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噂の高速インターフェースを解説

インテル「Thunderbolt」はノートPCを変えるか

2011年02月25日 22時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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メタルケーブルと光ファイバー

 Thunderboltは、前述のように光ファイバーをサポートすることを前提としながら、現状の仕様ではメタルケーブルもサポートし、しかもそれで10Gbpsの転送速度を実現している。1月に米メディアによって報じられた情報によれば、当初の予想に反してメタルケーブルで高パフォーマンスが実現できたため、Thunderboltの初期はメタルケーブルのみのサポートになる予定だという。

Thunderboltケーブル。当初はメタルケーブルのみとなる。ロゴに注目

 実際、Thunderboltに初めて対応したMacBook Proではメタルケーブルのみのサポートにとどまっており、現状ではまだ光ファイバーによる転送には対応していない。インテルはその理由として「光ファイバー採用による高コスト化」を挙げており、対応モジュールの量産でコストを下げる段階には達していないことを示唆したほか、ユーザーに初期段階で光ファイバーのインターフェースを受け入れてもらうことが難しいと判断した可能性がある。

 光ファイバーとメタルケーブルにはそれぞれ一長一短がある。光ファイバーは高速通信のサポートが可能で、メタルケーブルに比べて到達距離が長くなる反面、ケーブルの取り回しが難しく、モジュールの量産問題などから高コストになりがちだ。メタルケーブルはノイズや信号処理の関係でパフォーマンスや到達距離で光ファイバーに劣るものの(光ファイバーの100mに対し、メタルケーブルでは最長3m程度)、取り回しが容易で、コスト面でもアドバンテージがある。

 そして見逃されがちだが、メタルケーブルには「電力供給が可能」という最大のメリットがある。Thunderboltのポート(もしくはThunderbolt Controllerを通過して分配されたコネクター)にバスパワーで駆動するデバイスを挿入すると、別途電源供給なしでデバイスが利用できる。USB接続のポータブルHDDなどでもお馴染みの機構で、お世話になっている方は多いはずだ。

 この特徴はThunderboltにも引き継がれており、メタルケーブルの利用で接続デバイスのバスパワー駆動が可能になる。ここでは10W給電に対応するため、iPadのようなUSB充電要件が厳しいデバイスでも充電しながらの利用が可能だ(あくまでたとえ話であり、現在のiPadはThunderboltに接続できない)。ただし、米報道などによれば、このバスパワー給電に対応するのはメタルケーブルのみで、将来の光ファイバーではサポートされないとインテルでは説明している。

MacBook ProとThunderbolt

 今回、初の対応ノート製品はアップルの新型MacBook Proとなったわけだが、「アップルは以前からThunderboltへの開発投資を行なっている」、「ローンチカスタマーとして対応製品を発表する」という噂が何度も持ち上がっていた。実際、開発初期から関わっていたのではないかと思ってしまうほど、アップルの要望がいくつか盛り込まれる形でThunderboltが実装されたような形跡がみられる。

 まず、アップルが広く採用しているDisplayPortとの互換性が重視されており、MacBook Proにおいては従来のMini DisplayPortの位置にThunderboltポートが配置されている。変換アダプターを利用することでDVI/HDMI/VGAや他のインターフェースの出力が行なえるほか、1本のThunderboltケーブルを通して最大2台までのディスプレーを同時制御できるとしている。ただし、DisplayPort 1.1対応デバイスはデイジーチェーンの最後に配置する必要があり、その可否はディスプレー側の対応次第のようだ。

24日に発表された新型MacBook Proのインターフェース群。従来Mini Displayポートが配置されていた場所に、Thunderboltポートが置かれている

 また、以下に挙げるインテルの資料にもあるように、同社が当初想定するターゲットはデスクトップPCよりもむしろノートPCにある。カメラや外付けHDD、ディスプレーなど各種周辺機器をノートPCに接続するなど、単一のポートを介してシンプルかつ高速にデータを転送できるメリットを想定しているようだ。

インテルが想定するThunderboltのメリットと用途。当初想定しているターゲットをノートPCとしていることがうかがえる

 図の左端にハブのような装置が描かれているが、ドッキングステーションの形態も想定され、「異なるデバイスごとに異なるインターフェースをつなぎかえる」といった手間を低減する狙いがあるとみられる。こうしたシンプル化の思想はアップルが好むものだが、新型MacBook ProはUSBだけでなく、Firewireや有線LANポートなど、あらゆるポートを搭載している状態であり、シンプル化からは幾分離れた設計となっている。もし今後Thunderboltが普及してこなれてくるのであれば、こうした複数のポートをひとつに統合する仕組みが広がるのかもしれない。


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