内蔵GPUの存在を大きく変える「Sandy Bridge」の性能とは?

文●宇野 貴教

2011年01月03日 14時00分

メインストリームの4コアCPUがついに32nmへ!
内蔵GPUが伏兵のSandy Bridgeがついに登場

 インテルは、開発コード名「Sandy Bridge」で呼ばれていた、第2世代のIntel Core i7/i5/i3シリーズのパフォーマンスなど一部情報を解禁した。これらのCPUの製造プロセスは32nmとなる。これまでの32nmプロセス製造のインテルCPUは、6コアのウルトラハイエンドの「Core i7-980X」と、2コアの「Core i5/i3」で、4コア製品は長く45nmプロセスのままであった。4コアCPUはパフォーマンスを重視する自作ユーザーのニーズが高いレンジであり、このSandy Bridgeの登場を待ち望んでいたユーザーは多く、期待度の高いCPUである。
 この新しいCPU群は、従来モデルと区別するためにこれまで3桁だったモデルナンバーを4桁に変更し統一されている。そのため、購入時に間違って旧モデルを購入してしまうといった心配はない。

GPU機能をダイレベルでCPUに統合

 Sandy Bridgeの基本アーキテクチャは現行のNehalemアーキテクチャとほぼ同じで、Core MAマイクロアーキテクチャの延長線上に位置する。ただし細かな部分で変更が加えられており、中でも目立つのはSIMD拡張命令「AVX」(Advanced Vector Extension)の追加、シングルスレッドパフォーマンスの向上、GPUコアの統合と改良に伴う機能追加などが挙げられる。
 AVXはSIMD演算のオペランド幅をSSEの128bit幅から256bit幅に拡張したものだ。今後AVXに対応するアプリが出そろってくれば、エンコードや画像処理といった並列処理を多用する用途において確実なパフォーマンスアップが見込めることになる。

 CPUコアに注目が行きがちだが、Sandy Bridgeで見逃せないのは大幅に強化されたGPUコアである。純粋に3D描画機能がパワーアップしているのはもちろんだが、汎用コンピューティングとメディアプロセッシングの機能が追加されている。AMDやNVIDIAが投入してきたGPGPUやCUDAといった要素を、インテルも本格的に開始したと言うことだ。
 これによりユーザーが受ける恩恵は、動画のハードウェアデコードとハードウェアエンコードなどが挙げられる。もちろん、これが魅力的に見えるかどうかは対応するソフトが広く出回ることと、GPU処理による速度アップの度合いによるが、別途ビデオカードを追加することなく実現できるというのは注目に値するだろう。

従来のCore i3/i5/i7とはピン非互換
旧マザーボードでの利用は不可

 Sandy BridgeのソケットはLGA1155と従来のLGA1156と比較してピンが1つ減っており、LGA1155とLGA1156に互換性はない。そのため、LGA1156マザーボードでSandy Bridgeは利用できない。Sandy Bridge向けにリリースされたチップセットは、Intel Q67/B65/H67/P67の4種類で、このうちQ67とB65は法人・企業向けセグメントとなっており、自作ユーザーはH67とP67から選択することになるだろう。

 両者の大きな違いは、H67は内蔵GPUが有効、P67は無効となっていることだ。そのためMicroATXマザーはH67、ATXマザーはP67が主流になると予想されるが、ここでちょっと待っていただきたい。前項で紹介したGPUがもたらす新機能は、内蔵GPUが無効のP67では利用できないのだ。実際にP67マザーでは、内蔵GPUを用いたハードウェアエンコードが利用できる「Cyberlink Media Espresso 6」において、「ハードウェアエンコーディングを利用する」の設定項目がグレーアウトしオフになっていた。内蔵GPUの機能を使ってみたいなら、H67マザーをチョイスするように注意したい。

「Core i7-2600K」と「Core i5-2500K」の
性能をベンチマークで検証

 「Sandy Bridge」の技術的な解説は後日掲載するとして、今回は「Core i7-2600K」と「Core i5-2500K」を入手できたので、早速その性能をベンチマークでチェックしていきたい。

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新旧2CPUずつ、合計4CPUで比較

 今回テストを行なう新CPUは4コア8スレッドの「Core i7-2600K」(3.4GHz)と、4コア4スレッドの「Core i5-2500K」(3.3GHz)の2つ。比較用として4コア8スレッドの「Core i7-875K」(2.93GHz)と、2コア4スレッド「Core i5-655K」(3.2GHz)のスコアも計測している。
 マザーボードは新CPU用にIntel純正のP67搭載マザー「DP67BG」と、H67搭載マザー「DH67BL」を使用。旧CPUはGigabyteのH55搭載マザー「GA-H55-S2V」を用いている。なお、Core i7-2600KはHyperThreadingオン・オフの2パターンを掲載する。

テスト環境
CPU 「Core i7-2600K」(3.4GHz)
「Core i5-2500K」(3.3GHz)
「Core i7-875K」(2.93GHz)
「Core i5-655K」(3.2GHz)
マザーボード 「DP67BG」(P67)
「DH67BL」(H67)
Gigabyte「GA-H55-S2V」(H55)
メモリー Corsair「TW3X4G1333C9A」(DDR3 PC3-10666 2GB 2枚組)
HDD Seagate「ST3160812AS」(160GB)
電源ユニット Thermaltake「Toughpower QFan 650W」(650W)
OS Windows 7 Ultimate(32bit)

 まずはCPUの基本演算性能をSandra 2011でチェックしてみよう。Sandra 2011はAVX命令に対応しているため、新CPUのマルチメディアテストはすべてAVX命令が使用されている。そのため、これらのテスト結果は新CPUが良好だ。特に浮動小数点と倍精度は、オペランド幅2倍ろいう性能強化がそのままに、クロック比約2倍の結果を出しており、今後AVX命令対応ソフトが増えてくれば旧CPUから乗り換える価値が大いにある。
 その他では、純粋な演算テストでのCore i7-2600KのHyperThreadingの効率のよさが目につく。エンコードやレンダリングといった演算速度を重視する用途においては、やはりHyperThreading搭載モデルの優位性が大きい。
 Sandy Bridgeの1コア1クロックあたりの性能は旧CPUよりも5~10%ほど高いが、PC Mark Vantageのような実アプリに近いものだとその差は小さくなる傾向にある。

(次ページへ続く)

3D描画も大幅にパワーアップ
カジュアル3Dゲームで十分な性能へ

 内蔵GPUのパフォーマンステストは、DirectX10対応の「3D Mark Vantage」と「BioHazard 5 Benchmark」、そして「Unigine Heaven 2.1 Benchmark」で行なった。なお、内蔵GPUはDirectX 10.1対応のため、DirectX 11用の「3D Mark 11」は動作しなかった。
 いずれのテストにおいても、Sandy Bridgeの内蔵GPUは従来(Core i7-655K)比2倍以上の数値になっている。この数値から推測すると、ちょうどRadeon HD 5450などのローエンドGPUに匹敵する性能といえるだろう。CPU本体のスペックが圧倒的に高いというアドバンテージを差し引いても、内蔵GPUとして高いポテンシャルを持っていると見て間違いないだろう。

エンコード時間が半分以下に? 想像以上の内蔵GPUエンコード機能

 気になる内蔵GPUによるハードウェアエンコードの性能は、対応アプリであるCyberlinkの「Cyberlink Media Espresso 6」を用いている。エンコード素材はフルHD解像度で約4分のMPEG-2ビデオ(約450MB)で、iPhoneでの視聴用プリセット(320×180ドット)とフルHD13MbpsのMP4変換を行なった。Sandy BridgeとH67チップセットの組み合わせではハードウェアエンコードとハードウェアデコード(Intel Quick Sync Video機能)が利用できるので、この2つの設定のオンとオフの2パターンを計測した。Core i7-875Kは、Radeon HD 6850を接続しハードウェアデコード設定をオフにしている。

 結論を言うと内蔵GPUのハードウェアエンコード機能はかなり強力だ。デコードと合わせてオンに設定すると、Core i7-2600Kでは再生時間の約1/4という驚異的な速さでエンコードが終了している。エンコードマシンとしてSandy BridgeとH67マザーを自作したくなるレベルで、今後動画作成ユーザーの台風の目になるのは間違いない。現在のところ内蔵GPUのハードウェアエンコードサポートを表明しているソフトウェアメーカーはCorel、ArkSoft、Cyberlinkだが、今後対応ソフトが増えてくればさらに面白い展開が期待できそうだ。

製造プロセス変更で消費電力も大幅ダウン

 消費電力はワットチェッカーを用いて、Sandra 2011のマルチメディア演算テスト中の数値を計測した。新旧CPUでマザーボードが異なるため単純な比較はできないが、フルロードとアイドルの差がCore i7-2600Kで80Wと、同じ4コア8スレッドのCore i7-875Kの160Wから約半分に減っている。これまではHyperThreading搭載の4コアCPUと言うとかなり熱いCPUというイメージがあったが、Sandy Bridge世代ではそういったことはないと言えるレベルに収まっている。電源ユニットの負担も減り、かなりうれしい改良点である。

動作クロックも大きく上がり、
内蔵GPUによる付加価値が高まった

 CPUの処理能力だけ見れば、基本性能はAVX命令とクロックアップによる着実なアップだが、内蔵GPUと消費電力削減はかなり劇的な性能変化と断言できるレベルだ。特に内蔵GPUは3D描画性能もさることながら、エンコード機能の圧倒的なパフォーマンスアップがとても魅力的に見える。もちろん、現時点では対応アプリが少ないが、これからの対応を見越してチョイスしたくなるほどだ。
 ここで要注意なのが、内蔵GPUがオンになっていないとエンコード機能が使えないことだろう。今回のテストでは、内蔵GPUがオンでも別途ビデオカードを差している状態だと、ハードウェアエンコード機能が有効にならなかったため、外付けGPUによる高速3Dゲームと内蔵GPUエンコードの両立は難しいと思われる。こうした構成の難しさを除けば、ミドルレンジからハイミドルにかけての、優秀なパフォーマンスと消費電力を兼ね揃えたCPUと言える。


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