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いよいよ始まる日本のIaaS-2010年版- 第13回

「パートナービジネス」をコアに据えたクラウドの形

ソフトバンクのホワイトクラウドが目指す「共生」の姿

2011年01月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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ソフトバンクグループのクラウドサービスがご存じ「ホワイトクラウド」である。オンデマンドサービスの先駆けを作った同社のサービスは、パートナーを巻き込んだソリューションの部品という位置づけだ。ここではインフラを提供するHaaS(仮想サーバ)を中心に紹介していく。

ホワイトクラウド=共生型クラウド

 ホワイトクラウドはソフトバンクグループが提供するクラウドサービスの統合ブランドで、サービス自体は通信サービスを手掛けるソフトバンクテレコムが提供している。オペレーションフリー(運用業務からの解放)、スクリーンフリー(端末非依存)、アセットフリー(所有ではなく利用)、リソースフリー(高い柔軟性)、ベンダーフリー(業者非依存)という5つのフリー(自由)を実現するサービスを標榜し、2009年に発表されたものだ。ソフトバンクテレコムの前身にあたる日本テレコムといえば、現在のクラウドの源流ともいえる「ULTINA On Demand Platform」の提供元。こうしたクラウドのようなサービスでは、すでに実績を持っているわけだ。

ソフトバンクテレコム クラウド事業推進本部 クラウド市場開発室 室長 立田雅人氏

 ソフトバンクテレコム クラウド事業推進本部の立田雅人氏は「クラウドとは顧客の問題解決を実現するソリューションだと捉えています。ですから、基本的にIaaSとか、SaaSといった提供者側のデリバリー方法でサービスを区別するのはやめたんです」という。そのため、従来オンプレミスで構築していた業務システムやアプリケーションを、月額課金で利用できるアウトソーシングサービスという色合いが強く、対象顧客もプロバイダではなく一般企業である。

 また、パートナーとの協業に積極的なのが大きな特徴といえる。販売を行なうセールスパートナーや構築・運用を行なうソリューションパートナーなどを取り込んだ「ホワイトクラウドコミュニティ」を運営し、クラウドビジネスを成長させるエコシステムの構築を目指している。立田氏は「弊社では『共生型クラウド』といってますが、パートナーも顧客もみんなうれしいという世界を目指しています。また、これまでインハウスでやっていたSIerが外部の事業者を使う敷居も下がると思います」と語る。

ホワイトクラウドコミュニティの概要(同社サイトより抜粋)

 ホワイトクラウドのサービス自体は、サーバーやデスクトップ、映像配信などのインフラ系サービスのほか、決済アダプタ、メール、運用管理などのサービスが徐々に拡充されている。先頃はグーグルの企業向けサービスをホワイトクラウド上で提供する「GoogleApps for Business」の発表も行なっており、2011年2月からサービスを開始する。

 メリットとしては、通信事業者としてのネットワークがやはり大きい。インターネットだけではなく、高品質でセキュアな閉域網やモバイル網などを用意しているため、利用するサービスにあわせて、柔軟に組み合わせられる。もちろん、データセンターに関しても高い実績を持っており、ISOのセキュリティ基準を日本のデータセンターではじめて取得したり、ハイブリッドタスク工法という免震性の高い工法を採用しているという。

IaaSではなく、あえてHaaSの理由とは?

 こうしたパートナービジネスの土台となるのが、今回メインとなるHaaSである。HaaSは文字通りHardware as a Serviceを意味する。IaaSと名乗らないのは、「私たちはハイパーバイザーより下を提供しています。つまり、エンドユーザーからは単なるハードウェアしか見られないので、HaaSです。利用するにはOSやアプリケーションが必要になるわけで、この部分をパートナーさんに担ってもらいます」(立田氏)という位置づけを表したものだという。

 サービスは共有型のシェアードHaaSと専有型のプライベートHaaSに別れており、シェアードHaaSはさらに低廉なスタンダードと高品質なプレミアムに別れる。

共有型のシェアードHaaS、専有型のプライベートHaaSが用意されている(同社サイトより抜粋)

 スタンダードは2GHz相当の仮想CPU、1GBのメモリ、100GBのHDDのサーバーに、外部用・内部用のIPアドレス、管理ポータルを追加し、月額8400円(税込)。インターネット接続まで含めてなので、かなり競争力のある価格といえる。OSはWindows Server 2008とCentOSが選択でき、メモリ追加やロードバランサー、バックアップ、監視サービスなどがオプションで提供される。一方のプレミアムの仮想サーバーは、CPU保証型が月額2万6250円、ベストエフォート型が月額1万5750円で、CPUやメモリ、HDDなどのリソースを追加できる。高品質なデータセンター、可用性の高いシステム構成で運営されたまさにプレミアムなサービス内容だ。クラウド事業推進本部の大川啓一氏は、「スタンダードは定型メニューの低価格メニューで、簡単なWebサイトであればこちらで十分です。プレミアムはスタンダードほど安くはないですが、とにかくカスタマイズが効きます。閉域網をつなぎ込んだり、VMwareを直接扱うことも可能です」と両者の違いをこう説明する。

ソフトバンクテレコム クラウド事業推進本部 クラウドプロダクト2部 部長代行 大川啓一氏

 シェアードHaaSに対して、プライベートHaaSはハードウェアをユーザーが専有する形態。サーバー、ストレージ、ネットワークをまとめたシステムとして提供しており、使った分だけの従量課金で利用できる。サーバーであれば台数の半分をプールしておき、処理能力が増えた際に従量課金で使用するというモデルになる。利用しない限りは基本料金のみで済むため、コスト効率を最適化することが可能になる。

 これらのサービスは、用途や機能に応じて組み合わせることが可能だ。「有機野菜や無添加食材の宅配を手掛けていらっしゃるらでぃっしゅぼーや様では、フロントのWebサーバーにスタンダード、バックエンドのDBアクセスにプレミアムを使っていただいております」(大川氏)といったハイブリッドの事例もあるという。

先んじてパートナー拡充に注力する

 「パートナーあってのわれわれのビジネスです」(立田氏)ということで、ここまで重点的に他社との協業に力を入れているクラウドベンダーは珍しい。こうした姿勢は、パートナービジネスをメインに据えてきたソフトバンクのDNAといえる。

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