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F5のiControlを使ってARXの制御も可能に

今度のARXはクラウドストレージまで手が届く

2010年12月10日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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12月9日、F5ネットワークスジャパンは、ファイルサーバー仮想化製品「ARXシリーズ」の拡張を行なった。ローカルのファイルサーバーだけではなく、クラウドストレージまで仮想化の対象とすることが可能になる。

ユーザーとリソースの間に「コントロールプレーン」を提供

 ARXシリーズはファイルサーバーやNASを仮想化するゲートウェイ型のアプライアンス。複数のファイルサーバー、NASの共有フォルダを単一のマウントポイントにまとめることで、効率的なファイル管理が可能になる。

F5ネットワークジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏

 発表会の冒頭、F5ネットワークジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏は、好調に推移した2010年の業績をアピールしつつ、同社が推進する「ストラテジックポイント・オブ・コントロール」という戦略を説明した。これはBIG-IPのようなADC、FirePassのようなSSL-VPNゲートウェイ、そしてARXのようなファイルサーバー仮想化製品をユーザーとリソースの間に配置することで、可用性やセキュリティ、レスポンスを最適化するというもの。

ネットワークにインテリジェンスを持たせるストラテジックポイント・オブ・コントロール

 長崎氏は「ネットワークにコントロールプレーンという概念を持ち込むのがストラテジックポイント・オブ・コントロール。いまある資産を活かしながらクラウドに順調に移行できる仕組みを提供する」と解説する。このストラテジックポイント・オブ・コントロールを実現する戦略製品の1つが、ARXシリーズになる。アコピアネットワークスを買収した2007年から製品をスタートし、2009年は50%増、1210年は100%増という成長を遂げ、F5の売り上げ向上に貢献しているという。

F5ネットワークスジャパン プロダクトマーケティングマネージャ 帆士 敏博氏

 続いて、ARXの概要と市場について解説したF5ネットワークスジャパン プロダクトマーケティングマネージャ 帆士 敏博氏は「現状のファイルサーバーでは物理的にユーザーとリソースのパスをマッピングしているため、容量を拡張できない。また、90%におよぶ使われていないファイルが高価なNASに保存されている」という現状がある。これを解決するためにARXシリーズではユーザーとリソースのマッピングを切り離し、単一の「グローバルネームスペース」にまとめることが可能になる。また、ファイルサーバーを仮想化することで、マイグレーションやレプリケーション、階層化管理などが柔軟に行なえるようになる。帆士氏はファイルサーバー拡張で苦労していた東武鉄道の事例を引き合いに出しながら、ARXによる導入効果をアピールした。

クラウドストレージも仮想化対象に

 次に米F5ネットワークス データソリューションズ プロダクトマネジメント ディレクターのチャールズ・ウッド氏が、クラウドストレージのサポート、F5iControlによるデータ管理API、ARX Virtual Editionという3つの新製品について説明した。

米F5ネットワークス データソリューションズ プロダクトマネジメント ディレクターのチャールズ・ウッド氏

 今回の目玉は、クラウドストレージのサポートだ。従来のARXはローカルのファイルサーバーやNASを仮想化の対象としているが、「ARX Cloud Extender」というソフトウェアを用いることで、プライベートおよびパブリックのクラウドと連携する。ユーザーからARX Cloud ExtenderはCIFS/NFSのサーバーとして見えるが、実際は外部のクラウドストレージの入り口として動作しており、クラウドストレージとはNFSやクラウドAPI経由でアクセスする。階層化管理のティアの1つとして、クラウドストレージを見立てることが可能なほか、ストレージ間でのミラーリングやフェイルオーバー、重複排除も可能になる。「クラウドに対してスムースにデータを移すことができるほか、強固なセキュリティを確保することが可能だ」(ウッド氏)ということで、データの圧縮や暗号化も実現するという。

階層化管理のティアのなかにクラウドストレージを含めることができる

 米国では「ローカルのネットアップNASをARXで仮想化するだけでなく、ARX Cloud Extenderを使ってアイアンマウンテンのクラウドストレージ(Iron Mountain VFS Cloud Storage)にデータを透過的に移行している」(ウッド氏)といったトライアル事例があるという。現在はIron Mountain VFS Cloud Storage、Amazon S3、NetApp StorageGRIDなどに対応しているが、地域ごとのサービスなどにも対応していく予定。ARX Cloud Extender自体はWindows Server向けソフトウェアで、将来的に仮想版の計画もあるという。

 次はBIG-IP用の制御APIであるiControlをARXに拡張した点だ。iControlを用いることで、サードパーティのアプリケーションから最新版のARXをコントロールでき、バックアップやレプリケーション、管理などのソリューションが実現する。たとえば、データ分類のために毎回ストレージをスキャンするのではなく、アプリケーションからARXに対して定期的なスキャンを制御し、処理に基づいてアップデートを行なうといった操作が可能になるという。

ARXもiControlからコントロールできるようになり、外部アプリケーションとの連携が容易に

 ARXの仮想アプライアンス「ARX Virtual Edition」も登場する。こちらは支店や部署などの小規模拠点を対象としており、OEMパートナー版、トライアル版も提供する。価格は290万円程度を予定している。

 長崎氏は「今回の製品強化により、ARXの売り上げを1年で2倍増、顧客数3倍増を目指していきたい」と意気込みを語った。

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