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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第47回

5年間で激変したメジャーとネット――FLEETの場合

2011年02月12日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ネットとメジャーの架け橋になるような活動がしたい

―― ボーマスでは何を売ったんですか?

佐藤 ボーマスではCipherのCDだけを100円で売りました。ほぼ配っている状態です。

―― あれっ、FLEETはなし? 新譜のプロモーションじゃなかったんですか?

佐藤 まあ、ちょうどアルバムの発売前だったので「宣伝か?」みたいなことも言われましたけど。ボーマスで売るという話も、最初から考えていたわけじゃないんです。「s10rw」というボカロのサークルがあって。僕がボカロで曲を作ってみようかなという話をしたら、「その曲、ボーマス前に間に合ったら、うちらのブースで売りませんか」という話になって。s10rwは作る曲がおしゃれなんですよ。ボカロ界のCorneliusみたいな感じだなと。

s10rw : 「ストロウ」と読む。メンバーは、そらいろくらぶ(yuxuki)、whoo、10日P(monaca:factory)、ryuryuの4人。



―― なるほど。そういう順序だったんですか。

佐藤 彼らは20代前半で、大学生の頃にFLEETを聴いてくれてたんです。いまボカロ曲を作ってて「学生の頃、FLEET好きでした」って人は他にもいるみたいで、ぼくも宅録で曲を作ってネットに上げてたわけだから、そこはつながってるのかなと。みんな宅録スキルが高いなと思いました。

―― 佐藤さんはs10rwのメンバーをご存知でしたか?

佐藤 Twitterでフォローされて、やり取りをしてからですね。それで彼らにボーマスに誘われて行ったんですが、これはすげえと。

―― ボーマスは初めて?

佐藤 前回(第14回)、遊びに行ったのが最初です。で、その次の回にはもう売る側に(笑)。あれはもうフェスみたいなものですよね。そのエネルギーに衝撃を受けました。タワレコみたいなところにCDを置いても、売れる瞬間ってあまり見ないじゃないですか。でもボーマスだと長い列ができて、CDがどんどんなくなっていく。すごいなと思いました。

―― こんなことならもっと早くと思いませんでした?

佐藤 これがすべてではないと思いますが、可能性を感じています。でもこうしてボカロやネットのシーンが拡大しているにも関わらず、それを見ようとしない人たちもいる。実際、僕の周りのバンドやミュージシャンはこの状況をあまり知らないし、よく分からないオタクの世界だと思ってる人も多い。互いにほとんど交流がないんです。ネット側はバンド側をよく知ってるんですけど。一応ぼくは従来のメジャーな文脈で活動していたので、そちらの知り合いもそれなりにいる。一方でネットや同人のシーンは面白いし、可能性があると思っているから、その架け橋になるような活動ができたらいいなと思っています。

―― 作品を通じてそれをやっていくということですか?

佐藤 たとえば、次のアルバムは自分で歌っている曲もあり、ボカロが歌っている曲もあり、他のボーカルとボカロがデュエットしている曲もあり……というような。そんな活動の流れの中で、新しい可能性や文脈が生まれたらいいなと。


(次のページに続きます)


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