権保護のかかったハイビジョン映像信号をD端子から出力できない。このため、アナログ映像回路の必要性は低くなっているのだ。

 ブラウン管テレビなど、すべてのテレビとの接続をするためにはアナログ映像回路を省略することはできないが、HDMIケーブル接続によるハイビジョンテレビとの接続では不要なものは使わない方がいいだろう。

真空管アンプの柔らかい音質をエミュレートした「真空管サウンド」は、従来の3つから6つに増えた。個人的に好ましかったのは、高域がしなやかで女性ボーカルの高音の伸びが美しかった「4」

真空管アンプの柔らかい音質をエミュレートした「真空管サウンド」は、従来の3つから6つに増えた。個人的に好ましかったのは、高域がしなやかで女性ボーカルの高音の伸びが美しかった「4」

 オーディオ機能の改善も見られる。真空管アンプ風の音質を楽しめる「真空管サウンド」が3つから6つに増えたのだ。好みの音質を選べるなど、マニアックではあるが趣味性の高い機能である。

 なお、デジタル放送の「AAC」音声など、圧縮音声の失われた情報を補完する「マルチチャンネル デジタルリ.マスター」と同様に、出力信号は96kHzにアップサンプリングされる。

 ちなみにマルチチャンネル デジタルリ.マスターと真空管サウンド、ともにデジタル音声出力を「リニアPCM」にしないと適用されない。筆者自身、真空管サウンドが初搭載された「DMR-BW970」を初めて使ったときに勘違いしたのだが、AVアンプと接続する場合など、当たり前のようにデジタル出力を「ビットストリーム」に設定してしまい、真空管サウンドを切り替えても音質がまるで変わらず「俺の耳が悪いのか!」と、ショックを受けた覚えがある。

 また、マルチチャンネル デジタルリ.マスターのような圧縮音声の補完を行なう機能はAVアンプにも備わっていることが多いので、本機でのリニアPCM出力+真空管サウンドと、ビットストリーム出力+AVアンプでの圧縮音声補完との音質の違いなどを聴き比べてみると面白いだろう。

今や定番となった「シアターモード」。本機でも、BDソフトなどの再生時に「入/切」ができるようになり、予約録画中でもBDソフトなどの再生がしやすくなった

今や定番となった「シアターモード」。本機でも、BDソフトなどの再生時に「入/切」ができるようになり、予約録画中でもBDソフトなどの再生がしやすくなった

 総合的に本機の音質について感想を述べると、一般的なHDMIケーブル1本で伝送する場合でも、こだわった音質チューニングや「シアターモード」の効果もあり、実体感のあるリアルな音が再現される。

 基本的な機能としては従来機を踏襲したものではあるが、音質チューニングなどはさらに練り込まれた印象で、特に中域の密度感の向上やS/N比の向上による細かな音の再現性が高まったと感じた。

 これにより、クラシックのコンサート(小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラによる「幻想」)では、各楽器の音色をリアルに描き分けるだけでなく、弦楽器群の艶やかな音色やフルートの響きの余韻まではっきりと再現され、ホールの音の響きもより豊かになったと感じる。

 低音域の伸びもしっかりとしているが、しなやかさと力感を両立した質の良い低音となっており、ティンパニの力強い響きだけでなく、マレットの違いによる音の差まで描き分ける。元祖「プレミアム仕様」であるDMR-BW970ユーザーとしては、かなりの進化を感じてしまう熟成された音だ。

HDMI出力の切り替え画面。HDMI(SUB)の出力を音声専用とすることで、MAINでは映像のみ、SUBでは音声のみの出力となり、相互の干渉による音質劣化を抑えた再生が可能になる

HDMI出力の切り替え画面。HDMI(SUB)の出力を音声専用とすることで、MAINでは映像のみ、SUBでは音声のみの出力となり、相互の干渉による音質劣化を抑えた再生が可能になる

 これが2系統のHDMI端子による映像/音声の独立出力では、さらに音の明瞭度が高まり、各楽器の音色の違いが分かるし、調和してひとつの和音となった旋律の美しさがよく表われる。映画などでも、ダイアローグの明瞭度やBGMの迫力だけでなく、足音や衣擦れといった効果音のリアリティが増し、映画の音としての実体感を高めている。

 先にBDレコ2台分の録画機能と述べたが、本機の場合はこれにBDプレーヤーまで兼用できると言っていい。30万円といえども3台分となればかなりのお買い得感だ。

こだわりの音質でCD再生も楽しめるよう、CDのリッピングではリニアPCMも選択可能。CDをそのままの音質で取り込んでオーディオプレーヤーとして使える

こだわりの音質でCD再生も楽しめるよう、CDのリッピングではリニアPCMも選択可能。CDをそのままの音質で取り込んでオーディオプレーヤーとして使える

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