このページの本文へ

古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第83回

趣味は軍歌です! 「西洋軍歌蒐集館」が深すぎる

2010年11月09日 12時00分更新

文● 古田雄介

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

普通に聴けてしまったナチス党歌

―― まずはサイトを始めたきっかけを教えてください。

reichsneet 大学3年の頃、暇だったので何かホームページを作りたいと思ったんです。内容は何でもよかったんですが、作るからには人に見てもらうため、何か新しいものを提示しなければ意味がない。そう考えて、趣味だった「軍歌」を扱うことにしました。

 当時日本語サイトを探したところ、軍歌を扱うサイトは頻繁に更新しているところが少なく、あっても政治的だったり研究者的な視点だったりするスタンスのサイトがほとんどだったんですよ。そうではなく、もっと気楽に純粋な「趣味としての軍歌」を紹介するようなサイトなら作れるし、読者に新しいものを提示できるから、人が集められるだろうなと考えたわけです。

reichsneet氏。iPodには1000曲以上の軍歌が詰め込まれ、中高の記憶を思い出すと、当時聴いていた軍歌が脳内で自動再生される。「中学の校外学習のバスで、カラオケ大会のときに軍歌を熱唱してしまったくらい、痛い子供でした」

―― 当時、すでに軍歌には相当詳しくなっていたんですね。

reichsneet いくつか段階があるんですが、軍事モノの原体験は小学生の頃でした。NHKスペシャルで「映像の世紀 第4集 ヒトラーの野望」という、ナチスについてのドキュメント番組が放送されているのを見て「なんか格好いいな」と思っちゃったんですよ。

 そのときはただそれだけでしたが、中学2年のときにCDショップでたまたま旧日本軍の軍歌CDを見つけて洗礼を受けてしまいました。もう、旋律に乗せて、普段使わないような危ない言葉がいっぱい出てくるわけです。天皇陛下万歳とか、何人を殺せとか。そういう怪しさ、何とも言えない不思議さに惹かれて、もう軍歌CDばっかり買うようになりましたね(笑)。

―― いきなりタブーな世界に連れて行かれる感じですかね。

reichsneet そうでした。ただ、本当の意味でハマったのは中学3年、ナチスの党歌「ホルスト・ヴェッセルの歌(旗を高く掲げよ)」を聴いたときです。

 旧日本軍の軍歌というのは、聴いたことがない頃も「どこかに残っているんだろうな」という予想があったんですが、まさか現在も世界中でタブー視されているナチスの党歌が今も聴けるなんて思いもしなかったんです。それがネットで検索したら普通にあった。小学校の頃の原体験もあって、もう感動してしまって、あれで一気に抜けられなくなっちゃいましたね。

―― その感動はメロディですか。それとも歌詞や雰囲気?

reichsneet そこが謎なんですね。好きなモノができるとき、その理由は後づけだったりするじゃないですか。とにかく、最初の衝撃。「こんなのがあるんだ」という感動だけだったと思います。

 ただし、現在魅力に感じているのは、やはり歌詞なんですよ。短い歌詞の中にトンデモな言語が詰め込まれて、それが軍や国民を動員する道具として使われていたという点。それが面白いんです。一方でメロディは色々な国で使い回されたりしているので、そこまで重視しません。たとえば、チリの海軍がナチス党歌の旋律を現役でそのまま使ったりしていますからね。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン