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将来は日本語ePubにも対応!? Reader発表会が開催

2010年11月25日 20時43分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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 既報のとおり、ソニーは電子書籍端末「Reader」を発表した。25日、同社本社で開かれた商品説明会の場では、実機の披露に加えて今後のReaderと電子書籍ビジネスに関する興味深い話が語られた。

Reader Touch Edition (PRS-650)

Reader Touch Edition (PRS-650)

.bookやePub 3.0もサポートしていきたい(野口氏)

野口 不二夫氏

米ソニー・エレクトロニクス シニアバイスプレジデントの野口 不二夫氏

 日本で販売されるReaderは、著作権保護(DRM)付きファイルはXMDF、DRMなしファイルではXMDFとePub、PDF、テキストファイルの表示に対応している。現状ではそれ以外のDRM付きファイルには対応しないが、米ソニー・エレクトロニクス シニアバイスプレジデントにして、電子書籍事業を統括する野口 不二夫氏は、発表会での講演の中でフォーマットやDRMの対応について、「.bookや(縦書き対応が検討されている)ePub 3.0もサポートしていきたい」と述べた。

 物理メディアと処理負荷の高いデータに制約される映像用光ディスクとは異なり、電子書籍は端末を複数のフォーマットに対応させるのが容易である。たとえ登場時点で対応していないDRM付きフォーマットがあっても、ソフトウェア的な対応が絶対不可能というケースは考えにくく、他フォーマットへの対応は当然考えられているだろう。

 また、質疑応答の中で野口氏は、「ソニーは電子書籍ビジネスの中でハードとコンテンツ、どちらで利益を出すのか?」という質問に対して、「ハードできちんと利益を出す」と回答している。その方向から考えても、「ソニー製端末はソニーの供給コンテンツしか読めない」という事態で固定化される可能性は低いだろう。

「Reader Store」のイメージ画面

「ソニーの本屋」こと「Reader Store」のイメージ画面

 ただし、他社が販売する電子書籍への対応や、ソニーの電子書籍販売サイト「Reader Store」で販売されるコンテンツの、他社製端末での対応といった相互運用性については、現時点では確定していないようだ。野口氏は「DRMのドメイン(地域)とユーザーIDが一致すれば(他社の端末でも)読める」と技術的可能性については述べた一方で、あくまでもコンテンツ供給者側のビジネス上の判断に左右されるものとして、現状での具体的な対応については言及しなかった。

Reader Storeは開始時に2万冊以上を用意

話題のベストセラーやタイムリーな書籍など、2万冊以上を用意

話題のベストセラーやタイムリーな書籍など、2万冊以上を用意するという

 サービス開始時点でのReader Storeには、2万冊以上の書籍がラインナップされるとのこと。予定タイトルとして挙げられた書籍では、小学館や集英社といった総合出版社、日経BP社やPHP研究所などビジネス系に強い出版社、さらに岩波書店や早川書房などのタイトルも並んでいる。

 また、デモ会場の一角には国内大手出版社の書籍多数が壁に並んでおり、それらを手がける出版社とも前向きな協力関係を結んでいるようだ。

 一方Reader Store自体は、レコメンド(推薦)機能や特集記事を活用して、ユーザーが「知らない本」との出会いを重視した機能を提供していくようだ。デモは披露されなかったが、ユーザー固有の「本棚」にアイテムを飾ると、そのアイテムが示すジャンルの書籍をレコメンドするという仕組みが導入されるようだ。

ユーザーが自分の「本棚」にアイテムを置くと……

ユーザーが自分の「本棚」にアイテムを置くと、そのアイテムが示すジャンルから本をリコメンドする

 例えば「万年筆」を本棚に置くと、ビジネス書を勧めるという具合だ。SNSとの連携も検討されており、例えばTwitterで読書体験を発信するという仕組みが予定されている。

コンテンツの再ダウンロードや転送回数も権利者次第

 Reader向けのDRM付きコンテンツはReader Storeで販売され、Windows用のコンテンツ管理ソフト「eBook Transfer for Reader」を使い、パソコンにUSB接続されたReaderに転送する仕組みとなっている。そのため、現状ではWindowsパソコンがないと、DRM付き電子書籍は購入できない

 また、日本で展開されるDRM付き電子書籍は現状、Reader本体でしか読めない。米国など他地域で展開されているReader向け電子書籍(フォーマットはePub)は、パソコン上での閲覧も可能であるし、iPhoneなどスマートフォン用のビューワーアプリも提供されている。これらの日本での展開について野口氏は、コンテンツ提供者との議論次第と述べた。こちらも技術的には、DRM付きXMDFの表示機能を備えたアプリケーションを作り、海外と同じくユーザーIDと端末の紐付けの仕組みを用意すれば可能と推測されるので、あとは権利者の意向次第となるだろう。

 ダウンロードした電子書籍ファイルを紛失・破損したり、パソコン自体の破損等でファイルが失われた場合の再ダウンロードや、端末への転送回数といった点についても同様で、いまだに未定で権利者次第とのことだ。しかし、12月10日の本体発売が迫る現状で、こうした基本的な要素が未定というのは首をかしげる。

 例えば、「A社の電子書籍は再ダウンロードが5回でき、端末への転送回数は制限なし。B社は再ダウンロード不可で転送回数も3回まで」といった対応も可能かもしれないが、ユーザー側としては出版社により異なるというのは、わかりにくくて不便だ。そうしたことのないように期待したい。

無線機能、マンガ・雑誌、書体の追加などの検討課題も

 今回発表された2製品の端末は、いずれも通信機能は内蔵しておらず、DRM付きコンテンツの転送には、WindowsパソコンとのUSB接続が必須である。一方、海外で発売されている7インチサイズの「Reader Daily Edition」には、3Gでの通信機能が搭載されているが、同製品の日本展開も含めた無線通信対応については、「ワイヤレスも検討していきたい」(野口氏)とだけ語られた。

 また、日本では欠かせないキラーコンテンツであるマンガや雑誌については、サービス開始当初にはラインナップされていない。これらについても野口氏は手がけたいとの意欲を見せたが、現時点では検討中に止まる。海外では展開されているサブスクリプション型の定期購読コンテンツについても、機能としては用意されているが現時点では検討中とのことだ。ただし、白黒16階調/600×800ドットのディスプレーでは、写真やマンガの表現力に制約があるのも確かなので、ユーザー体験の面からは難しい面もありそうだ。

 そのほか、現在は明朝系1書体しか収録されていない内蔵フォントについても、今後は増やしたいとの意向が示された。


 Reader Storeに関するデモがなかったため、電子書籍購入や運用の細かい部分については疑問が解けなかった部分もあるが、いずれにしても12月10日の発売日になれば、サービスも開始される。今はそれを期待したい。

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