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スペイン発祥で、社員による独自のソフトウェアレビューが特徴!

世界最大のダウンロードサイト「Softonic」が日本参入

2010年12月14日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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12月9日、スペインのソフトニックは日本市場参入を発表、同日付で日本語サイトもオープンした。日本法人は2009年11月に設立されており、サイト開設に向けた準備を約1年間費やして周到に進めてきた形だ。

スペイン発、世界最大のダウンロードサービス

 ソフトニックは1997年にスペインのバルセロナで創業したソフトウェアダウンロードサイトの運営企業だ。同社のサイトは現在では世界最大級といわれ、ワールドワイドで事業を展開している。日本語サイトは同社として10言語目の対応となる。ワールドワイドでは、公開しているソフトウェア数は13万本以上で、ダウンロード数は一日330万件、月間ユニークユーザー数は6000万ユーザーに達するという規模を誇る。

ソフトニック代表取締役社長兼CEOで、Softnic International執行役員兼ジャパンカントリーマネージャーの内田 隆氏

 同社は広告収入をおもな収益源とするが、利益率/成長率ともに高レベルを維持している点も注目される。この5年間で平均売り上げ成長率は70%、利益率は40%超だという。一方、日本市場は世界第2位のインターネット広告市場であり、ここに成長余地を見いだしたことが同社の日本進出の直接の背景といえるだろう。

ソフトニックの日本語サイト

 同社のダウンロードサイトとしての特徴は、「ソフトウェアのミシュランガイド」と評されるというレビュー重視の姿勢にある。日本語サイトでは、日本法人に所属する日本人社員が実名/顔写真を公開した上でレビューを行なう。この、実名レビュアーによる評価の信頼感がダウンロードサイトとしてのソフトニックの最大の武器となるわけだ。さらに、実際にダウンロードしてみたユーザーによるレビューも追加できるので、社員レビュアーの評価に市場の声を加味して判断する、といったことも可能になっている。

 ワールドワイドでの展開が同社の強みだが、同社では「他言語サイトのレビューを翻訳して転載することはしない」としており、あくまでも日本語サイト独自のレビュー掲載にこだわる姿勢を見せる。ソフトウェアの評価に関しては、特にユーザーインターフェイスの部分では国民性や文化の影響が強く出ることも考えられる。そのため、海外で好評だったソフトウェアが、日本でもそのまま高く評価されるとは限らないのは確かだ。日本独自のレビューを優先する姿勢は、そうした事情からも評価できるだろう。

 反面、この姿勢には「世界最大」という規模を直接的に活かすことができないという側面もある。日本語サイトのオープン当初の紹介ソフトウェア数は、約1000本に留まっている。2015年までに30万本以上に増やしていく計画としているが、現時点での規模としては国内では小規模なレビューサイトといわざるを得ない。レビューの質を落とすことなく順調に量の拡大を実現できるかどうかがまずは鍵となりそうだ。

一般ユーザー向けのダウンロードサイト

 同社の代表取締役社長兼CEOで、本社のソフトニックインターナショナルの執行役員兼ジャパンカントリーマネージャーでもある内田 隆氏は、同社の特徴として「星付きでキチンとレビューすること」「実名顔写真入りのレビューで信頼感、透明性、公平性を実現する」といった要素を挙げている。

名前と写真付きのソフトウェアレビューが大きな特徴だ

 また同氏は日本市場を重視する理由として「日本は世界第2位のインターネット広告市場」「日本語は世界第4位のインターネット言語」「日本はインターネット、モバイル、ゲーム、コンテンツのリーダー」といったデータを挙げ、「日本の優れたサービスやコンテンツ、技術をソフトニックを介して世界に広めていきたい」という。

 現在の日本のPC市場はすでに成熟期を迎えている、という認識が一般的ではないかと思うが、同氏は「これまでのダウンロードサイトのユーザーはPCやITに詳しい人だけが利用しており、一般ユーザーに普及するのはこれから」だという。同社の事業対象はPC/ITに詳しいユーザーではなく、一般ユーザーだ。これはつまり、「両親や家族、子供に勧められるサイトを目指す」という意味という。こうしたユーザーは、「セキュリティ面で不安があったり、やり方がわからなかったり、そもそもダウンロードサイトを知らなかったり、といった理由でダウンロードサイトを利用していなかった」というのが同氏の分析だ。

 さらに同氏は、iPhoneやAndroidといったスマートフォンの普及も追い風だと見る。従来“ダウンロード”という概念に馴染みがなかった一般ユーザーにも「アプリを自分で探し、ダウンロードして利用する」というスタイルが定着したことで、PCでも同様にダウンロードサイトを利用するようになるという読みだ。

 加えて、ソフトウェア開発者が世界に打って出る際のツールとして同社を利用してほしいとも語る。ソフトウェア開発者向けの無料ダウンロードホスティング事業なども展開していく計画で、世界中のユーザーに直接つながる窓口として同社のサイトを位置づけることもできそうだ。

 古株のPCユーザーは「今さらダウンロードサイトを新規展開?」と疑問に感じるのではないか。だが、そう考えるユーザーはそもそも最初から対象外と考えれば、辻褄は合っているのかもしれない。ガラパゴスと称される携帯電話市場と同様に、PC向けソフトウェアに関しても、日本は独自の進化を遂げてきたといえる。携帯電話と同様、「ワールドワイドでの普通」が日本国内にインパクトを与えることになるのかどうか。まずはSEOにも強いという同社サイトの認知度がどこまで高まるかが注目される。

初出時、Softnicと表記しましたが、正しくはSoftonicです。お詫びして、訂正いたします。(2010年12月14日)

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