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Dreamforce 2010レポート 第2回

Force.com、VMforceと並び3種のサービスを選択可能に

セールスフォースのPaaS、Heroku買収でRubyに対応

2010年12月10日 10時00分更新

文● 金子拓郎/TECH.ASCII.jp

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12月8日(米国時間)、米セールスフォース・ドットコムが開催している「Dreamforce 2010」の2回目の基調講演にて、CEOのマーク・ベニオフ氏は企業買収により開発言語Rubyに対応したPaaSを提供することを明らかにした。

 初日の基調講演では「クラウドは箱ではない」と、クラウドを称するハードウェアに対する批判を行なったマーク・ベニオフ氏だが、2日目の基調講演では宿敵マイクロソフトを俎上に。Dreamforce 2010の会場であるサンフランシスコのモスコーニセンターの近くで、セグウェイに載った数名がマイクロソフト製品を宣伝するビラを配っていたのだが、ベニオフ氏はこれを取り上げ、マイクロソフトがDreamforce 2010を閉鎖したと茶化した。

会場入り口前に並ぶ、セグウェイに乗ったマイクロソフトのPR部隊

セールスフォースから乗り換えた事例を紹介するマイクロソフトの広告

 続いて、セールスフォースのサービスからマイクロソフトに移行したという人物を大きく取り上げた雑誌広告のコピーがスクリーンに登場。突然流れてきたインペリアル・マーチ(映画スターウォーズのダース・ベイダーのテーマ曲)とともに登壇してきたのは、その広告に出ていた本人だった。その人物に対してベニオフ氏は、セールスフォースに戻ってくるように懇願。会場の聴衆にも立ち上がって戻ってくるように説得してほしいと呼びかけると、むすっとした表情のその人物、最後にはセールスフォースに戻ると宣言して退場していった。

広告の人物がDreamforce 2010に登場。そっくりさんではなく、間違いなく本人だという

 前日明らかにされた6つ目のクラウドサービス「Database.com」に続き、今回の基調講演では、「RemedyForce」と「Heroku(ヘロク)」が発表された。RemedyForceは、ITサービス管理の「Remedy」をセールスフォース上に移植したサービスだ。同社とRemedyの開発元BMCソフトウェアとのアライアンスによって実現ものだ。

一挙に増えた同社のクラウドサービス

 一方、Herokuはスクリプト言語「Ruby」によるWebアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」を使ったPaaS(Platform as a Service)だ。2007年創業のベンチャー企業である米ヘロクが開発・運用するサービスで、さまざまな企業がRubyで開発した10万以上のアプリケーションをホストしている。セールスフォースは、同社を2億1200万ドル(約180億円)で買収し、そのままのブランドでサービスを提供する。

 セールスフォースでは、ユーザーからの「プラットフォームはもっとオープンにしてほしい」という声に応えるべくForce.comのオープン化を方針にしている。このオープンとは、より多くの環境で利用可能にすることであり、開発言語としてはRubyへの対応を考えていた。Ruby on Railsは、グルーポン(Groupon)などメジャーなWebサービスの多くで採用されており、ベニオフ氏によれば「クラウド上の真の言語」なのだ。

 そのため、Ruby on Railsを提供しているベンダーを世界中で探したところ、サンフランシスコにあるセールスフォースの本社の近くに事務所を構えるヘロクを見いだしたとのことだ。ヘロクのビジョンはベニオフ氏のイメージより進んでおり、「この会社をわれわれが買収すれば、業界が進歩する。世の中をまた変えることができる」とエキサイトしたという。

ベニオフ氏に呼ばれて登壇したヘロクのCEOバイロン・セバスチャン(Byron Sebastian)氏

 Herokuのブランドはそのまま維持され、サービスも継続して利用可能だ。前日の基調講演では、クラウドデータベースサービス「Database.com」のデモが行なわれたが、このユーザーインターフェイスはHerokuで動いていたのだという。

2011年、セールスフォースのPaaSは3種類に

 セールスフォースでは、JavaによるPaaS環境「VMforce」の開発も続けている。VMforceは現在プライベートベータの段階で100社が試用をしており、来年には正式サービスとなる予定だ。これにより、2011年にはセールスフォースのPaaSは

Force.com
同社のサーバで運営する元祖PaaSであり、専用ツール「Visualforce」によるGUIでのカスタマイズと専用言語「Apex」による作り込みが可能
Heroku
Amazon Web Services (AWS)上で運営され、Rubyで開発を行なう
VMforce
米ヴイエムウェア共同開発中で、「VMware vSphere」をベースに仮想環境内でJavaアプリケーションを運用

の3種類になり、ユーザーは開発言語や用途に応じてサービスを選択できることになる。

 この基調講演では、Force.comに5つの新サービスを追加し、名称も「Force.com 2」になる旨の発表も行なわれている。この新サービスには、アプリケーションサービスの「Appforce」やGUIで作成可能なWebサイト構築運営サービス「Siteforce」、ディベロッパーによるアプリケーションを配布する「ISVforce」に加え、HerokuとVMforceが入っている。

Appforceなどが含まれる5つのサービス

 こうしたことから、Force.com上のアプリケーション構築にApexとRuby、Javaを混在して使えるようになると受け取ってしまうかもしれない。しかし前述の通り、HerokuとVMforceは、Force.comと並ぶ独立したサービスと理解するのがわかりやすいだろう。

 今年のDreamforce 2010では、Chatter FreeとChatter.comに始まり、Jigsaw、Database.com、Heroku、RemedyForce、そしてAppforceとSiteforce、ISVforceなど数多くのサービスが紹介された。Chatterが紹介された昨年のDreamforce 09と比べると、かなりの違いだ。あまりに多いため、基調講演を聴くだけでは理解しがたく、Force.comとHerokuの関係など正直わかりにくいと感じたこともあった。これらのサービスをいかにわかりやすくユーザーに伝えるか、これが2011年のセールスフォースの大きな課題だ。

講演終了後、聴衆に囲まれるベニオフ氏。熱狂的なファンと気さくに応じるベニオフ氏の関係こそが、同社の最大の資産なのだろう

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