毎年恒例の「Mobile World Congress 2011」が先週スペイン・バルセロナで開催された。今年の来場者はなんと6万人。昨年からは2割増加で、もちろん過去最高だ。そして今年のMWCほど流れが変わったことを感じたことはなかった。今回はそのMWCの感想をまとめてみたい。
ヨーロッパの通信関係者が
暖かい南欧に集結して始まった業界イベント
MWCは元は「GSM World Congress」という名称だった。ヨーロッパ圏のテレコム関連イベントで、大御所であるEricssonやNokiaなど、モバイル通信規格の中心役を果たしている北欧の人々が寒い冬に避寒するために、2月に南ヨーロッパでイベントをやろうとしたのが始まりだ。その後、3Gを普及させるべく「3GSM World Congress」と名称を変更。さらにGSMを落としてMobileとなった。
筆者は3GSMとしてフランスのカンヌで開催されていたころから参加しているが、冒頭で書いたように今年ほど変化を感じたことはなかった。昨年はまだSymbian Foundationがあったが、今年はない。また会場に姿こそないと言えど、ここ1、2年は誰もが言及していた「iPhone」が、今年はそれほど存在感がない。プラットフォームという点では会場はAndroidの一人舞台と言っても過言ではないだろう。
MWCは毎年会期の前日から始まる。前日夜にSony Ericssonがプレス発表会を開き、最新作を発表するのだ。昨年はSamsungが同じ時間帯にプレス発表会をぶつけてきた。今年はそれが13日となり、Sony EricssonとSamsung、さらにNokiaも加わった。
Sony EricssonはあらかじめFacebookで公開していたとおりに、プレステケータイ「Xperia PLAY」などを正式発表した。Samsungはフラッグシップ端末の後継機となる「Samsung Galaxy S II」とタブレット端末の「Samsung Galaxy Tab 10.1」を発表した。
残るNokiaは……新製品の発表はなし(望み薄と知りつつ、「MeeGo」スマートフォンが出てくるかもと淡い期待を抱いていたのだが)。11日に発表したMicrosoftとの提携に関する説明会となった。NokiaがMWCで端末を発表しなかったのは初めてではないだろうか。
端末メーカーのブースで
人を集めていたのがSamsungとHTC
端末メーカーではZTE、Huaweiなど中国勢の勢いを感じたが、Samsungに並んで話題をさらったのはHTCだ。15日の発表会はすごい人と熱気だったと聞く。ここで同社は「HTC Desire S」など既存ラインの後継機に加え、Facebookフォンを2機種発表した。FacebookフォンはイギリスのINQも2機種発表しており、今後他社からも出てくるかもしれない。
しかし、HTCのブースで主役だったのは、会期中に発表された同社初のタブレット「HTC Flyer」だ。Androidタブレットのブーム第一波が昨秋だったので、どんなものを出すのかと思ったら、タブレット用の「Android 3.0」ではなくGingerbread(だが、バージョンAndroid 2.3をアップデートしたAndroid 2.4)に「HTC Sense」を組み合わせた。
画面は7型でスタイラス付き。画面を大きくしたSamsungとは、明確に違う道を示した。Windows Mobile端末などのODM生産で力をつけてきた同社は、Androidでトップブランドに登り詰めようとしている。HTCのスタッフは、HTC Senseを使いたかったからGingerbreadを選んだと話す。下手をすると似たような外観になりかねないAndroidの世界で、HTCは同社独自のUIであるHTC Senseで明確に差別化を図る戦略のようだ。
HTCは端末メーカーが集まるHall 8ではなく、Hall 1にブースを構えた。一連のAndroid端末で常時にぎわっていたHTCの近くには、盟友であるMicrosoftのブースがあった(ちなみにHTCのブースにはWindows Phone 7搭載機もあるにはあった)。Microsoftは今年も例年通りCEOのSteve Ballmer氏が基調講演を行なったが、3月に登場するというWindows Phone 7のアップデートのプレビューに終始した。来年は、NokiaとMicrosoftがブースを並べるのだろうか?
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