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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第133回

スマートTVは日本では生まれない

2011年01月19日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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NHKの松本新会長は「まねきTV」訴訟を取り下げよ

 他方、今年の家電ショーのCESでは「スマートTV」が話題だった。これは今までのインターネットTVを一歩進めて、タブレット端末のようなコンピュータからテレビの映像を見ることができるようにするもので、その代表が「Google TV」である。

 アメリカではABC、NBC、FOXが共同で、すべてのテレビ番組をインターネットで見られる「hulu.com」というウェブサイトをつくった。BBCのiPlayerを初めとして世界のテレビ局がネット配信を開始し、ケーブルテレビの主力もサーバに番組を蓄積して視聴者が好きなときに見られるオンデマンド配信だ。これからテレビとネットの境界はなくなり、すべてのコンテンツがウェブサイトと同じようにいつでも見られるようになるだろう。

現時点ではアメリカからのアクセスに限定される「hulu」。スマートTVを始め、iPhone、iPad、さらにゲーム機と多数のデバイスに対応している

 しかし今回の最高裁判決によって、日本でスマートTVのサービスをテレビ局以外の企業がやることは不可能になった。テレビ局のオンデマンド配信も「NHKオンデマンド」は月間40万アクセスと、私のブログにも劣る。民放に至っては番組のネット配信はほとんどやっていない。

 利用者数百人のまねきTVを相手にテレビ局がそろって最高裁まで争ってネット配信を妨害するのは、地方民放を守るためだ。ほとんど独自番組を制作しないでキー局の番組を垂れ流しているだけの地方民放にとっては、キー局の番組がネットで流れてきては困るからだ。しかし地方民放の余命はわずかなものだ。今年7月のアナログ放送の終了以降は、各地で整理統合が始まるだろう。

 世界のテレビの主流はもはや地上波ではなくネット配信だが、日本のインターネット放送は、テレビ局が「公衆再送信」を許さないためにビジネスとして成り立たない。テレビ局のネット事業も厳重な「著作権保護」で自縄自縛になり、採算が取れない。古いものを守るために新しいものをつぶし、結果としてどちらも失う愚かな工作をテレビ業界はいつまで続けるのだろうか。

 NHKの新会長には、JR東海の松本正之副会長が就任する。彼は放送については「一視聴者」でしかないが、JRでは労働組合の反対を押し切って合理化を進めた「猛者」だといわれる。ぜひ松本新会長には、この愚かな訴訟を取り下げ、日本のスマートTVを推進する方針を掲げてほしいものだ。

筆者紹介──池田信夫

池田氏

1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退社後、学術博士(慶應義塾大学)。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラブックス代表取締役、上武大学経営情報学部教授。著書に『使える経済書100冊』『希望を捨てる勇気』など。「池田信夫blog」のほか、言論サイト「アゴラ」を主宰。

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