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ネットワークの禁忌に触れる ― 第1回

気になる疑問を実験で解消!

古いLANケーブルでギガビットEthernetは使えるか

2010年11月02日 09時00分更新

文● 中野功一、佐和芳夫

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LANケーブルを敷設する際は、2つの注意点がある。それはケーブルのカテゴリ種別と長さである。ここでは、カテゴリ3のケーブルでギガビットEthernetのような高速な通信を行なえないのか、LANケーブルは長すぎるとどのような現象が生じるのかを試してみた。


高速化が進むEthernetの規格とケーブル

 10BASE-Tから100BASE-TX、そして1000BASE-T(ギガビットEthernet)と、Ethernetの規格は高速化が進んでいる。

 こうした状況を受け、ネットワークを1000BASE-Tにアップグレードする企業も増えている。ところがこの際に問題となるのが、LANケーブルである。LANケーブルには表1のようにいくつかのカテゴリがあり、利用できるEthernetの規格や伝送距離に制限がある。そこで、LANの高速化でケーブルにどのようなトラブルが起こるのかを考えてみたい。

ケーブルのカテゴリと対応規格

カテゴリ3は芯数に注意

 最初に行なったのは、10BASE-Tにしか対応しないはずのカテゴリ3のケーブルによる実験だ。測定にはアジレント・テクノロジーのハイエンドルータ向け測定装置「Router Tester900」を利用した。Auto MDI/MDIX対応のRJ-45ポートを2つ内蔵したインターフェイスカードを搭載したモデルだ。このRJ-45ポートにカテゴリ3のケーブル(15m)を接続。100BASE-TXの最大伝送速度である100MbpsでTCPパケットを送信し、20分間にパケットロスがどれくらい発生するかを調べた。

写真1 測定に使ったアジレント・テクノロジーの「Router Tester900」。インターフェイスカードを差し替えれば10GbEにも対応する可能な測定装置だ。ブロードバンドルータのスループット測定で有名な「SmartBit」と並ぶ装置で、信頼性も高い

 この結果は意外なもので、パケットロスはいっさい生じなかった。2種類のケーブルを使って試したが同じ結果であった。個々のケーブルの状態に左右されるため、この結果がすべてのケーブルに当てはまるわけではない。だが、今回使ったケーブルは10BASE-Tが主流だった頃に使っていたケーブルであり、特別に高品質なわけでもない。そのため、規格に反して、カテゴリ3のケーブルでも100BASE-TXで使えるものもある、という結論は出せるだろう。

 続いて、1000BASE-Tの実験も行なおうとした。ところが、カテゴリ3のケーブルでは、1000BASE-Tのパケット転送どころか、リンクアップすらしなかった。当初は「品質が低いため、1000BASE-Tには使えない」と考えたのだが、ケーブルを調べたところ別の理由がわかった。問題はケーブルの芯数にあったのだ。

 一般にLANケーブルは、1本のケーブルの中に2本の芯線をよりあわせた4対の銅線で構成されている。ところが、10/100BASE-TXはこのうち4芯しか利用せず、残り4芯は使わない。そのため、10/100BASE-TXでの利用を想定したカテゴリ3ケーブルには、4芯しか銅線を入れない製品があるのだ。こうすることで、コストをダウンできるほか、ケーブルを細くできるメリットもある。ところが、1000BASE-Tは伝送に8芯の銅線をすべて利用する。そのため、4芯のケーブルは1000BASE-Tには利用できないのだ。

 4芯のケーブルを使っている場合、注意すべき点がある。現在LANで利用するほとんどの1000BASE-T対応製品は、10/100/1000BASE-Tの自動認識になっている。ところが、こうした製品に4芯のケーブルを接続すると、自動認識が正常に働かずリンクすらアップしないことがある

 このため、4芯のケーブルを使っているネットワークにギガビットスイッチを導入した場合、自動認識を無効にして、手動で100Mbpsあるいは10Mbpsに設定しなければならないケースもありあえる。古くからのLANケーブルが残るネットワークにギガビットスイッチを導入する場合は、こうした点を注意したほうがよいだろう。

 次は、20mのカテゴリ5のケーブルで、1000BASE-Tが使えるかを試した。カテゴリ5が対応するのは100BASE-TXまでだが、1000MbpsでTCPパケットを20分間送り続けたところ、こちらもパケットロスなしだった。これならフロアスイッチと各PCを結ぶ短いLANケーブル程度であれば、1000BASE-Tにカテゴリ5のケーブルを使って問題はないだろう。

100m以上のLANケーブルは使えるか

 続いて、ケーブルの距離の問題だ。10/100/1000BASE-Tは、どれも最大ケーブル長は100mと定められている。ここで問題となるのは、すでに100mを超える距離でケーブルを敷設している場合である。10BASE-Tや100BASE-TXの場合、100m以上であっても正常に通信できるケースがままあった。

 それでは、100mを超えたケーブルを使うと何が起こるのだろうか。先ほどの試験と同様にRouterTesterを使って、パケットのロスがどの程度が起こるかを調べてみた。

 その結果は表2のとおりだ。1000BASE-Tでは143メートルからパケットロスが検出され、150メートルでは1分間に40万パケットのパケットロスが生じた。これは全パケットの約5%がエラーパケットであり、まともなIP通信ができないレベルだ。さらに、155メートルではリンクもできない状態になった。

表2 ケーブル長とエラーパケット数

 一方、100BASE-TXでは150mまでは問題なく、155メートルでパケットエラーが100%となった。これに対し、10BASE-Tでは、ケーブル長が155メートルでもパケットロスなしで通信ができた。

 このように同じケーブルであっても、伝送速度によっては正常に動作しないことが分かる。伝送速度が速くなればなるほど、エラーの影響を受けやすく、ネゴシエーションもできなくなってしまう。これは、高速な通信規格ほど高い周波数で動作しており、距離が延びることによる抵抗値の増加の影響を受け、信号波形が崩れやすくなるためだ。逆に考えると、10/100BASE-TXの頃は問題なく使えていたのに、1000BASE-Tに移行したら通信ができなくなったという事態に陥る可能性があるわけだ。

もちろん規格での利用を推奨

 カテゴリの仕様を越えた使い方を奨励するわけではないが、越えた範囲でケーブルを使う場合には、PCでファイルを転送するなど、正常な通信ができているかのチェックが必要だ。著しく速度が低い、あるいはFTPのセッションが途中で切れるといった事象が発生する場合には、より低速の規格に設定し直せば、通信が正常に行なえる可能性がある。

 ケーブルのトラブルは非常にやっかいなものだ。LANで障害があった場合には、通常ルータやスイッチングハブを疑うことが多い。逆にいえば、ケーブルへ注意が向かうことが少なく、そのためケーブルにトラブルがあった場合、障害原因を特定することが難しくなるのだ。ケーブル中のパケットエラーは視覚的に確認できない。ケーブルを敷設するなら必ず最新のものを使い、また高速なEthernetに切り替えるのならリプレースするなど配慮したい。

 本記事は、ネットワークマガジン2004年12月号の特集を再編集したものです。内容は原則として掲載当時のものであり、現在とは異なる場合もあります。

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