このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第84回

携帯電話で採用されたTI製ARMコアSoCの系譜

2011年01月17日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
OMAPシリーズのロードマップ

OMAPシリーズのロードマップ

OMAP 3

 第3世代のOMAPは、シリーズ最多のラインナップとなった。大雑把に言えば、「OMAP3400」シリーズがまず登場し、これのプロセス微細化版として「OMAP3600」シリーズが登場。この両機種は、携帯電話機ベンダーに直接供給された。一方このOMAP3400をベースに、PDAなど携帯電話以外に向けたものが、「OMAP3500」シリーズとなる。

 順を追って説明しよう。まず「OMAP3430」が2006年2月に発表された。CPUコアは「Cortex-A8」になり、GPUはImaginationの「PowerVR SGX」を搭載する。IVAもHD動画を扱える「IVA2+」に進化して、さらにカメラで撮影した画像などをリアルタイムで処理できる「ISP」(Image Signal Processor)も搭載されるなど、より一層の高性能化が図られている。

「OMAP3430」のシステム構成図

OMAP 3世代の「OMAP3430」のシステム構成図

 周辺回路に大きな違いはないが、従来は電源制御だけを行なっていたコンパニオンチップが、オーディオコーデックやバッテリー管理、キーパッドなどをまとめて取り扱う「TWL5030」に進化している。

 このOMAP3430に続いて、さらに動作周波数を引き上げた「OMAP3440」も登場する。逆に「HD動画の取り扱いはできなくてもいい」という普及帯向けの製品も求められ、これに併せて性能を下げた「OMAP3410、3420」が、2007年2月に発表された。

 その一方で、OMAP3430をベースとして、用途に応じてDSPコアやGPUコアを省いた、携帯電話以外の用途向けがOMAP3500シリーズである。こちらは「OMAP3505、3515、3525、3530」の4製品が2008年2月にラインナップされた。もっともOMAP3530などは、ハードウェア構成はOMAP3430と完全に同一で、「携帯電話向けか否か」というターゲットだけが唯一の相違点となっている。

 これらとは別に、製造プロセスを45nmに移行したのがOMAP3600シリーズで、2009年2月に「OMAP3610、3620、3630、3640」の4製品がまとめて発表された。基本的なスペックはOMAP3400シリーズと大差なく、より省電力に動作するようになったことが最大の相違点と言えるだろう。

OMAP 4

 第4世代のOMAPは、まず「OMAP4430」が2009年2月に発表された。もっとも、同じタイミングで発表されたOMAP3600シリーズが2009年中にサンプルおよび量産出荷を開始したのに対し、OMAP4430の出荷は2010年後半となった。これは遅れたわけではなく、2009年2月のプレスリリースですでに、「量産出荷は2010年後半を予定」と明言している。その意味ではスケジュール通りでの量産開始と言える。

 CPUコアはCortex-A8に換えて、「Cortex-A9 MP」を2つ搭載。GPUコアは若干性能を上げた「PowerVR SGX540」に、動画アクセラレーターは720p/1080p映像に対応した「IVA3」になるなど、互換性を保ちつつ順調に各機能が強化されている。

OMAP 4世代のシステム構成図

OMAP 4世代のシステム構成図

 周辺回路は大きくは変わらないものの、HDMIの対応とか4Gモデムのサポート、カメラインターフェースが「MIPI」※1に変わるなど細かいところで最新の規格に合わせた形の拡充がなされている。
※1 Mobile Industry Processor Interface。携帯電話用アプリケーションプロセッサー向けのインターフェース規格。

 またここまでは説明を省いたが、暗号化アクセラレーターの「M-Shield」がOMAP2世代から搭載されており、暗号化/復号化対象を次第に増やしたり、性能を引き上げたり、といった改良もなされている。2010年12月には後継製品である「OMAP4440」も発表されている。こちらはまもなくサンプル出荷開始で、量産は2011年後半を予定している。

 まだ登場したばかりということもあり、OMAP4の製品はこの2つだけである。だが、最近はARMを使ったタブレット製品が盛り上がりを見せており、これらに向けて、OMAP3500シリーズと同様なアプローチで、新製品をリリースしてくる可能性もあるかもしれない。


 今回はざっくりとOMAP1からOMAP4までについて紹介した。実はこれ以外にも、「OMAP-L」シリーズ(300MHzのARM926EJ-S+C674x DSP)とか「OMAP700」シリーズ(133~200MHzのARM925/ARM926EJ-S+GSM/GPRSベースバンドプロセッサー+DRAM)、「OMAP-DM」シリーズ(ARM7/ARM926+ISP+DRAM)といった各種の製品がラインナップされていたのだが、いずれも継続されることなく、すべて終了している。

 これらは低価格携帯電話用の製品であるが、この分野は競争が激しく、今では台湾MediaTekなどにほとんどシェアを奪われている。そのためTIとしては、価格競争力のある高付加価値品にシフトしているのであろう。冒頭で述べたように、TIはすでにCortex-A15を使った次世代OMAPの開発に着手していることを表明している。ただし、具体的な製品構成が発表されるのは早くて2011年の年末、サンプル出荷もやはり2012年あたりから、ということになると思われる。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン