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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第21回

プリアンプ「P-3000R」、パワーアンプ「M-5000R」、CDプレーヤー「C-7000R」

15年ぶりの登場!! オンキヨーの本格派セパレートコンポを聴く

2010年11月17日 16時00分更新

文● 鳥居一豊

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底板には基板を置かない
こだわりのシャーシ構造

P-3000Rの内部。中央にフロントパネルからリアパネルに渡された梁があり、回路基板や電源トランスはそこに装着されている

P-3000Rの内部。中央にフロントパネルからリアパネルに渡された梁があり、回路基板や電源トランスはそこに装着されている

 P-3000Rでは、アナログ部にトロイダルコア、デジタル部にEIコアのトランスを採用。

 M-5000Rは、大型のトロイダルトランスを左右独立のツインモノラル構成で使用し、パワーアンプは定評の3段インバーテッドダーリントン回路を4パラレルプッシュプル構成で搭載。強力なドライブ能力を実現している。オーディオ回路の設計もオンキヨーの最新のオーディオ技術がふんだんに盛り込まれている。

M-5000Rの内部。こちらはサイドパネル内側の出っ張りが梁となっており、そこに各回路が固定されている

M-5000Rの内部。こちらはサイドパネル内側の出っ張りが梁となっており、そこに各回路が固定されている

 回路基板だけでなく、シャーシ構造も斬新だ。一般的なオーディオコンポーネントは、基板を厳重に振動対策された重量のある底板に装着するが、今回の各モデルでは基板を底板には取り付ていない。どうやって装着しているかというと、アルミ押し出し材のサイド/フロント/リアパネルの内側に出っ張りがあり(Fの字を逆さにしたような断面形状を想像してほしい)、そこに梁を渡して基板などを装着するようにしている。

C-7000Rの内部。前後に渡された梁の上に、回路とドライブメカを配置する構造になっている

C-7000Rの内部。前後に渡された梁の上に、回路とドライブメカを配置する構造になっている

 これまで、サイドパネル類はあくまでも底板のメインシャーシを補強するものだったが、今回のモデルではサイドパネル類こそがメインシャーシで、底板はどちらかといえば天板と同じくカバーに近い状態だ。

 ただし、オーディオラックなどに設置するインシュレーターは底板に装着されているので、スチール製の底板も十分な強度はある。

 とはいうものの、底板の剛性感は厚みも十分なサイドパネルなどに比べて弱めで、これまでのオーディオ機器を見慣れていると、ちょっと意外に感じる。

 ちなみに、インシュレーターはメインシャーシ直結という意味でサイドパネルに取り付けられてもよさそうだが、同社の試聴による検討の結果、底板に装着されている。結果的には、インシュレーターを通じてシャーシに影響を与える外部からの振動は底板が受け止め、底板からは遮断された回路基板などに振動が伝わりにくい構造になっているということだ。

 こう考えると、内外の振動の遮断など、逆転の発想であっても核となるシャーシ設計実体に大きな違いはない。


どちらかというと振動を押さえ込まない仕組み

 実はこの設計思想自体、すでに同社のAVアンプにも採り入れられていた。AVアンプでは完全に底板から基板を分離するところまではできていないが、各回路基板はリアパネル側で強固に固定され、底板はあくまで支えとして、柔らかいナイロン樹脂の留め具で固定されており、振動が伝わりにくくなっている。

 また、他社のAVアンプでは底板の強度を高めるために、リブ構造を設けることもあるが、オンキヨーでは一貫して十分な厚みで強度を確保した平らな底板を使用している。これは、底板とラックなどの台の隙間の空間で発生する定在波の影響を低減するため。底板が平らなほうが発生する定在波の周波数が低く、対策しやすいのだそうだ。

 アンプ回路や電源部は、結構な振動発生源でもあり、これを支えている底板を振動させる。底板の振動はオーディオラックとの間の空間で定在波となり、特定周波数の振動が増幅され、アンプに跳ね返ってきて音を濁らせるというのが簡単な仕組みだ。

 興味のある人は、アンプとオーディオラックの間の空間にフェルトなどの布を敷いてみるといい。これは結構効果がある。

 今回のプリアンプなどで言えば、内部の振動の発生源であるトランスやオーディオ回路が底板と直結していないため、底板の定在波の発生自体が少なく、定在波が発生しても回路などへの影響が伝わりにくいというわけだ。

 説明が長くなってしまったが、実に理にかなった振動対策だとわかるだろう。なお、振動対策という点では、過去のオンキヨーのセパレートアンプは徹底的にシャーシ剛性や基板の取り付け強度を高めることで、振動させない方向で設計されていた(そういう設計が流行っていた時代でもあった)。

 しかし、現代はそうやって振動を抑え込みすぎると、音も抑制感のある窮屈な印象になることがわかり、今回のモデルでは“どちらかといえば振動を抑え込まない方向”で仕上げられているという。バイオリンなどの楽器が、胴の美しい鳴り(振動)で音色を作っているのと同じ発想と言える。

 もちろん、振動対策をしていないという意味ではなく、前述の内外の振動を遮断するシャーシ構造をはじめ、まずはあらゆる部分での振動対策(鳴き止め)を試し、最終的に音質に影響の出る箇所だけを的確に対策するようにして仕上げたそうだ。

 そしてこの設計は、プリアンプ、パワーアンプ、CDプレーヤーのすべてに採り入れられており、回路基板や電源部だけでなく、CDプレーヤーのドライブメカなどの重要な部品はすべて前後、または左右に渡された梁(サブシャーシ)に装着されているのだ。

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