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日立エンタープライズサーバーの生まれ故郷を訪ねる

緑豊かな秦野で日立のECOサーバーが生まれる

2011年01月31日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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緑豊かな丹沢の麓に位置する神奈川県秦野市。ここには、メインフレームからブレードサーバーまで幅広いサーバー製品を一貫生産する日立製作所のエンタープライズサーバー事業部が生産拠点を置いている。本稿ではその生産現場をレポートする。

 日立製作所では、情報のライフラインを支えるプラットフォーム製品として、IAサーバーはもちろんUNIXサーバーやメインフレーム、スーパーコンピューターまで幅広い製品を取りそろえている。さらに最近では、サーバーだけでなく、ネットワーク機器やストレージまでを統合したサービスプラットフォーム「BladeSymphony」を展開している。

 こうしたサーバーや関連機器の製造を行なっているのが、今回紹介する日立製作所のエンタープライズサーバ事業部である。同事業部は1962年にコンピュータ部門の専門工場である神奈川工場として発足。以来、日立のコンピューターの開発と製造を手がけてきた。2008年には、従来のサーバー関連子会社の合併や、愛知県豊川市にて行なっていたサーバー装置組み立て業務を集約し、一拠点でプリント基板製造から基板実装、装置組み立てまでの一貫生産を可能とした。今回は神奈川県秦野市にある当事業部にお邪魔した。

一枚の基板に3000以上の部品を実装

 2012年で50年を迎える歴史あるエンタープライズサーバ事業部では、高密度・大型基板をベースとするハイエンド系のサーバーからIAサーバーまで多くのプラットフォーム製品の製造を担っている。

 生産工程の前段階として、まず部品の選定と試験が行なわれる。ITインフラを支えるサーバーは、きわめて高い信頼性を必要とする機器である。そのため量産前の開発段階で、まず厳しい部品のチェックを行なう。高温・低温や衝撃を部品に対して与え、さらに装置を組んだ状態で電圧やクロックのマージン、静電気、雷などへの耐性を調べる。BladeSymphonyの場合、約1年かけてこうした部品の選定を行なったという。そして、OKが出た段階で、ようやく量産が開始されることになる。

ガラスケースに並べられたサーバーや関連機器の基板

 さて、実際のサーバーの生産を見ていこう。生産工程は、基板等に部品を装着していく部品実装の作業と基板レベルでの検査からスタート。基板が完成すると、実際の装置の組み立てが行なわれ、最後に装置検査が実施される。

サーバができるまでの工程

 部品実装は、同じ建屋で作られたプリント基板に、ハンダを印刷するところから始まる。専用の印刷機を用いてペースト状のハンダを精密に印刷し、すぐにチェックする。

プリント基板にハンダペーストを印刷する機械

機械でのハンダ付け検査はかなり厳しく行なわれる。NGが出た場合は技能者が目視でチェックする

 チェックを終えたら、1mm以下の最小部品から大型のLSIまで部品搭載機を用いて、次々取り付けていく。搭載する部品の数は基板の種類によって異なるが、多いもので3000~4000個くらいになるとのこと。部品搭載機ではまさに目にもとまらない速さで、わずか数分で部品を取り付けていく。こうした部品搭載機は、部品の種類や供給形態に合わせて何台か用意され、基板に合わせて使い分けられる。

ハンダを印刷した基板に対して部品を搭載する機械。この機械は4つのヘッドを持つ最新鋭機で処理も高速

こちらはリールやスティックなどさまざまな部品供給形態に対応する多機能型の搭載機

 その後、ハンダリフローという装置により、ハンダを200℃の高温で融解し、実際のハンダ付けを行なう。ちなみにこのハンダは、鉛フリーのもののみを使用しているとのこと。昨今のグリーンITの重要性から、エコロジーへの取り組みは欠かせない。

高密度の基板に対して、機械が適切にハンダを付けていく

200℃を超える熱でハンダを融解し、部品をハンダ付けする装置

 これで各部品が基板に固定され、基板検査のフェーズに移る。さらに最近ではこの部品実装の工程において表と裏の両面を一気通貫で実装できる「表裏一貫ライン」を導入。製造リードタイムの短縮を実現した。ここらへんは近くの小田原に生産拠点を置くストレージの生産現場と同じ試みである。

各工程が完了した基板は自動的にシャトルコンベアで移動する

両面実装を実現する反転コンベア

作業が完了した基板は、このようにトレイに入れられ、次の作業を待つ。上の三角がステータスを示している

(次ページ、機械と人手で効率的な検査を実現)


 

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