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SEO:IPアドレス分散とSEOの関係 - IPアドレス分散は本当に「リンクの価値が上がる」のか?

2010年12月29日 20時38分更新

記事提供:SEMリサーチ

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「IPアドレス分散とSEOの話」について、別媒体にて過去にFAQ形式で解説をしたことがありますが、改めて、追加・補足含めて解説をしておきます。Yahoo! JAPANが検索エンジンを切り替えたタイミングで、改めてSEOのリンク構築施策を見直そうという方が増えてきたようですが、その評価・検討において、IPアドレスとSEOの関係がわからないために判断できない人がちらほら見受けられるようになったためです。

共用サーバと専用サーバでSEOに差があるのか?

ホスティングサーバを提供する会社のメニューを見ると、同じIPアドレスを複数のサイト(利用者)で共有する(shared IP address)サーバと、1つのサイトで占有する(dedicated IP address)サーバの2つに大きく分けられます。新たにサイトを構築する時に、両者に差はありません。また、両者が発する/受けるリンクの価値も同等です。

今日は多くのサーバがIPアドレスを共有してホストされていることが多いため、検索エンジン(Google)もIPアドレスの共用/専用を考慮せず、同等に扱います。ちなみに米Google技術担当ディレクター・Craig Silverstein氏や同社ウェブスパムチームのMatt Cutts氏も、同様の発言をしています。

検索エンジンは、IPアドレス単位ではなく、ドメイン単位でリンクの評価をしていると理解をしてください。

IPアドレスのユニーク性は、リンクに付加価値を与えない

IPアドレスのユニーク性というのは、検索エンジンスパマーが構築した、評価すべきではないリンクネットワークを検出し、価値を下げる(devalue)ための判断指標です。IPアドレスのユニーク性によって、リンクの価値があがる(put greater value)わけではない点に注意してください。

たとえば、ここに2つのサイト(A、B)があったとしましょう。サイトAがサイトBにリンクを張る時、両者のIPアドレスを問わず、リンクは同等の価値が与えられます。同様に、50のサイトが存在して互いにリンクを張り合った場合、それらを同じIPアドレスでホストしても、あるいは50のユニークなIPアドレスを用意しても、リンク価値は同等となります。

たとえば30以上のメディアを運営している企業が、SEOを強化するためにサイトのIPアドレスについて検討する時、検索エンジンスパムと認定されるリスクや、SEO効果最大化のためのIPアドレスのユニーク化を検討する必要は、全くありません。

「IPアドレスを分散化することによってリンクの価値が上がる」という表現は、間違いではないと私は思います。ただし、この表現の意味は、後述するように、数万以上のリンクを一度に生成/獲得しようとする時に、IPアドレスのユニーク性を担保することによって「リンクの価値低減を最小化する」(minimize devaluation)と解釈をして下さい。

検索エンジンは、リンク解析を通じて、サイトの持つ重要性や価値を判断しようとしています。人々に役立つ、有益なサイトの識別のためにリンクを解析するため、その価値の不当な操作につながるリンクは評価をしたくないのです。その、不適切なリンクを検出するためにGoogleは様々なシグナルを用いて判別を試みており、そのシグナルの1つがIPアドレスです。

IPアドレスのユニーク性を考慮しなければならない条件とは

繰り返しになりますが、一般的に、企業内のSEO担当者が、通常のSEO実施活動においてIPアドレスのユニーク性を考慮する必要はありません。そもそもの話として、「外部リンク構築施策」 - 第三者から自社のサイトやコンテンツにリンクを張ってもらう、それを促すための活動 - は、元来、様々なサイト(=様々なIPアドレスでホストされたサイト)からリンクを受けるという性質を持っていますので、IPアドレスの分散性を考慮するまでもありません。普通に自然リンク獲得の活動を行っていればIPアドレスは分散されて当然の話なのです。

では、それにも関わらず、なぜSEOの世界には「IPアドレスの分散」という話が登場するのか。答えは、それを考慮しなければいけない特定の状況があるからです。

外部リンクの対策において、IPアドレスの分散に配慮しなければならない状況とは、次の2つのケースです。

  1. 数千、数万単位のリンクを供給・販売しようとする一部のSEO会社
  2. 数千、数万単位のリンクを獲得・購入しようとする一部の企業

先述した通り、真っ当な(ホワイトハットな)SEOを行う限り、必然的に被リンクのIPアドレスは分散されるので考慮するまでもありません。しかし、ちょっとグレー、あるいは手法そのものがブラックハットなものを、グレーに薄めるために、IPアドレスを分散させる必要があります。

冒頭で述べた通り、検索エンジンは、サイトの価値や重要度を不正に操作しようとしているリンクやそのネットワーク(リンクファーム)を除外しようとしています。条件 1. のように、あるサイトの被リンクの90%以上が、同一IPアドレスからホストされたサイトからのリンクであったり、あるいは一時期(あるいは一定期間)に増加したリンクの大半が同一クラスター(一連のサイトネットワーク、Bad Neighborhood)であれば、検索エンジンはそのリンクを疑うわけです。そこで、該当する人たちは、「不自然なリンクを、自然なリンクに振る舞わせるように」IPアドレスを変えようとするわけです。


IPアドレスを分散化すれば、検索エンジンスパムのリスクは低減するのか?

GoogleがIPアドレスを参照してリンクの正当性を判断するような仕組みを取り入れたのは、2004年頃と推定されています。この時期は、Florida Update、Austin Update, Brandy Update といった、Googleの大規模なランキングアルゴリズム変更が相次いで行われていた時期です。それから7年の月日が経過した今日、Googleはさらに高度なアルゴリズムでスパムリンクを検出しています。

したがって、IPアドレスの分散性というのは、今日では小さな小さな要素の1つに過ぎません。IPアドレス分散は、自然リンクを振る舞うための小さな必要条件の1つに過ぎません。「それだけ」では気休めにもなりません。悪意あるサイトのクラスター(Bad Neighborhood)を発見するために、インバウンド/アウトバウンドリンクの本数やページ/ディレクトリレベルの設置位置、ページ内の設置位置、共起リンク、コンテンツ、アンカーテキスト、及びターゲットサイトのオーソリティや重要度など、様々な要素の解析を通じて総合的にリンクの価値が決定されています。

リンクを販売している業者のサイト上の説明を読む限り、残念ながらIPアドレスが分散されていれば十分と考えている方は少なくないようです。また、ある程度詳しい方が運営されているケースで、フィルタリングの網の目を上手いことかいくぐっているのに、ちょっとした落ち度があるようなケースもあります。

現実に毎年、SEO会社が運営しているであろう数千単位のサイトがある日突然、Googleからペナルティを受けてインデックス削除やPageRank無効化の制裁を受けているという現実が示す通り、Googleのスパム排除技術は日本語圏においても年々、着実に高度化しているので、「ちょっと詳しい」レベルでは対応できなくなってきています。


まとめ

最後に結論を。本文で述べたような「条件」に該当しなければ、IPアドレスの分散性は考慮しなくて結構です。

  • 「子会社10社のサイトを相互にリンクしたいのだが、ペナルティの危険性はあるか」
  • 「新規事業立ち上げにあたり新しいサイトを構築する。このIPアドレスはコーポレートサイトと同一で問題ないか」
  • 「10以上のニュースメディアを運営している。グローバルナビでそれぞれのサイトへのリンクを設置したいがリンクファームを認識される心配はないか」

こんな質問を定期的に頂くのですが、いずれも心配ありません。しつこく繰り返しますが、あくまで悪意あるBad Neighborhood、不正にランキング上昇を狙った大量リンクでなければ、IPアドレスの相違はSEOの評価に関係ありません。さらに、IPアドレスの相違はペナルティによりdevalue(価値低減)はあっても価値増加(add value)はありませんので、その意味でも上記質問のようなケースで、あえてIPアドレスを固有化しなければいけない合理的な理由は、今日はありません。

Some SEO myths (Matt Cutts)
http://video.google.com/videoplay?docid=3583760678227172395#

Craig Silverstein answers your Google questions (Google Director of Technology Craig Silverstein)
http://interviews.slashdot.org/interviews/02/07/03/1352239.shtml?tid=95

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