ネットブックのブームは過ぎ去ったが、低価格なパソコンに対するニーズは決してなくなっていない。そんな市場で有利なのは、やはり調達量の多い「ワールドワイドモデル」を持つ企業だ。
今回試用するデルの「Dell Vostro V130」(以下Vostro)は、主に中小企業市場を狙った低価格モバイルノートであり、まさにこの条件にあてはまる。2010年末に発売された機種ではあるが、対価格性能比やデザインにおいては、いまだ見るべきところのある製品である。
なおVostroは、単独の機種名ではない。実際にはモバイルノートからデスクトップパソコンまで、さまざまな特性を持つ「中小企業向けパソコン」のブランド名だ。今回試用したV130は、その中でも最もモバイル性の高い、13型・1スピンドルモデルである。本稿では、特に断りがない限りV130のことだけを扱う。
驚くほどよくできた「シンプルなデザイン」
デルにとっては誠に失礼な話になるだろうが、多くのコンシューマーユーザーにとってデルは、「個人が買うパソコンとして、デザインに多くを期待する」タイプのメーカーではないだろう。どちらかといえば大柄で、よく言えばシンプル、悪く言えば無味乾燥な製品を出すメーカーという印象の方が強いのではないだろうか。特に「企業向け」というと、プラスチックボディーのいかにもな製品を思い浮かべがちである。
しかしVostroは、その印象とはずいぶん異なるルックスの製品だ。アルミ合金製の精悍なボディーは、低価格機という印象を感じさせない、いい作りだ。パネルを閉じた前面や背面は台形というか、金属板を斜めに切断したような形状がモチーフとなる。シンプルに見えるが意外に凝った作りだ。厚みは最薄部16.5mmで、最厚部でも20mm以下。底面が完全にフラットで美しい。
1スピンドルモデルなので、光学ドライブベイはない。面白いことに、端子類は本体左右にはほとんどなく、背面に集中している。特に注目は背面だ。電源コネクターがあるのは珍しくないが、USBからHDMI出力まで、ほとんどの端子類が背面にある、という製品はほとんどない。
この配置は頻繁にケーブルを抜き差しする場合、天板が邪魔になるのであまり使いやすいものではない。他方で、持ち歩く時にしかケーブルを外さない前提ならば、デザインと機能のバランスが取れたいい仕組みである。頻繁に抜き差しすることの多いメモリーカードスロットは右側に用意されているので、さほど問題とはなるまい。USBメモリーを頻繁に利用する人の場合には、ちょっと気になるかもしれないが……。
Vostroは最廉価モデルならば、本稿執筆時点で5万8000円を切る価格で購入できる。CPUをもっとも性能が高いCore i5-470UM(1.33GHz)にしたとしても、7万5000円を切る。ネットブック然としたボディーならばともかく、このクオリティーでこの価格はちょっと驚きだ。
確かにマイナス面もある。例えば質量は約1.59kgで、特に軽いわけではない。また、特別に薄いわけでもない。だが、サイズ的には十分許容できる範囲に入っていると感じられる。なにより、この安さの前には文句も出てこない。
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ