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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第47回

5年間で激変したメジャーとネット――FLEETの場合

2011年02月12日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「お蔵入りかと思っていた」ボカロ処女作

―― ところでボカロ歴ってどれくらいなんですか?

佐藤 それはつい1ヵ月くらいなんじゃないですか。なにしろ今回が初めて作った曲なんです。



―― あれっ、そんなに最近なんですか。アップした反響を見てどう思います?

佐藤 びっくりしてます。いま再生数が5万くらいで、マイリスが6000くらい。

―― そのマイリス率はすごいですね。

佐藤 ただ、コメントが荒れているんですよ。「プロなのになんでミクの曲を作るんだ」とか「商業乙」とか。一方で「プロがボカロ使ったっていいじゃないか」とか「壁が崩れていく音がする」とか肯定的な意見もあって。その状況も含めてドラマチックだなと。歌詞の内容もそういう内容だったりするので。「すべての不条理が満ちみちた部屋からこぼれたこの奇跡を何と呼ぼう」って、その部屋がニコニコ動画とも解釈できる。

―― なるほど。

「プロ様に盛り上げていただかなくても」と批判的な声も

佐藤 「大きな物語が消えた世界で行なわれる、自己目的化し、空疎で互いに傷つける言葉を交わすことが多いネットコミュニケーションだけど、そこからこぼれる希望や可能性もある」。そんな感想もツイッターでいただいたり。

―― おお、何かの啓示のようですね。

佐藤 アップするまでは、そんな小難しい歌詞が伝わるか不安だったんです。でも、「歌詞が泣ける」とか「これはミクの歌だ」とか、「批判しているヤツはこの歌詞を読んでみろよ」ってコメントも多かった。そういう状況込みでこれは作品になったんじゃないか、そういう議論で人々の認識が少しでも進むようなことがあれば、アップした甲斐があったかなと。

―― 今はそうやって肯定的に受け止められても、最初に投稿するのは勇気がいったと思うんですけど。

佐藤 怖かったですよ。批判されるのが怖いわけじゃなくて、FLEETみたいにポストロックと呼ばれているジャンルは、メジャーの中でもサブカル的ジャンルじゃないですか。だからボカロの中でもサブカルで、相手にされないんじゃないかと。それでイマイチ自信が持てずにいて、これはお蔵入りかなと思いつつミックスしていたんです。結果、ミックスがいい感じに仕上がって、初めて自信が持てた。それで決意したのが、1日前だったんです。

「1日前になって、やっと決意したんです」


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