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どれが安心? 違いがわかるセキュリティーソフト特集 2011年版 第4回

高度な機能の上級者向け Kaspersky Internet Security 2011

2010年11月04日 12時00分更新

文● 池田圭一

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アプリケーションコントロールとペアレントコントロール

 新機能ではないものの、強化された機能に「アプリケーションコントロール」がある。システムファイルなど、よく利用するプログラムの動作やアクセス権限を調整し、制御するという強力な機能だ。

アプリケーションコントロールの設定

アプリケーションコントロールの設定。現在使われているプログラムは、自動的に制限対象となる

動作状況を確認

タスクトレイアイコンからアプリケーションコントロールを呼び出して、動作状況を確認。プログラムに与えられている権限やリソースなどが確認できる

 よく使うプログラムは、ウイルスの感染ターゲットとなりやすい。そのため、狙われやすいプログラムが万が一ウイルスに感染しても、余計な動作をしないようにあらかじめ縛っておこうというのが、アプリケーションコントロールの考え方だ。使い方を間違えると重要なアプリケーションの動作が不安定になったりするだけに、使いこなすのは難しいが、「Kasperskyならここまでできる」という証明のようだ。

 コントロール機能と関係して、KIS 2011の「ペアレンタルコントロール」についても触れておこう。本特集で紹介したほかの3本のセキュリティーソフトでは、ソフト上で子供用アカウントの新規作成が可能だった。一方KIS 2011では新規作成はできず、Windows側であらかじめ作成した子供用アカウントに対する設定を行なうだけとなっている。

パスワードによるKIS 2011のロック

パスワードによるロックは、KIS 2011の設定変更ロックのほか、ペアレンタルコントロールの管理やKIS 2011の終了、削除などに個別に設定できる

 しかし、さすがに多機能なKIS 2011だけあって、競合製品のペアレンタルコントロールソフトとは異なり、ウェブサイトの閲覧制限だけにとどまらないのが特徴だ。パソコンの使用時間やインターネットの接続時間を許可制にして、アプリケーションの実行制限やファイルダウンロードの制限、さらには個人情報送信やキーワードの使用制限まで可能である。

ユーザーアカウントごとに詳細に設定できる

ユーザーアカウントごとに詳細に設定できる。ほかのパソコンにも適用できるように、アカウントに対する設定のエクスポート/インポートも可能

カテゴリーごとにウェブサイトへの接続を制限

KIS 2011が収集した情報を元に、カテゴリーごとにウェブサイトへの接続を制限できる

 ただし、徹底して管理できる反面、アクセス制限カテゴリーの分類はかなり大雑把である。たとえば「SEX」という文字列を検索したとき、検索サイトでは内容の一部を見せながら一覧表示されるのに、Wikipediaへのリンクをクリックしてもつながらない。

 また、検索サイトを利用したときに、問題のあるサイトを一覧表示から除外する「セーフサーチ」機能を持っているが、ここにローカライズに関する問題があった。google.comやbing.comなど英語圏の検索サイトでは有効なのだが、google.co.jpのような日本語の検索サイトではうまく機能せず、制限した内容の一部を表示してしまうのだ。画像検索のサムネイルも、同様にお構いなしだった。

禁止サイトに接続を試みたときのメッセージ

禁止サイトに接続を試みたときのメッセージ。子どもに見せるものとしてはやや事務的すぎるのでは

レポート機能も充実

レポート機能も充実しており、それぞれの制限事項に応じた行動履歴を詳細に表示できる

 設定項目が充実しており、強力な保護者機能を持っているのはわかるが、制限の判定基準が日本の事情と合っていない。このことはマルウェアのスキャンにも言える。今回、いくつかのテスト用マルウェアをスキャンしてみたのだが、他社のセキュリティーソフトでは検出しているのに、KIS 2011はスルーしてしまったものが数個あった。いずれも日本国内で限定的に流行したマルウェアなのだが、ここにもローカライズの不完全さがみてとれる。


 仮想化技術やアプリケーションコントロールなど、他社のセキュリティーソフトにはない独自で強力な保護機能を有しているのがKIS 2011の魅力だ。一方では、国内市場参入時にユーザーに与えた「難しいソフト」というイメージがいまだ残っているのか、知名度に比べて国内ユーザー数が少ないのが弱点でもある。

 こうした点を鑑みると、どんなユーザーに適しているのかは明白である。多くの設定項目を確認し、各自の判断でカスタマイズできるだけの知識とスキルが必要になるからだ。具体的には、ソフトウェア開発者やネットワーク技術者、家庭内で使うのであれば最低でも家庭内LANを構築・運用できているユーザーということになるだろう。


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筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


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