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KORG iMS-20はアプリじゃない、プロ用の楽器だ! 【後編】

2010年11月27日 12時00分更新

文● 四本淑三

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コルグが楽器アプリを作る理由

―― ところでiPadのアプリって儲かります?

佐藤 儲かるかどうかというより、コルグ全体としてみた場合、これはやっておく必要があると判断しているんです。

―― ソフトハウスや音源メーカーならともかく、楽器メーカーがダウンロードで楽器を売るというのは、すごく新しいわけですよ。楽器市場が頭打ちのなかで、戦略的に動いているのかなという気もするんですが。

佐藤 はい。壮大な計画と緻密な計算に基づいて、戦略的に動いています。ということにしておいてください。

「壮大な計画と緻密な計算に基づいて、戦略的に動いています」(佐藤さん)

―― iPhoneアプリを作っているインディーズメーカーは、コルグに本気出されたらかなわんと言ってますよ。どうですかデチューンさん、インディーズメーカーの立場で。

佐野 その通りですよ。コルグさんは言いにくいと思うので、ここはデチューンが成り代わって、いちファンとして言わせていただきますが。最初にSQ-10が入った画像を見せられたときに、あまりのグロ画像ぶりにびっくりしましたからね。

―― グ、グロ画像! あの、一応フォローすると、要するにインパクトの強いデザインってことですよね。

佐野 脅迫めいたものさえ感じましたね。まずiPadのソフトって「よくできてるねー」って文化じゃないですか。買って、ダウンロードして、ああ良くできてるね、って感心してツイートでもして、次に行ってしまう。でも、見た瞬間、すごいことは分かるけど、何していいか分からないという、このゾッとする感覚。大人を怒らせたら怖いというか、えらいことになるんだなと。

iMS-20のマニアックなこだわり、その1。レベルメーターが「dB」ではなく「VU」であるところに注目! エフェクターで「Valve Force」を選ぶと、ゲイン調整で真空管の輝度が変わる

iMS-20のマニアックなこだわり、その2。つまみをポイントした際の動作としてRotary(回転移動)Linear(直線移動)が選べる。佐野さん以外の開発陣は全員Rotary派だったが、そのジャッジをめぐっては「佐野さんが10票くらい持っているので」(福田氏談)、Linearも採用

岡宮 だから今回は一緒にやらせてもらって良かったですよ。

―― まあ、これに比べたらDS-10はものすごく使いやすいですよね。

佐野 でも最初にDS-10が出たときには、誰もそんなことは言わなかったわけで。そういう意味じゃ、皆さん洗脳されたんですよ。

KORG DS-10

岡宮 開発初期のDS-10も、ものすごいマニアックな仕様だったんですよ。佐野が「シーケンサーなんかいらない」とか言っていましたから。

佐野 だから、その頃のマインドがiMS-20には詰まっている気がするんですよね。

―― それはiPadとDSの違いですか?

佐野 プラットフォームの持つ文化や宗教観みたいなものが、多分に影響していると思いますね。DSで作るなら、iPadで作るならと、自由に考えているつもりでも、ある程度はバイアスがかかってくる。それできれいに棲み分けができているような印象はあります。

―― いままでDS-10、iELECTRIBE、それにレガシーコレクションもそうですけど、既存楽器の復刻や参照だったわけじゃないですか。まったくのフルスクラッチ(一から作ること)で、アプリを開発してみようという気はありませんか?

佐藤 もちろんありますよ。

―― それはどんな?

佐藤 言っちゃったらつまらないじゃないですか。

佐野 ただね、新しいインターフェイスは難しいんですよ。iMS-20だって自分が知っているから手を伸ばそうと思うわけで、まったく見たこともない画面だと、どう反応していいか分からない。ジレンマですよね。その点、iMS-20は表向きは皆が知ってる古い形でも、中身は最新鋭という意味で、「iMS-20は銀河鉄道999だ」と言っているんですが。

―― あ、ふーん。なるほど。

佐野 あ、いまいちウケが悪いですね。皆そういう反応なのは何でなんだろう。

「iMS-20は銀河鉄道999だ」のウケが悪いと悩む佐野さん

(次のページに続く)

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