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ビジネスとICTの接点「要件定義」をよりシステマティックに

使えないICTシステムを排除する要件定義手法「Tri-Shaping」

2011年02月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月9日、富士通はシステム構築における要件定義のノウハウを集大成した「Tri-shaping」を発表した。コスト削減や期間の短縮、なにより品質向上が図られるという。

完成したシステムに対してつのる不満

システム生産技術本部 本部長の柴田徹氏

 発表会の冒頭、富士通のSIビジネスと要件定義についてシステム生産技術本部 本部長の柴田徹氏が説明を行なった。柴田氏は経営視点で業務プロセスを変えられる人がいない、業務視点でICTシステムを変えられる人がいないというなか、激しい環境変化を乗り切らなければならない企業の現状を説明。こうしたなか、ビジネスとICTシステムを橋渡しするのが「要件定義」だと定義した。柴田氏は「要件定義がきちんとしていないと、使えないICTになる。すべてを盛り込むのではなく、経営の観点、業務の観点からきちんと優先順位を付ける必要がある」と語った。

SI生産改革統括部 森田功氏

 続いてSI生産改革統括部 森田功氏は、日経コンピュータのアンケートを引き合いに、システムの品質の現状を説明した。これによると、多くのユーザーはシステム開発の工程のうち、「システム要件の定義」を改善すべきと答えているほか、完成したシステムへの満足度についても全体で48.2%が不満足と回答しているという。これに対して富士通は、上流工程の品質向上として、ドキュメントのルールや整合性確保を目的とする形式品質の向上だけではなく、業務内容が反映されているかを基準とする内容品質の向上まで進めている。このうち後者の内容品質の向上にあたる施策が、2009年に発表された「新要件定義手法」、そしてそれを発展させた「Tri-Shaping」となる。

3つのレイヤで要件定義の品質を向上させる

 Tri-Shapingは、富士通が要件を作り上げていく過程のノウハウを集大成。要求の立案・決定を行なう「要求形成手法」(旧:新要件定義手法)、業務プロセスの分析・設計を行なう「業務形成手法」、業務仕様の作成を行なう「業務仕様形成手法」の3つのレイヤで提供される。具体的には、手法の支援や研修のほか、説明資料や評価シート、ドキュメントサンプル、マネジメントガイドなどのドキュメントツールなどが提供される。

3つのレイヤで要求定義の精度を上げる「Tri-Shaping」

 1つ目の要求形成手法「shapingBR」は、経営と業務に貢献する要求の立案・決定を行なう手法だ。この要求形成の課題は、経営層の要求と業務部門の要求がうまく合わないという点だ。たとえば、物流業務を例にすると、物流コスト削減と業務プロセス全体の改善という経営者のニーズがある一方、業務側では廃棄日の指示をシステムで出して欲しい、あるいは多温度対応のトラックが欲しいという要望がある。現状、両者の要求が乖離しており、正しい要件定義になってないという。そこでshapingBRでは経営、業務、ICTシステムの要求を目的、手段、実行、合意形成などの観点からチェックし、全体整合性を見るという。新たに社外のステークホルダーへの考慮も明記したほか、新しい上流工程のアプローチとして注目されている「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)」にも対応しているという。

shapingBRでは体系的に構造化することで、全体整合性を確認する

 次の業務形成手法「shapingBP」では、業務プロセスの分析と設計を行なう。こちらは複雑になりがちな業務プロセスを柔軟・シンプルに定義付けるために、業務の幹を見極める「要のものこと分析」、業務の枝葉の洗い出し・整理を行なう「バリエーション分析」という2つの手法を用いる。要のものこと分析とは、まさに要になる「もの」と「こと」を中心にプロセスを捉える方法で、横道にそれない分析を行なう。たとえばお茶を淹れるという作業であれば、水を中心に据え、加熱と味付けという2つの業務に整理するといった具合だ。この幹に加え、顧客、商品、オーダーなどの管理対象を軸に整理していくのがバリエーション分析になる。もれやダブリがないかチェックする、統廃合を行なう、将来種類が増えないかを検討するなどの整理を行った後、最終的にはマトリクスされたパターンとして可視化を行なう。

 最後の業務仕様形成手法「shapingBS」は、いかに業務ルールのヌケ・モレ・アイマイさを低減するかがテーマとなる。ヌケとは書くべき仕様が書かれていないこと、モレはすべての場合分けが書かれていない、アイマイは誰にでもわかるように書かれていないという事態で、要件定義のバグの6割がこれに起因するという。shapingBSでは機能仕様書やデータ仕様書で書くべき内容を提示することでヌケを排除するほか、文章表現ではなく、表で表現することでモレをなくす。さらに誤解の原因となる用語の整理を行なうことでアイマイさを低減するという。

shapingBRでは体系的に構造化することで、全体整合性を確認する

 富士通ではその他、マネジメントプロセスの精度向上も行ない、確実な合意形成や要件の出来具合などのチェックも確実に実施する。先進ユーザーで試した結果、必要な要件を半分に絞り込めた、2年かけた要件定義が3カ月で終わった、手戻りコストを低減できたなどの効果が得られたという。

 手法の説明資料やガイドなどは本日から社内に提供し、2011年4月より原則3億円以上のプロジェクトに適用。2011年度末まで100件を目指すという。2011年上期より、富士通グループに研修を実施し、下期からは有償で顧客に提供していく予定となっている。

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