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産総研、専門知識なしで人間型ロボットの動作が組めるソフト「Choreonoid」開発

歌って踊れるようになった女性型ロボット「HRP-4C」

2010年10月20日 17時00分更新

文● 森山和道

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『トークセッション - ロボットコンテンツの可能性 -』

 会見終了後には『トークセッション - ロボットコンテンツの可能性-』も行われた。

ヤマハ株式会社 研究開発センター ネットビジネスグループの大島治氏(左)とクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の佐々木渉氏(右)

 セッションには産総研の横井、中岡の両氏、SAM氏、プロデュースした東京大学 IRT研究機構 特任研究員の石川勝氏に加え、歌声部分を担当したヤマハ株式会社 研究開発センター ネットビジネスグループの大島治氏、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の佐々木渉氏も参加した。

 大島氏と佐々木氏は、今回のHRP-4Cに適用した技術のほか、同じくDCEXPO内に出展されていた、NECのロボット「PaPeRo」にVOCALOIDを適用した例を紹介し、「ロボットはプラットフォーム。コンテンツが大事。HRP-4Cは舞台、パペロのような小型ロボットは家庭に入っていけるのではないか」と夢を語った。

 さらに大島氏は「声がもっているキャラクターが、ロボットとの相性を考える上では大事だ」と述べて「声が持っている力をもっとアピールしていきたい」と述べた。

DC EXPOのヤマハY2プロジェクトブースではNECのPaPeRoをVOCALOIDで歌わせる試みも

DC EXPOに出展されていたVOCALOIDボード。VOCALOIDの新たな展開を感じさせる

 東大の石川氏は、「動きの技術、声の技術、2つの技術は素材。コンテンツを仕上げるにはクリエイティブが重要」と述べてSAM氏に話を振った。

 まずはプロモーションビデオを中岡氏とSAM氏で見て、ロボットにできる動きとできない動きを見極めるところから始めたという。ロボットにとって足を絡ませたり手をたたいたりするような接触を伴う動きは難しい。また音に合わせるにしてもスピードが十分間に合わない部分がある。

 そこは腕を伸ばしきると間に合わない部分でも、ちょっと伸ばすだけにすれば間に合うなといったことを見出していきながら、今回のダンスの振り付けを作っていったという。

プロデュースした東京大学 IRT研究機構 特任研究員の石川勝氏

 またロボットが踊っていない部分はバックダンサーが踊ることにするなどして、人間とロボット、全体としてコンテンツを仕上げたと語った。

 中岡氏も「ロボットの速度が出ないところに一番苦労した。見栄えのある動きをさせるためにもっと動きを速くさせたいと強く感じた」と述べた。また、動き全体に表情をつける、微妙な人間のしぐさのようなものに関してはキーポーズで作っていくのは大変で、今後は、ロボットがある程度自律的に動けるようにしたほうがいいのではないかと語った。

 SAM氏もこの点について同意し、「最初はまずは手足の大きな動きを作っていく。未夢ちゃんは腰は動くのでしっかり動かしていくほうがいいなという形で振付けていく」と具体的な手順を解説しながら、「腕を上にあげるにしても、普通だったら角度をつけたりすることで踊りに表情がついていくんですが、ロボットはそのまま挙げていく。そこを首をかしげさせたりすることができるといいのでは」と述べた。

トークセッションの様子。多くの人が聞き入り、ネットからもTwitterで参加があった

 横井氏はヒューマノイドそのものの使い方について、「今日はダンスだったが、ダンスを踊るためにこのロボットを作ってるわけではないし、中岡のソフトウェアも、ダンスのために作っているソフトウェアではない。ロボットは機械だが、ある意味ではメディア。どんなコンテンツをのせるかで、介護ロボットにもなるかもしれないし、ダンサーになるかもしれない。どういうコンテンツをのせていくかが大事だ」という。

 そして、「そしていかにコンテンツを技術者以外の人が使えるようにするかが広がりを決める。次にお目にかかるときは、違うコンテンツをお見せしたい」と語った。

 また、「今回、SAMさんのようなプロと組んだ。プロの方と組むことで、ロボットの本当の要求仕様、求められる性能が見えてくる。違うコンテンツをのせるには違う性能が必要。そしてその先に、本当に活躍できる人間型ロボットができるのではないか」と語った。

 石川氏は「ロボットはテレビの受像機のような存在。受像機を使い、番組を作るSAMさんのような方が大事になってくる」と述べ、「ロボットにはいろんな用途があり、活躍するロボットが出てきている。だが、技術者だけでは先に進まない状況だ。そこでコンテンツクリエイターへの期待が高まっている」と多くのコンテンツクリエイターがいるDCEXPOの会場に呼びかけた。

産総研では今後も人型ロボットコンテンツの開拓を目指すという

 また2010年9月に、同じく産総研と川田工業から発表された新型の研究プラットフォーム用ヒューマノイドロボット「HRP-4」とその価格(2600万円)についても触れた。

 「大型観光バスがちょうど同じくらい。観光バス会社はあちこちにある。つまりロボットコンテンツ会社を起こそうと思ったら明日からでも起こせるということ。一人でもそう思ってくれれば」と語った。なお「HRP-4」のデモも、「Choreonoid」を使って作ったものだ。

 最後に横井氏は「歌う部分はヤマハ、踊る部分はSAMさん、その二つを中岡の『Choreonoid』で結んだ。我々の課題は、魂をどう入れていくかにある。多くの人が使えるようにプログラムを開放していきたい。アップルのiPodが売れているのは良いアプリがあるからだが、アプリ自体はアップルがつくっているわけではない。ロボットもそうなるようにしたい」と述べた。

 SAM氏は「初めて見た人はびっくりするかもしれないけれど、昨年に比べてここまで伸びているということは、来年はもっとすごいことになっているだろう。家庭でロボットが活躍する日も近いと思うので、今後も注目していきたい」と語った。


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