サーバーならではのCPUやメモリ、HDDなどのスペックを見てみよう
サーバーを特徴付けるハードウェアのいろいろ
2010年11月25日 09時00分更新
多様化の進むストレージ
ストレージの分野では、社会全般に渡るIT化によってデータ量が急激に増えているため、一方では大容量化と高性能化、もう一方では価格性能比の向上が図られている。この両極端のアプローチにより、SAS(Serial Attached SCSI)ディスクおよびSATA(SerialATA)ディスクの2種類が選べるサーバーが多くなっている。SASとSATAとは、磁気ディスクそのものとサーバー本体とをつなぐインターフェイス部分の仕様が異なっている。
以前はサーバーのHDDといえば、SASの前身である比較的高価なSCSIディスクが当たり前、SATAの前身である安価なIDEディスクやATAディスクは、信頼性の低さなどの理由でサーバーには使われなかった。しかし、現在ではHDDの冗長化技術の普及により、単体の信頼性で劣るSATAディスクでも、サーバーに利用されるようになってきた。
こうしたHDDの冗長構成には、ミラーリング・RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)といった仕組みがある。これについては、「ゼロからはじめるストレージ入門」の第2回「HDDとRAIDの基礎を学ぼう」に詳しく説明されているので、そちらも参照してほしい。
サーバーの内蔵HDDには、以下の種類がある。
SATAディスク
SATAは、従来のATAインターフェイスがパラレル転送方式だったのに対し、シリアル転送方式を採用してデータ転送能力を向上した方式である。SATAディスクは価格性能比に優れるため、おもにエントリクラスのサーバーに採用されている。用途の面から見ると、ファイルサーバー、プリントサーバー、静的なコンテンツ主体のWebサーバーなど、アクセス頻度が比較的低くディスクの負荷が低いサーバーに向いている。
SASディスク
SASは、従来のSCSIインターフェイスがパラレル転送方式だったのに対し、シリアル転送方式を採用してデータ転送能力を向上したインターフェイスである。SATAディスクと比較して、SASディスクは性能や信頼性に優れ、おもにミドルレンジ以上のサーバーに採用されている。用途の面から見ると、アプリケーションサーバーやデータベースサーバーなど、マルチタスク処理が多く、ディスクの負荷が高いサーバーに適している。
表2は、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立HGST)のSATAディスクおよびSASディスクの最上級製品のスペックを比較したものである。性能面ではSASディスクの圧勝だが、容量あたり単価ではSATAディスクのほうが桁違いに安い。
SATA | SAS | |
---|---|---|
製品名 | Deskstar 7K2000 | Ultrastar 15K600 |
データ転送速度 | 300MB/秒 | 600MB/秒 |
回転数 | 7200回転/分 | 1万5000回転/分 |
バッファメモリ | 32MB | 64MB |
HDD容量 | 2TB | 600MB |
シークタイム | 8.2ms | 3.4ms |
ケーブル最大長 | 1m | 10m |
最大接続台数 | 16台/ポート | 128台/ポート |
参考価格 | 1万350円 | 5万1800円 |
容量1MBあたり単価 | 5.2円 | 86.3円 |
拡張バス(外部インターフェイス)
拡張バスはHDDと同じ方向へ進化したコンポーネントである。どちらも、データ転送方式を従来のパラレル転送(並列転送)からシリアル転送(順次転送)へとアーキテクチャが大きく変化した(図1)。
パラレル転送は、複数の信号線で複数ビットを同時に転送する通信方法である。拡張バスでは、同時に転送できるビット数を「バス幅」と呼び、バス幅×動作周波数がデータ転送速度となる。つまり、バス幅を増やすか動作周波数を高くすれば、性能は向上する。1990年代に登場したパラレル転送方式のPCIバスは、バス幅32ビット(4バイト)/動作周波数33MHzであるから、132MB/秒が最大データ転送速度である。
その後、PCIバスのバス幅は64ビット(8バイト)/動作周波数66MHzに増やされ、データ転送速度は528MB/秒に向上した。さらに、2000年6月に発表されたPCI-Xバスでは動作周波数が133MHzに上がってデータ転送速度は1.06GB/秒に拡張。続いて2002年7月に発表されたPCI-X 2.0では、1クロックあたり2~4回のデータ転送をサポートし、最大データ転送速度は4.24GB/となった。しかし、ここでパラレル転送方式の性能向上は打ち止めとなった。
パラレル転送では、動作周波数が高くなったり、転送距離が長くなったりすると、同時に転送を始めた複数のビットが違うタイミングで到着するという「スキュー」という現象が発生する。加えて、信号線間の電磁的な干渉によりノイズが発生し、転送エラーを起こしやすくなる。
つまり、パラレル転送で性能を向上させようとしても、CPUと同じく動作周波数の壁に突き当たってしまう。そのため、複数の信号線の間のタイミングを一致させなくて済む、シリアル転送方式を採用して性能向上を図ろうというアイデアが生じ、HDDではSATA/SASが、拡張バスではPCI Expressが考案された。
PCI Expressは、上り用と下り用をそれぞれ1本ずつの伝送路を1組にして(これを「レーン」と呼ぶ)、データをシリアル転送する。レーンあたりのデータ転送速度は2.5Gビット/秒(最大250MB/秒)に達する。現在のPCI Express 2.0の規格では、最大32レーンを束ねて(各レーン間は非同期)最大8GB/秒のデータ転送が実現できる。現時点では、レーンを8本束ねた「x8ソケット」(データ転送速度は2.0GB/秒)・16本束ねた「x16ソケット」(データ転送速度は4.0GB/秒)を備えたサーバーが多い。
PCI Expressには、データ転送速度をレーンあたり10Gビット/秒(実質最大1GB/秒)まで向上させる計画がある。これが実現すれば、32レーンで32GB/秒となり、現在のCPUとメモリ間のデータ転送速度に匹敵する性能となる。
変化の少ないネットワーク
サーバーのコンポーネントの中で、この数年、ほとんど変わっていないコンポーネントがネットワークである。1998年6月から1999年6月にかけて標準規格となったギガビットEthernet(GbE)は、現在でもサーバーのネットワークインターフェイスの主流である。2002年以降に標準規格化された10GbE(10Gigabit Ethernet)も徐々に普及してきたが、これを標準装備したサーバーはまだ少ない。ただし、ミッドレンジからハイエンドのサーバーでは複数のGbEインターフェイスを標準装備し、これを並列で使用する「リンクアグリゲーション」でデータ転送速度を向上できる。
サーバーならではの管理機構
クライアントPCにはない、サーバーだけのコンポーネントが管理機構である。遠隔監視用のCPUやLANインターフェイスなどを持つ装置で、以前はベンダーによりマザーボード上に直付けされるユニットや、拡張バスに指す拡張カードなどさまざまな形態で提供されていたが、最近ではワンチップ化されマザーボード上に収まるようになってきた。ベンダーにより、マネジメントコントローラーあるいはサービスプロセッサなどの名称で呼ばれている。
これを搭載したサーバーには、通常のネットワークインターフェイスとは別に、管理機構専用のネットワークインターフェイスがある。管理機構を利用することで、サーバーの本体が障害などでダウンした時に、遠隔地からサーバーの状態監視や、サーバーの再起動などの操作が可能になる。製品によっては、モデムを接続するシリアルインターフェイスを用意し、電話回線経由での遠隔操作を可能にしたものもある。
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