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日本の企業を変える!最新SaaS導入事例 第4回

アクセス管理を強化したGmailを導入し、MLも追加

Google Appsの機能不足をカスタマイズで補ったネットプライス

2011年03月02日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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サイオス 国内営業戦略ユニット 戦略ユニットセールスコンサルティング部長 シニアアーキテクト 中田寿穂氏

 「たとえば、エンドユーザーがGmailのIDとパスワードを知っていれば、外から直接使えてしまいます。しかし、SAML認証システムを利用することで、認証システムをクラウドから切り離すことができ、アクセスログを取得したり、各企業のセキュリティーポリシーにあわせた、認証方法やアクセス制御が可能となる」(サイオス 国内営業戦略ユニット 戦略ユニットセールスコンサルティング部長 シニアアーキテクト 中田寿穂氏)という。これにより、「外出先からのGmail利用」は禁止といったアクセス制御やアクセスのログ収集を実現できるようになった。セキュリティーポリシーは緩めることもなく、クラウドへのセキュアなアクセス環境が可能になったわけだ。

 3つ目は、社内用のメーリングリスト(ML)の機能だ。複数ユーザーで情報共有するのに便利なメーリングリストは、ネットプライス内でもフル活用されている。しかし、導入当時のGoogle Appsには、Subjectにメーリングリスト名と連番が振られるという日本独自の機能が実装されてなかったこともあり、送受信経路にメーリングリストサーバーを設置することで、従来と同じ使い勝手を実現した。

苦労したメールの移行とGmailの仕様

 データセンターの移転は2009年の5月末と決まっていたが、サイオスが受注を受けたのは1月後半の段階。かなり短いスケジュールで、インフラ開発チームはデータセンター移転の作業に追われていた。しかし、設計やインフラ構築に関しては「日本大学等での実績もありましたし、やることやポリシーも明確だったので、3カ月くらいで十分でした」(中田氏)とのこと。

グループソリューション本部 インフラ開発チーム 高橋啓輔氏

 むしろ苦労したのが、メールの移行だった。インフラ開発チームの高橋啓輔氏は、「メールクライアントとGmailを併存させる期間も設けたのですが、最終的にはGmailに完全移行しないと導入の意味がありません。ですが、(メッセージをローカルにダウンロードする)POP3の場合、不要なメールの削除やアップロードを手作業で行なう必要がありました。Outlookのようなメジャーなクライアントであれば、移行ツールもあるのですが、市販のメーラーを使っているユーザーも多く苦労しました」と話す。Gmailではメール移行用のAPIもあるのだが、ツールを開発するとコストがかかるというデメリットがあった。

 鈴木氏によると、メーリングリスト移行の苦労もあったという。「たとえば、200件近くあるメーリングリストは件名への連番ありなし、BCCの可否などポリシーがさまざまでしたし、使っていないメーリングリストの棚卸しも必要でした。基本的には設定を引き継いで移行するように依頼したため、サイオスさんにはご迷惑をおかけしました」と語る。

 また、使い始めて気が付いたGmailの仕様にも悩まされた。「Gmailの場合、スレッド表示がMessage-IDではなく、Subjectをベースに行なわれるので、今までと異なったメールがスレッドとして扱われてしまいました」(鈴木氏)という。これに関しては、ユーザーからもメールが消えてしまったというクレームが入ったりして、かなり苦労したようだ。その他、振り分けではなく、ラベルを用いる点がなかなか浸透しなかった点や、IE6とGmailの相性が悪い点なども問題だったという。

検索がとにかく高速
スマートフォンでも手軽に使える

 このように苦労はそれなりにあったが、すでに運用を開始してから、1年以上が経過し、ネットプライスの社内ツールとしてしっかり根付いたようだ。鈴木氏は「なにしろ検索が速いですし、ケータイやスマートフォンでも手軽に使えるのがメリットです」とエンドユーザーの声をこう代弁する。また、ユーザー追加や削除等も容易で、運用管理の面でも貢献している。Gmailに関してはバージョンアップで使いにくくなったという経験はなかったという。

 同社は営業支援向けSaaSとして多くのユーザーを集めるSalesforceも導入しているが、「クラウドが最適だったら使いますが、システムの要件によって柔軟に使い分けたい」(鈴木氏)ということで、クラウドに過度な期待はしていない。今後は多くの組織で、この選球眼が要求されることになるだろう。

カスタマープロファイル

組織名:株式会社ネットプライス ドットコム
業種:インターネットビジネス
代表取締役社長 兼 グループCEO: 佐藤 輝英
地域:東京都
創立:1999年(平成11年)
従業員:347名(グループ連結子会社合計・2010年9月末現在)
Webサイトhttp://www.netprice.co.jp


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