ピンチ&ズームとハードウェア・アクセラレーションとは
携帯電話向けブラウザーOpera MobileのAndroid版「Opera Mobile for Android」は、ベータ版が1ヵ月以内に「Android Market」で公開予定である。
Operaの携帯電話向けブラウザーには2種類あり、「Opera Mini」は、レンダリングサーバーを利用し、情報を圧縮してからデバイス側に配信するもの。「Opera Mobile」は、アプリ自身がレンダリングエンジンを搭載した「フルブラウザー」アプリケーションとなる。
前回のレポートでも触れたように、「Opera Mini」が通信回線の遅い環境で重宝され、中国やロシアなど多くの国々でシェア1位を獲得している理由はそこにある。
なお、モバイル向けブラウザー製品は195ヵ国で利用されており、Opera Miniが対応しているモバイルデバイスは3000機種以上にもおよぶ。
モバイル&デバイス担当プロダクトマネージャーのフィリップ・グロンヴォルド(Phillip Grønvold)氏は以下のように語る。
グロンヴォルド 「4月にAppStoreで公開されたiPhone用ブラウザー『Opera Mini for iPhone』は、最初の24時間で100万ダウンロードを記録しました。デバイスごとの数字をここで公表することはできませんが、ユーザーのブラウジング量が増えているという事実もまた大変嬉しく思っています」
今回のイベントのショーケースでは、ベータ版のOpera Mobile for Androidをインストールしたスマートフォン「Samsung Galaxy S」と「HTC Desire HD」が展示されていた。
Opera Mobile for Androidはビジネスパートナー向けにはリリースされていますが、一般ユーザーのダウンロードは先となる。
グロンヴォルド 「それは、ピンチ&ズーム機能を搭載してから、一般公開したかったからというのが大きな理由です。Android搭載の標準ブラウザーには、ピンチ&ズーム機能がありますし、とても重要な機能になるため、より良い形で提供したいと最終調整している段階です」
Samsung Galaxy S上のOpera Mobile for Androidを実際に操作してみた。スクリーンに表示されたコンテンツを拡大・縮小する“ピンチ&ズーム”機能は、大変滑らかで、操作もイライラすることがない。画面のスクロールやそれをストップさせるためのタップの反応もとてもよかった。なお、現行バージョンのOpera MobileとOpera Miniでは、拡大は2段階しかできない。
また、Opera Mobile for Androidでは、GPUの処理能力を活用するハードウェア・アクセラレーションを採用する予定だという。
サポートするグラフィックスAPIは「Open GL ES 1.x/2.0」だ。これによって、ページ表示などの動作が高速化されるわけだが、驚いたことに、今回見せてもらったベータ版は、この機能をまだ搭載していないという。それで、あれだけ快適にページが読み込めるのだから、ハードウェア・アクセラレーション搭載バージョンの高速性には、かなり期待できそうだ。
ピンチ&ズームとハードウェア・アクセラレーションの機能は、現在開発中のOpera Mini次期バージョンでもサポートされるという。ただし、グロンヴォルド氏によれば、ハードウェア・アクセラレーションを「最初の公開時に搭載するかは未定である」という。
最後にOpera MobileとOpera Miniの使い分けについてどう考えているのだろうか。
グロンヴォルド 「インターフェースに関しては、エンドユーザーが2つのブラウザーの違いを感じることなく、デバイスや通信環境に応じて使っていただくことを目標にしています。ただし、Opera Miniの唯一の問題は、アプリケーション側にレンダリングエンジンを持たないため、例えばカレンダーやスケジュールなどのデータを、デバイス上で扱うことができません。Opera Miniでは、スピード、圧縮による最適化、ユーザビリティーを重視しています。一方Opera Mobileでは、フルインターネット、フルアビリティー、コンテンツや画像のダウンロードといメリットがあります。それぞれを使い分けていただければと思います」
次回は、Operaのノルウェー本社に潜入、オフィスの様子や50ヵ国から集まる国際色豊かな同社の社風や特徴などをレポートする。