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KARAREMICHi iPhone REPORT ― 第2回

簡単なパズルゲームが、シンプルな問いの答えを示す

日本の個人・独立系iOSアプリ開発者【1】—スタジオルーペ

2010年10月08日 23時00分更新

文● 倉西誠一(@kararemichi

iPhone/iPod touchだからこそ、登場することができた才能

 「発表された時から、iPadは絶対これだって思ってました。アメリカでの発売と同時にゲットするためにAppBank@kazuend君とハワイのアップルストアまで買いにいったのですが、実物を見て、ますますその考えが強まりました。iPadは、絶対にみんなで対戦プレイをするのが楽しいデバイスだと思います」。

 iPhone/iPod touchアプリではプレイヤー1人と時間との戦いを、テーマというよりも強く、作家性というレベルで感じさせたスタジオルーペだが、iPadでは一転、プレイヤーと誰か他のプレイヤーとの戦い、遊びをテーマにしたゲームをリリースしている。(時間との戦いというテーマは)「倉西さんに言われるまで、自分では思ってもいなかった」というリオさんだが、iPadでの多人数プレイに関しては、自覚的にそれをテーマとしている。面白いのは、それゆえにゲーム性、画面デザインやゲーム進行がiPhone/iPod touchタイトル以上にシンプルになっていることだ。起動即プレイスタート! という感覚もまた、多人数で遊ぶことを前提としているのだろう。

スタジオルーペのiPad第1弾、「COLOR BLOQ」(無料)。画面中央に表示されるお題と同じブロックをタップするというシンプルな対戦ゲーム。4人で遊ぶのが一番おもしろいのだが、4人であれ2人であれ、自分の向きからは逆さまに見えるフィールドを使うといったゲームとは関係のないしばりを入れてプレイしてみると、なおおもしろい(酒席では特にもり上がる)「Fusion Calculator for iPad」(450円)。計算結果を、ひょいっと計算機の外に出して置いておくことができ、もちろん戻すこともできるというユニークな計算機アプリ。スタジオルーペとしては、初のツール系アプリでもある。iPhone版「フュージョン計算機」(350円)、「Fusion Calculator Lite」(無料)もリリースされ、高い評価を得ている
「SUPER WORM BALL」(350円)。画面上を動き回るイモムシのようなキャラクターを操作して、相手のゴールにボールを押し込むiPad用ゲーム。ポイントは最大4人でプレイできること。その場合は、2対2のチームに分かれて得点を競う(1匹ずつキャラクターを動かして対戦する2人プレイも用意されている)。また、開発意図とは大きく異なるが、このゲームはひとりでも楽しめてしまう。キャラクターが勝手に動き回ってくれて、なおかつ画面のデザインがかわいいので、起動したままただ眺めていてもけっこう楽しいのだ。気が向いた時にコントローラをタップして向きを変えたりすれば、キャラクターたちの試合に干渉することを目的とした、まったく違うゲーム、遊びになる

 リオさんは、もともとプログラムを学んでいたわけではない。およそ1年半前にiPod touchと出会い、「このデバイスで何かを作りたい!」と直感的に考えて、プログラムの教習本を3冊買ってきてデベロッパー登録をしたそうだ(しかし、それは結局読まなかったらしい)。その後は自己流で試行錯誤しながら、アプリを作り、リリースし続けている。そういう経歴なのに……と書くと失礼だが、スタジオルーペのアプリには不具合がほとんどないことに驚かされる。

 また、さらに驚かされるのは、およそ1ヵ月に1本というハイペースでリリースを続けながら、まだまだ作り切れないほどのアイディアがあることだ。あるというよりも、実際に話してみると、次から次へと思い付いて思い付いてしょうがないという印象を受ける。あるアプリを作っている時に他のアイディアを思い付いてしまい、我慢できなくなってそっちを先に作ってしまったということもあるらしい(「SUSOKU」がその例なのだが、着想から完成まで2日だったそうだ)。

 「大ヒットタイトルがあるわけじゃないから、本当は月に2本くらいのペースでリリースしないと、個人デベロッパーは食べていけないからね」とリオさんは笑うが、iPhone/iPod touch/iPadの驚異的なスピードで進む大きな流れ、うねりに、なんら気負うことなく付いていける感性には、ある種の新鮮さを感じる。

 そう、僕がスタジオルーペのタイトルに注目し、好感を持つ理由はそこなのだ。彼はプログラマーではない。ゲームはずいぶん遊び込んできたようだが、たとえばゲーム雑誌の編集者になるような、そんなマニアックさは持ち合わせていない。ただそれゆえに、ストレートにゲームの本質に向かい、「何かに挑むこと、何かと競うこと」というテーマを導き出し、手が追い付かないほど思い付いてしまうアイディアを、次々と実現し、世に問うている。「自分のアプリをもっと多くの人に遊んでもらいたい」と常に切望しながらも、他のデベロッパーの動向には、それほど注意を払ってはいない。このしなやかさは、個人デベロッパーというよりも、まるで1人のアーティストのようだ。

 こういう才能が、歴史的な背景や必然性なしに登場してくる。これもまた、iPhone/iPod touchというプラットフォームの大きな魅力だろう。

 この記事のために行なわれたインタビューは、AppBankからポッドキャストとして配信されている(AppBank Podcast)。iTunesのPodcastタブからぜひ聞いてみてほしい。

リオ・リーバスさん(写真右)と、AppBankの@kazuend君(左)

「COLOR BLOQ」デモ(スタジオルーペ)

「Fusion Calculator for iPad」デモ(スタジオルーペ)

この文章は、iPhonePeople 2010年07月29日発売号に掲載されたものです。

COLOR BLOQ
作者 Studio Loupe
価格無料 ファイル容量7.8MB
対応デバイスiPad 対応OSiOS 3.2以降
Fusion Calculator for iPad
作者 Studio Loupe
価格450円 ファイル容量1.8MB
対応デバイスiPad 対応OSiOS 3.2以降
SUPER WORM BALL
作者 Studio Loupe
価格350円 ファイル容量1.5MB
対応デバイスiPad 対応OSiOS 3.2以降

筆者紹介──倉西誠一

石川県金沢市出身の元・電撃PlayStation編集長。著書は「モンスターハンター」シリーズのプレイログである「狩られ道」「狩られ道豪黒毛」(いずれもアスキー・メディアワークス)だが、最近はすっかりiPhoneゲーマー。Twitterアカウントはkararemichi

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