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年賀状の歴史

2010年12月16日 10時00分更新

文● ASCII.jp編集部 ●取材/資料協力:日本郵政 郵政資料館

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 日本郵便 郵政資料館によれば、大化の改新が発布された西暦646年に政治的伝令書を届ける駅馬を置く「飛駅使」制度、また宮廷で年賀の儀式が始まっており、平安時代の儒学者藤原明衡(ふじわらのあきひら)が記した往復書簡形式の最古の文例集「雲州消息」(明衡往来)に年賀の手紙の文例が採り上げられているという。

 戦国時代のものでは武将が記した年始の挨拶文が現存するほか、江戸時代にも飛脚制度の発達によって賀詞を記載した書状がやり取りされており、これらも保存されている。

室町時代初期の書状文例集「庭訓往来」にある年賀状文例(抜粋)。寺子屋の教材として広く利用されていた

江戸時代の年賀状

一般的な普及は明治時代の「文明開化」から

 ただし一般には、年始の挨拶としては親族/知人宅を回り年賀の言葉を交わす「回礼」(年始まわり)が古くから行なわれており、書状によるものは略式と捉えられていたようだ。庶民への普及は、1871年(明治4年)の東京/京都/大阪を皮切りとする新式郵便制度の実施後、郵便はがきの登場にともなってという見方が有力で、文明開化以降に初めて実現されたことになる(1905年/明治38年にすべての郵便局で扱われるようになった)。

 また太陽暦が採用された1873年(明治6年)、郵便はがきの発行とともに郵便料金の全国均一制実施が開始された点も大きいようだ。書状よりも手軽で料金も安かったためか、1881年には年賀状処理で多忙を極める郵便局の模様が報じられるようになっている(1881年/明治14年1月3日付け「中外郵便週報」)。年賀状のやり取りが年々盛んになり、1月2日の初配達に間に合わせるため正月返上の徹夜作業となっていた。また1900年(明治33年)に私製はがきの利用が認められ、これでさらに年賀はがきのやり取りが活発となった。

1875年(明治8年)発行の小型はがきタイプの年賀状

 なお、平民による苗字使用許可(四民平等)や帯刀禁止などがうたわれた1870年(明治3年)、当時の最高官庁にあたる太政官より新年賀詞の書式が「謹奉賀新正」(勅任賀表書式)、「謹恭賀新正」(謹恭賀表書式)と定められ、これが年賀状で用いられる文言「恭賀新年」、「謹奉賀新年」に影響していると考えられているという。

お年玉付き年賀はがきの誕生

 第二次世界大戦前後には年賀はがきの取り扱いが激減していたが、1948年(昭和23年)に年賀切手の発行が再開。1ドル=360円の単一為替レートが実施された1949年(昭和24年)12月にはお年玉付き年賀はがきが初めて発売され、「初夢の贈り物」と宣伝された。このお年玉付き年賀はがきは、終戦後にお互いの消息を知らせ合うのにも役立つとして、民間人によって発案された。

昭和25年用お年玉付き年賀はがき(左)と、その告知(右)。お年玉は、特等が高級ミシン、1等が純毛洋服地、2等が学童用グローブ。なお、この当時から伝統的に切手が賞品に含まれている

1935年(昭和10年)に初めて年賀切手が発行

1948年(昭和23年)発行再開時の年賀切手(羽をつく少女)

 1968年(昭和43年)に郵便番号制度が開始され、年賀はがきも郵便番号枠が採用されている。昭和57年11月には、絵入りタイプの年賀はがきが発行された。

年賀状の現在

 日本郵便発表の「平成22年年賀郵便物元旦配達物数」によれば、2009年(平成21年)年賀郵便物の配達物数(元日のみ)は20億9500万通、2010年(平成22年)は20億8500万通で、1人当たり約16通の年賀郵便物がやり取りされていることがわかる。また「年賀葉書販売・年賀オペレーション状況」によれば、2010年1月7日時点の年賀はがき販売数は34億9600万枚となっている。

 パソコン、年賀状作成ソフト、カラープリンター/複合機が登場したことで、美しい年賀状を個人でも手軽に作成できるようになったこともあり、日本古来から続く伝統として今なお変わらずにやり取りされている。

特別展「年賀博覧会」が開催中

「逓信総合博物館」(ていぱーく)。郵便制度の発達と普及に関するさまざまな展示を行なっている

 「逓信総合博物館」(ていぱーく)では、日本郵政 郵政資料館主催にて特別展「年賀博覧会 〜ツタエマス。オメデタイキモチ。オメデタイカタチ。〜」を開催中だ。開催期間は2011年1月30日まで。休館日は12月29日〜1月3日、1月11日/月曜日(月曜日が休日の場合は火曜日休館)。開館時間は、9時〜16時30分。入場料は大人:110円、小中校生:50円。

 年賀博覧会では、歴代の年賀用切手や、小倉遊亀/片岡球子など日本画の巨匠が原画を手がけた「絵入り年賀はがき」をはじめ約500点の年賀に関する展示を行なう。卯年にちなんだ「うさぎ年賀コーナー」ほか、絵と文字で自分宛て年賀状を作成する「年賀状ワークショップ」(毎日開催)、卯年年賀状コンテストなど各種イベントも実施される。

 逓信総合博物館(ていぱーく)は、1902年の万国郵便連合(UPU)加盟25周年記念祝典行事の一環として誕生した「郵便博物館」より始まった、100年以上の歴史を誇る博物館。日本唯一の「情報通信関係の総合博物館」として関係資料の収集/保存/展示/調査研究などを行ない、郵政/電気通信/放送事業の啓発および普及を図る役割を担っている。

世界中の切手を所蔵。新しい切手も届き続いている

歴代の郵便ポストも展示。左が明治5年からの「掛箱」タイプ、右が明治34年以降の「丸形庇付ポスト」タイプ

巨大な郵便番号読取区分機

郵便配達シミュレーター。制限時間1分40秒で配達を終わらせることを目指す

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