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ミッションクリティカルを切り開く富士通サーバーの挑戦【後編】

基幹系IAサーバー「PRIMEQUEST 1800E」を解体する

2011年03月14日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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富士通がメインフレームで培ってきたノウハウを結集して作り上げた基幹系IAサーバーが「PRIMEQUEST」である。前編ではその製品コンセプトや新製品PRIMEQUEST 1000シリーズの概要について聞いたが、後編ではいよいよPRIMEQUEST 1800Eの実機を解体してもらった。

完全に冗長化された構成で
高い信頼性を確保

 さて実際の解体の前に、PRIMEQUESTの主要コンポーネントを見ていこう。今回用意してもらったのは、12Uの筐体に最大4枚のシステムボードを格納可能なPRIMEQUEST 1800Eである。

PRIMEQUEST 1800Eの主要コンポーネント

 上図の通り、PRIMEQUEST 1800EではCPUとメモリを搭載したシステムボードが最大4基まで搭載でき、それぞれはXeonプロセッサーのインターコネクトである QPI(Quick Path Interconnect)を富士通が独自に発展させた「QPIネットワーク」で接続されている。また、PCIカードを搭載するI/Oボード(IOB)とGbE-LAN/SAS/PCI-Boxインターフェイスボード(GSPB)が2基ずつ搭載可能。両者にはCPUからのI/O命令を振り分けるPCI Expressスイッチが搭載されており、システムボードや内蔵SAS HDDユニットと接続するという構成になっている。これらのコンポーネントは冗長化が施されているだけでなく、CPU間、CPUとI/Oパス間などの経路も複数を利用できるようになっている。この構造を理解していると、以降の記事も理解しやすいはずだ。

PRIMEQUEST 1800Eの前面。システムボードのほか、HDDユニットと電源ユニット、光学ドライブが前面から取り出せる

背面にはI/Oボード、GSPB、マネジメントボード、ファンなどが見える

前面と背面にボードを差し込む様子がステッカーで表示される

背面にも各ボードの配置図が挿入されている。芸が細かい

  PRIMEQUESTではメモリ、電源ユニット、冷却ファン、マネジメントボード(MMB)など、内部のコンポーネントを徹底的に冗長化することで、一般的なIAサーバーに比べて、5分の1~10分の1の業務停止率という高い可用性を実現した。

業務停止を最低限に抑えるフレキシブルI/Oや予備システムボード、物理パーティショニング機能

 さらにCPUやメモリなどを搭載するシステムボードと、PCIカードや外部インターフェイスなどを搭載するI/Oボードなどを自由に組み合わせる「フレキシブルI/O」や、メインフレームやUNIXサーバー由来のハードウェアによる「物理パーティショニング」などの機構も用意されている。たとえば、業務ごとの特性にあわせて、CPUとメモリを多く割り当てたパーティションを作ったり、業務の負荷にあわせてハードウェア構成を変えたりといった運用が可能になる。「壊れにくく作ってはいるのですが、万が一壊れた場合でも、システムボードごと切り替え、再立ち上げを行ないます」(岸本氏)ということで、ハードウェアの故障においても迅速に復旧できる。また、2/4/8CPUのほかに、3/6CPUのパーティションを構成できるという特徴も他社にはないメリットだという。

富士通 プラットフォームビジネス推進本部 ビジネス企画統括部 サーバビジネス部 IAサーバ事業本部 バリューサーバデザイン部 プロジェクト部長 岸本敏裕氏

 PRIMEQUESTでは、物理パーティショニング機能やフレキシブルI/Oなどハードウェア面での工夫と、ソフトウェアによる仮想化技術を組み合わせることで、より柔軟なリソースの配分が実現する。昨今では、こうした基幹系のサーバーでも仮想化のニーズが高まっており、「かつては1つの業務やシステムごとにサーバーを導入していましたが、そのようなサイロ型の形態はお客様にとって導入運用コストがかさみます。そこで、業務やシステム全体を見渡したうえでICTインフラを最適化するための手法の1つとしてサーバー統合を実践する例が増えてきています」(岸本氏)という。

 仮想化対応のためにI/Oスロットは数多く用意した。「CPUの処理能力としては数多くの仮想マシンをホストできるのですが、I/Oは足りなくなる可能性 があります。PRIMEQUESTでは、PCIボックスを使うと全部で40スロット確保可能なので、LANカードを冗長化しても余裕があります」(IAサーバ事業本部 プロダクト開発統括部 ハードウェア開発部 田中亮大氏)という。

富士通 IAサーバ事業本部 プロダクト開発統括部 ハードウェア開発部 田中亮大氏

ミッドプレーンを中心に複数のボードが挿さる構造

  では、さっそく解体していこう。PRIMEQUESTは、筐体の中央付近に「ミッドプレーン」という基板を用意している。システムボードやI/Oボード、電源ユニットなどの各コンポーネントは、前面と背面からこのミッドプレーンに直接装着する。ミッドプレーンにはシステムボード間のQPIやPCI Expressの信号が配線されているが、表面にはコネクタ以外の電子部品は一切存在しないという。パーティション構成の変更も管理画面上で簡単に行なえ、ケーブル張り替え作業はもちろん不要。コンポーネントを物理的に移動させる必要もない。

前面のフロントカバーを外し、まずはシステムボードを抜いてもらう

システムボードを取り出すとミッドプレーンが見える

奧にある緑の部分がミッドプレーン。ケーブルを使わないため、人為的な接続ミスは起こりえない

 PRIMEQUESTの心臓部ともいえるシステムボードには、CPUとメモリ、メモリバッファチップなどが搭載されている。ここで目立つのは、やはりXeonプロセッサーを効率的に冷却するヒートパイプつきのヒートシンク、そして前面にずらりと並んだメモリだ。また活性交換時に発生する過大な電源変動を軽減するためのモジュールも搭載されている。

システムボードにはCPUとメモリ、メモリバッファチップなどが搭載されている。最新のサーバーはメモリのスロットも多い

Xeonプロセッサーを冷却する巨大なヒートシンク

ヒートシンクを外すとXeonプロセッサー7500番台が現れる

システムボードを上部から覆うカバーにはエアフローを最適化するスリットがある

  また、前面からはDVDドライブや2.5インチのHDDを搭載したHDDユニット、さらには4つの電源ユニット(PSU)も外すことができる。もちろん、これはホットスワップでの交換が行なえる。

前面からはDVDドライブも外せる。もちろんホットスワップ対応

2.5インチのHDDを搭載したHDDユニット

80 PLUS GOLD認証の高効率な電源ユニットもシステムボードと同じく4基搭載可能

(次ページ、信頼性だけじゃなく、拡張性も高い)


 

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