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Fusion-io技術説明会で明かされたエンタープライズ市場

I/Oが高速化すれば上位クラスのサーバーが売れる?

2010年10月20日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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デルによる検証の結果は?

一志 達也氏 デル ラージ エンタープライズ マーケティング ジャパン・マーケティング本部 サーバ・マーケティング マネージャ

 続いて、デルのラージ エンタープライズ マーケティング ジャパン・マーケティング本部 サーバ・マーケティング マネージャの一志 達也氏が登壇し、デルが実施したFusion-io製品の検証結果について紹介した。デルの創業者で会長兼CEOのマイケル・デル氏はごく初期からFusion-ioに注目していたそうで、ファースト・ラウンドでFusion-ioに投資したという。DELLは現在Fusion-ioのOEMパートナーであり、自社のサーバー製品とFusion-ioのNANDフラッシュストレージを組み合わせて販売しているという関係だ。

 一志氏が紹介した検証では、Windows環境でのデータベースアクセス性能の比較で、内蔵HDDとFusion-ioとの速度差を測定した結果だ。データを「すべてHDD上」「トランザクションログ領域のみFusion-io上に」「すべてFusion-io上」という3通りの構成で比較したところ、トランザクションログ領域のみをFusion-ioに移動した場合はさほど顕著な差が出なかったという。また、同時に発行されるトランザクション数を増やしていった場合、HDDとFusion-ioの性能差が縮まっていくというのも興味深い結果だ。

一志氏が紹介した検証結果

 赤がHDDのみ、オレンジがトランザクションログ領域のみをFusion-io上に配置した場合、緑が全データをFusion-io上に置いた場合。左のグラフの縦軸はスループットで、トランザクション数が増えるにつれて緑のグラフの長さが赤に近づいていく(スループットの差が減少していく)傾向が読み取れる。右のグラフはこのときのプロセッサー使用率を測定したもの。赤のグラフから、トランザクション数が20を超えるとプロセッサーの使用率が頭打ちになる、つまり、HDDがボトルネックになってプロセッサが遊んでしまう状況が読み取れる。一方、緑のグラフからはトランザクション数が増えるにつれてプロセッサー使用率も高まっていることから、プロセッサの能力を使いこなしていることがわかる。

 これは一見、「軽負荷ならFusion-ioの高速性が発揮されるが、負荷が重くなってくると思ったほどの差がつかない」と解釈したくなるが、一志氏の解釈は異なる。同氏はこの結果を、「プロセッサーがボトルネックになっている」のだという。同氏は「現在はプロセッサの性能が上がりすぎた結果、エントリモデルしか売れず、ハイエンドプロセッサー搭載サーバーを購入するユーザーが減った」と語る。

 しかし、これは必ずしもプロセッサーの処理能力が充分な水準に達したことを意味するわけではなく、従来のHDDがボトルネックとなってプロセッサーの処理能力を活用できない状況になっているため、プロセッサーの性能を高めても無駄に終わり、トータルでの処理性能は向上しなくなってしまっているからだと見ることもできる。Fusion-ioのようなストレージ高速化技術を導入することでHDDのボトルネックを解消し、プロセッサーの処理能力の向上がトータルの処理性の向上に結びつくようになれば、より処理性能の高いサーバを選択するユーザーが増えるのでは、というのが同氏の期待を込めた予測だ。

 サーバベンダーがより上位のモデルの販売に力を入れたいのは当然のことだが、これはユーザーにとっても大きなメリットにつながる可能性のある話だろう。現状でパフォーマンス面で不足を感じていないユーザーも少なからずいるとは思うが、もっと性能を高めたいというユーザーもいなくなったわけではない。しかし、現状ではプロセッサーを高速化しても無駄なので、スケールアウト型の大規模分散システムを構成するしか性能向上の道がない状況だ。これがクラウドに注目が集まる1つの背景にもなっているわけだが、HDDのボトルネックを解消することでより高性能なプロセッサーの能力を活用できるのであれば、サーバーの台数を減らし、より簡素な構成で期待通りのパフォーマンスを得ることも可能になる。

 システム全体のパフォーマンスを向上させ、同時に投資効率の最適化も図ろうとするなら、システムのボトルネックを解消して全コンポーネントの処理能力をそれぞれ無駄なく活用する必要がある。Fusion-ioは、こうした高度なチューニングのために大きく貢献できる可能性があるといえるだろう。

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