2月9日、カメラ/写真関連総合展示イベント「CP+」会場において、米アドビ システムズのAdobe Photoshop共同開発者Thomas Knoll(トーマス・ノール)氏による基調講演が開催された。T.Knoll氏は、PhotoshopおよびCamera Raw機能を最初に開発したエンジニアで、現在もこれら製品の開発に貢献している。
講演のテーマは「Photoshop, the first 20 years」で、その内容は1990年2月に初めて出荷された「Photoshop 1.0」以前から最新の「Adobe Photoshop CS5」まで、20年以上にわたる歴史について振り返ったものとなっていた。
1985年ごろ、T.Knoll氏はMac Plusを購入してデジタル画像情報処理(Computer Vision)をテーマとする博士論文作成に取り組んでいたところ、用意したグレースケール階調画像を表示できないことに気付き、これを解決するためのイメージプロセッシングソフトを作成した。
同時期、弟のJohn Knoll(ジョン・ノール)氏が映画の撮影などを担当するILM(Industrial Light & Magic)に映画用特殊カメラ(モーションコントロールカメラ)のオペレーターとして所属しており、夜は独学でCGについて学ぶということを行なっていた。
ある日T.Knoll氏は、John氏から、画像処理用コードを作成したが、Mac上で表示させるためにどのようにコードを記述したらいいか分からないとの相談を受けた。T.Knoll氏は解決策として自作のイメージプロセッシングソフトを提供して、そのままJohn氏はCGに関する研究を続けた。しばらくすると、John氏からイメージプロセッシングソフトの機能追加のリクエストがあり、T.Knoll氏がこれに応えるということを行なった。
このリクエストと機能追加を繰り返すうち、さまざまなフォーマットの画像を表示するためのアプリケーション「Display」が完成。そのコードが後に米アドビ システムズにライセンスされ、1990年2月に「Adobe Photoshop 1.0」としてリリースされた。
この後、過去から現在までのAdobe Photoshopシリーズおよび「Camera Raw」機能について特徴などが紹介された。またその進化に影響している要素として、CPUの演算性能の高速化と、メモリーの読み書き性能の高速化にずれがある点に触れられた。過去においては、ソフトウェアが可能な限りメモリーを活用するようプログラミングを行なっていたが、現在ではCPU(およびGPU)を活用するアルゴリズムの強化とともに画面上でリアルタイムに反応が得られるようにして、その後にメモリーへの書き込みなどが行なわれているという。
今後予想される変化としては、さまざまなモバイルデバイスやクラウドストレージの増加に触れた。これらが混在する環境において、どのマシン、どのストレージにデータが入っているのか、ユーザーにとって把握が困難になる可能性を挙げ、自動的に同期するシステムなど、どのように処理するか、またどのように保存するかを効率化する必要があるとした。
最後に、モバイルデバイスの非力さをカバーする手段として、インターネットを利用し、サーバー側に処理機能を受け持たせる可能性などを将来的に考えていきたいとして、講演を締めくくった。
なおASCII.jpでは、Thomas Knoll氏へのインタビューを近日掲載予定だ。Adobe Photoshop、Camera Rawの現状/将来などについてお伝えしよう。
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