大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第15回
ひとり勝ちソフトバンクを追うドコモ、無策に泣いたKDDI
Galaxy S発売! キャリアが「スマホ・シフト」する狙いとは?
2010年11月04日 09時00分更新
なぜ急にスマホ、スマホと言い始めたのか?
各社がスマートフォンの販売に力を注ぐのには理由がある。
キャリア各社に共通しているのは、通話基本料金を50%割り引くサービスなどにより、音声ARPUが減少。これに代わる収益源として、データARPUを引き上げる必要に迫られている点があるからだ。
ドコモを例にあげれば、ファミ割MAX50などの基本使用料50%割引サービスの契約率は約8割に達しており、さらにバリュープランの契約率は65%。「バリュープランの比率はまだ上昇する可能性があり、あと1~2年程度は、音声ARPU減少への影響があるだろう」(ドコモ山田社長)とみる。
そして、「パケットARPU(データARPU)上昇の切り札はスマートフォン。スマートフォンを購入していただくことがパケットARPUの上昇につながる」(ドコモ山田社長)というのは各社に共通した意見だ。
実際、スマートフォンで先行するソフトバンクの場合、2010年度第2四半期(7~9月)のデータARPUは、前四半期から300円増となる2290円となっている。
ドコモの2010年度第2四半期(7~9月)のパケットARPUは前年同期比90円増の2540円。年間では110円の上昇を目標に掲げており、そのために下期は110円以上の上昇が必要。今回のGALAXY Sをはじめ、冬春モデルとして投入する7機種のスマートフォンの貢献が大きく左右することになる。
さらにドコモでは、スマートフォン向けポータルサイト「ドコモマーケット」を開設。10月1日時点で353コンテンツであったものを、年度末には約700コンテンツに拡大。音楽動画で1000タイトル、デコメコンテンツで1万点、電子書籍で10万点という環境も提供する。これもパケットARPU拡大に寄与することになる。
一方で、ドコモにとっては、iモードをスマートフォンの普及にどう貢献させるかも課題だ。
「iモードでもARPUをあげる努力をするが、これがスマートフォンを使ってみたいという流れにつながる」などとしたほか、「iモードは、シニア向けの『らくらくフォン』などでも利用できるサービスであり、iモードは、引き続きサービスをブラッシュアップしていていく」とする。iモードも、ドコモならではのサービスとして、スマートフォン拡大の切り札にしたい考えだ。
いずれにしろ、ドコモにとって、「スマートフォン市場の拡大」は、2010年度の事業方針として掲げた重要な課題のひとつ。この下期は、Galaxy Sの投入によって、どこまでスマートフォン事業を加速できるかが注目される。
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