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事実に基づく内容か虚構か?
検証・映画「ソーシャル・ネットワーク」に見るFacebook

2011/02/08 09:00 更新

映画中の二つの訴訟

物語は、有名な二つの訴訟と創業時の過去とが並行して描かれていく。「マーク・ザッカーバーグが自分たちの考えたサービス(ConnectU)」のアイディアを盗んでFacebookを作った」と訴える双子のウィンクルボス兄弟と、Facebook共同設立者としての肩書きと権利を奪われたとして争った元親友のエドゥアルド・サベリンの訴訟だ。

二つの訴訟は事実で、北京オリンピックでボート競技に出場し6位となったことでも知られるウィンクルボス兄弟は、映画の最後に流れるテロップによれば2008年に現金2000万ドルとFacebookの株式4500万ドル相当を受け取り和解している。余談だが、彼らは2010年1月になってこの和解を取り下げようとしているという。映画の後日談のようで、興味深い話だ。




エドゥアルド・サベリンは、Facebookの所有株式を34%から1%以下に希薄化させられたとして2005年に訴えを起こした。その後Facebook共同設立者としての肩書きを取り戻し、和解に至っている。映画で語られていたとおり、エドゥアルド・サベリンの和解金額は公開されていない。エドゥアルド・サベリンは映画について公には一切コメントしていないが、東浜氏いわく「和解時の契約上、Facebookやマーク・ザッカーバーグについて語ることができないためでしょう」という。

配役は本人に似せている?

名前が与えられている登場人物は、ほぼ全員が実在の人物であり、描かれている事柄も事実を元にしている。たとえば、ナップスター創業者の一人であり初代Facebook社長のショーン・パーカーは、映画と同様、コカイン所持疑惑による逮捕などにより、Facebookを追われている。

ただ一人、実在しない人物も混じっている。マーク・ザッカーバーグが失恋した女性、エリカ・オルブライトだ。映画では、この失恋がマーク・ザッカーバーグがFacebookの元となる「Facemash」を作るきっかけとして描かれている。失恋はあったというが、その相手は"エリカ"ではないし、マーク・ザッカーバーグは失恋後すぐに現在の彼女とつきあい始めている。一番虚構色が強いが、実際はどうだったのか興味が惹かれる部分でもある。




では、それぞれの配役は実在の人物に似ているのだろうか。実名で登場している人物の顔は、英語版Wikipediaなどで確認できる。見比べてみると、マーク・ザッカーバーグ役のジェシー・アイゼンバーグ、エドゥアルド・サベリン役のアンドリュー・ガーフィールド、ウィンクルボス兄弟役のアーミー・ハマーなど、みんなどことなく本人と似ている印象を受ける。東浜氏も「配役のオーディションでは見た目も考慮に入れていたようだ」と言う。ショーン・パーカー役のジャスティン・ティンバーレイクは少し格好良すぎるようだが、やはり雰囲気は似ているようだ。

ちなみに、双子のウィンクルボス兄弟はアーミー・ハマーが一人二役を演じている。兄弟で抱き合うシーンなどもあるので、一瞬双子の俳優だと思ってしまうが、すべてCG処理の成果だ。さぞかしコストも手間もかかっただろうが、オリンピックに出るほどの体格を持った双子を探し出すことの方が難しく、CGで処理することになったようだ。

服装や会話までリアル!

リアルに描かれているのはそれだけではない。たとえば、マーク・ザッカーバーグ自身が「ここだけは現実と同じ」と評価している衣装だ。「写真や証言など、かなり正確な資料があったようです」と東浜氏。映画では、GAPのロゴ入りパーカーや草履履きなどラフな服装をしていたが、実際マーク・ザッカーバーグ自身プライベートでは草履履きが多く、床にマットを敷いて寝るなど、身なりに頓着しないタイプのようだ。




会話も、取材を重ねてかなり忠実に再現されている。とは言うものの、台詞が多いことで有名なアーロン脚本を再現するのは限界があり、字幕版では一部カットされてしまっている。ハックする際にマーク・ザッカーバーグが早口で喋っているハッキングの内容に興味があるという人もいるだろう。吹き替え版ではもう少し情報が盛り込まれているので、気になる人は確認してみてほしい。もちろん、今後登場するであろうビデオグラムでも吹き替え版が聞けると思うので、発売を待ってじっくり確認するのも面白いだろう。

ちなみに、映画の中でパソコンのメーカーがはっきり分かるシーンが少なくとも二回ある。映画のはじめの方でマーク・ザッカーバーグがバイオを使っているシーン、エドゥアルド・サベリンがFacebookに乗り込んできてMacをたたき割るシーンだ。マーク・ザッカーバーグがバイオユーザーだったのかも気になるが、これはあくまで演出上のものらしい。一方、たたき割ったのがMacということが意味深に感じられるが、これにはそこまでの意味は含まれていないようだ。

大人の対応を見せるFacebook

気になることはまだある。米国は訴訟大国だ。ここまで実際の人物や企業を取り上げて、Facebookやマーク・ザッカーバーグ等に訴えられたりはしないのだろうか?

「今のところそのようなことはありません」と東浜氏。映画の取材協力は拒否したマーク・ザッカーバーグだが、TV番組で自分を演じたジェシー・アイゼンバーグと対面を果たしたり、社員を集めて映画館を貸し切って「ソーシャル・ネットワーク」を上映したりという逸話ももれ聞く。映画をまったく認めていなければ、そのようなことはなかっただろうと筆者は考える。

脚本家アーロンは、ゴールデングローブ賞の授賞式の壇上で、「マーク・ザッカーバーグはすばらしい実業家だ」と述べている。「あくまでマーク・ザッカーバーグをすごい人物と認めた上での映画であり、マーク・ザッカーバーグはそこを理解してくれたのではないか」(東浜氏)。

ここまできたら、アカデミー賞もとって、Facebookの知名度がもっと上がると面白い。ウェブサービスをテーマとした映画がアカデミー賞をとったら痛快だし、それをきっかけに日本でもFacebookが浸透するかもしれない。映画の活躍と共に、今年は日本でもFacebook元年となるのか、期待を込めて見守りたいと思う。

文●高橋暁子
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