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2011年はISPとしての限界に挑む!

冷徹なまでの現実主義から生まれる次のニフティクラウド

2010年12月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2010年1月、いの一番に実際の「クラウド」をサービスとして提供したニフティクラウドのユーザーはすでに500社を数える。しかし、ISPとしての限界を知っているニフティは、パートナリングや地道な機能強化でユーザーを取り込む。

500社獲得でも浮かれられない理由とは?

 2010年1月に仮想サーバーを従量課金単位で提供するIaaSとしてサービスを開始して以降、ニフティクラウドはサーバータイプ拡充やロードバランサー追加など数多くの機能拡張を進めてきた。10月にはAPIを公開し、特定条件で自動拡張する「オートスケール」や既存のサーバーを複製する「サーバコピー」などの機能を追加。11月にはクラウドコンピューティングEXPOへの出展を果たす。そこでは数多くのユーザー事例のパネルが並び、パートナーブースが軒を連ね、多くの来場者の質問に説明員が応えるという場面があちこちで見られた。Amazon EC2のような外資系のクラウドからの乗り換えもあり、ニフティクラウドの契約数は予想よりも早く500社に到達。まさに順風満帆といったところだ。

執行役員IT統括本部長の林一司氏

 しかし、ニフティクラウドを統括する林一司氏に、浮かれた風情はまったく見られない。データセンターや回線を所有しない、大規模な営業部隊がいないなど、ISPとしての限界をきっちり認識しているからだ。多くの顧客を獲得できたのも、「サービス開始だけをアナウンスしていた他社に比べ、実際のサービスを提供できたところが大きいです」(林氏)と、タイミングという要素が大きかったと分析。各社がSNSやゲーム系の事業者の囲い込みをはじめてから、競争も激しくなってきた現状を挙げ、「真剣な選択の表れだと思うのですが、2010年の秋頃からユーザーさんは横並びで価格や機能を評価するようになってきました」と気を引き締める。流行のクラウドをやっていれば、ユーザーが増えるとは考えていない。冷徹なまでの現実主義には、ISPとしてのさまざまな経験があるに違いない。

パートナーリングを強力に進める理由

 では、ISPとしての限界をどのように克服していくか? 1つはパートナーの拡充だ。林氏は「お客様のニーズを拾い上げたり、システム構築に近いところは、パートナーに担っていただきたいと思っています。ニフティがむしろ色を出さないほうがいいかもしれません」と語っており、今後はパートナリングを強力に推進していくという。

 これを促進するために2010年10月に公開したのがAPIだ。契約したパートナーはコントロールパネルだけではなく、APIを介してニフティクラウドを外部から扱うことができる。「手で操作するのは大変なので、自動化を推進したいと考えているユーザーやパートナーのために作りました」(林氏)。APIはSOAPを採用し、Amazon EC2のサブセットのような形で提供している。実際、CSKはハイブリッドクラウドのためのコントロールパネル、イーツーはiPhone用のアプリを提供しているという。

イーツーのiPhoneアプリ「NIFTY Cloud Manager」

 また、12月からは月間稼働率99.95%というSLA(サービス品質保証制度)を導入した。これもユーザーであり、パートナーでもあるSIerの声に応えた施策。「SIerさんから、SLAがないとお客さんの要望に応えられないという声も多く頂き、導入にいたりました」(林氏)と語る。

 2011年は、こうしたパートナーの拡充やSLAの強化により、SNSやゲーム系の事業者から一般企業へと裾野を拡げたいと考えている。林氏は「最近では、SIerがサーバーを持ってきたら、クラウドでできないのか? と逆にお客さんから提案されたといった例も増えてきたようです。今後は、ニフティクラウドを使って、ユーザーさんがSIerさんを巻き込んでクラウドを使うという形を増やしていきたいと考えています」と、あくまでシステムの中の部品として黒子に徹する姿勢を強調している。正念場となるニフティクラウドの2年目がもうすぐ始まる。

初出時、アプレッソの「NIFTY Cloud Manager」と表記していましたが、実際はイーツーの製品です。お詫びして、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2010年12月27日)

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