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安価なAPの投入で異なる市場も取りに行く

いまこそ活きるシングルチャネル!メルーのレゾンデートル

2010年12月21日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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メルー・ネットワークス(以下、メルー)といえば、コントローラとアクセスポイント(以下、AP)を組み合わせるエンタプライズ無線LANの始祖だ。モバイルデバイスの普及やビデオトラフィックの増加で、同社が長らく訴えてきた「シングルチャネル」のメリットがますます活きるという。

大阪ガスショックから5年経ったいまのメルー

 2005年のメルーの国内デビューは鮮烈だった。大阪ガスというビッグユーザーが無名の無線LANベンダーの製品をいち早く導入したという点だけではなく、無線IP電話のインフラとして利用したというのも大きかった。このメルーの成功により、コントローラ主体のエンタープライズ無線LAN市場が国内でも形成された。アルバネットワークスやシスコシステムズ、コルブリス(現HP)などが次々と製品を導入し、大きな注目を集めたのはご存じのとおりだ。

 こうした事例での採用理由となったメルー製品の特徴は、なんといっても複数のAPで同一チャネルを用いる「シングルチャネル」という点だ。マイクロセルを用いる通常の無線LANでは異なるチャネルを隣り合わせで用いるため、プランニングに手間と労力がかかるほか、電波の弱い地帯が出てくる。これに対し、メルーの製品はバーチャルセルという技術により、電波干渉を気にせず単一のチャネルに端末をぶら下げることができる。

メルー・ネットワークスのインターナショナルセールス バイスプレジデント デイブ・ケリー氏

 メルーのインターナショナルセールス バイスプレジデントであるデイブ・ケリー氏は「他の製品はチャネルマッピングが難しいが、弊社の製品はシングルチャネルでコントローラが電波を調整をしている。ユーザーからは1台のAPに見えるので、AP間を移動するのも簡単」と述べる。もちろん、複数の端末でシングルチャネルを共有すれば、おのずと利用帯域は限定される。しかし、「他社は有線でいうところのリピータハブと同じだが、弊社の製品はスイッチと同じで、端末は帯域を一定時間専有する」(ケリー氏)ので、高いパフォーマンスを得られるという。

メルー製品による仮想化と電波出力の調整

新しい市場を切り開く新AP

 シングルチャネル&バーチャルセルの技術は、IEEE802.11n時代になり、ますます大きな意味を持っているという。「11nが採用しているMIMOの技術では、(反射波を用いるため)時間ごとに通信状態が変わるので、マイクロセル型の無線LANでは切れたり、遅くなったりする」という。その点、メルーの製品は安定したリンクとパフォーマンスを提供する。また、既存のIEEE802.11bや11gのユーザーもきちんと認識し、優先度を調整するため、パフォーマンスも良好だという。「第三者機関(NOVARUM)の調査で、シスコやアルバに比べて高いスループット、公平性を実現していることが明らかになっている」(ケリー氏)とのこと。すでに、多くのメルーの顧客がすでに11nへの乗り換えを済ませており、高速化の恩恵を受けている。

 もう1つが音声や映像などへの対応だ。コントローラが端末ごとの帯域の管理を細かく制御するほか、優先度も調整できる。冒頭にも紹介した大阪ガスの事例でも、無線LANでのIP電話がきちんと利用可能であるがために採用されたといえる。「やはり音声の品質担保が一番難しい。逆にこれがクリアできるから、映像配信も充実している」とのこと。

低価格なデュアルバンドの「AP1000i」

 とはいえ、コントローラ型のエンタープライス無線LAN製品は概して高価であったため、ユーザーも医療機関や大学などある程度限定されてきた。こうしたなか、メルーが投入した新製品がIEEE802.11n AP「AP1000i」である。製品は電波調整や設定が不要という特徴をそのままに従来より低廉な価格で提供さあれる。「おもに流通での倉庫や製造現場の工場などでの需要を見込んでいる。ホテルなども有力な選択肢だ」(ケリー氏)ということで、新市場開拓を進める。

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