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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第38回

アーティスト印税、安すぎた? 大物プロデューサーの決断

2010年10月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

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安すぎるアーティスト印税

―― それが例の利益分配率の話につながってくるんですよね?

佐久間 サーキュラー・トーンは、音楽を売った純利益をアーティストとレコード会社で折半するという考え方なんだよね。要するに利益を50%ずつ分け合うということなんだけど。

―― それは今までの日本のシステムとどう違うんですか?

佐久間 生々しい話をしちゃえば、今の日本のシステムではアーティスト印税ってあるよね?

―― レコード会社から支払われる印税ですよね。

アーティスト印税(著作権印税)について話す佐久間さん

佐久間 作詞、作曲者には著作権印税というのがあって、最近はシンガーソングライターが多いからそれでお金になるけど。でも全曲、他人の曲をやるようなバンドがあってもいいじゃない? だけどその場合は、著作権印税は支払われないでしょ。

―― カバー曲集みたいなものは、そうですよね。

佐久間 その場合、レコードを作ることで得られる利益は、アーティスト印税しかないわけ。そのアーティスト印税は、日本においては普通は1%なのね。多くて2%なんてこともあるけど、実際にはほとんどが1%。

―― 安いですよねえ。

佐久間 例えば1枚のCDを売ったとするでしょ。原価や税額を抜いて、大体1枚2000円くらいの利益が得られたとする。出荷の20%は「計算対象枚数」になるから、印税の対象になる金額は1600円。その1%だから16円なんだよね。

アーティストと印税の仕組み。ここで話されているのはレコード会社との契約で払われる「アーティスト印税」。通常は1~2%と、とても低い印税率で支払われる

※ 返品分として予測される損失分20%を事前に計上している。仮に返品がなかったとしても残りの20%は支払われない。

―― CDを1枚売って得られるアーティスト印税は16円と。

佐久間 だから1万枚売ったとしても、16万円だよ。4人のバンドだったら、1人4万円。年に1枚アルバムを作ったとして、年間収入がたったそれだけなんだ。

―― でもいまの日本で、1万枚を売るって大変なことですよね。

佐久間 特に無名の新人の場合はね。しかも苦労して売っても、10万枚で40万円、100万枚でも400万円だよ。それでもまだサラリーマンの年収に届かないよね。でもこれがサーキュラートーンの方式で100万枚売れたとして、同じように計算したら、いくらになると思う?

―― ええと、金額が大きすぎてよくわかりません!

佐久間 じゃあ、もっと簡単にしようか。1万枚で利益が1600万円でしょ、それをレコード会社と半分に分けても800万円。もし100万枚売れたら8億円だよね。そしたらメンバー4人でも、一人2億円近いよ。でも、メジャーだったら同じだけ売っても400万なんだよ。

―― まるで夢のような額ですけど! それで問題はプロモーションですよね。

佐久間 それはうちのスタッフが頑張る。今はメジャーでもロクに宣伝なんかしてくれないからね。

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