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「データは世界を動かす」時代に向けたハイエンド・ストレージ

日立、Hitachi Virtual Storage Platform発表

2010年09月29日 07時00分更新

文● 渡邉利和

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9月28日、日立製作所はエンタープライズディスクアレイシステム「Hitachi Virtual Storage Platform」および関連するソフトウェア/サービスを発表、同日販売開始した。

ストレージ階層の仮想化

 エンタープライズディスクアレイシステム「Hitach Virtual Storage Platform」(VSP)は、高度なストレージ仮想化機能の実装で定評のあった同社のハイエンド・ストレージの新世代モデルに当たり、仮想化機能をさらに進化させてストレージ階層の仮想化を実現した上で自動化技術にも注力したという。

日立製作所 情報・通信システム社 RAIDシステム事業部長の岩崎 秀彦氏

 製品説明を行なった日立製作所 情報・通信システム社 RAIDシステム事業部長の岩崎 秀彦氏は、2004年に実現した「ストレージデバイス仮想化機能」を第1弾、2007年の「ボリューム容量仮想化機能」を第2弾と紹介した上で、今回実現した「ストレージ階層仮想化機能」を日立が実現する仮想化機能の第3弾と位置づけ、「真のストレージ仮想化技術の提供ベンダーとして、さらなる進化」を実現したと語った。

新製品・サービスの特徴

ストレージ仮想化への取り組み

 現在では、エンタープライズ・ストレージでもSSD(Solid State Drive:半導体ディスク)を活用する例が増えており、最高速アクセスが可能なレイヤとしてSSDを位置づけ、中間レイヤに高速なSAS HDD、容量当たりのコストが低いSATA HDDを最下層に位置づける3階層の構成が一般的になってきている。VSPでもこの3階層構成をサポートするが、さらに別途提供されるストレージソフトウェア「Hitach Dynamic Tiering」によってデータ・アクセスパターンを監視し、アクセス頻度に応じて一定サイズ(42MB)のブロック単位で自動的にデータを階層間で移動させる。

SSDを活用した階層化

 岩崎氏は、ユーザー企業での調査の結果から得られた知見として、「企業内のデータアクセスでは、50%のデータアクセスが5%のストレージ領域に集中し、30%のアクセスが15%の領域に、20%のアクセスが80%の領域に対して行なわれている」と紹介した。この結果を踏まえ、全容量の5%分に相当する容量をSSDで実装し、15%をSAS HDDに、80%の容量相当分をSATA HDDとすれば、コストとパフォーマンスのバランスを最適化できることになる。ただし、データへのアクセス頻度は時々刻々と変化していくものであり、人手による監視/移動を行なうのは現実的ではないため、これを「自動化」した点がポイント。同社によれば、この自動最適配置機能は「エンタープライズアレイとして世界初の実装」だという。

 ハードウェア面では、コントローラアーキテクチャが進化し、システム性能が従来製品であるHitach Universal Storage Platform Vに比べて最大で2.3倍に向上したほか、2.5インチ・ドライブの採用が目新しい点だ。SSDおよびSAS HDDで2.5インチ・ドライブがサポートされている(3.5インチ・ドライブも利用可能)。この結果、少ない設置スペースでより大容量を実現でき、消費電力の低減も図られた。

ハードウェア面での性能強化

 コントローラアーキテクチャの進化によって、新たにスケールアウト型の拡張が容易になった点も特徴となる。同社ではこれを「3Dスケーリング構造」と呼ぶ。これは、「スケールアップ」「スケールアウト」「スケールディープ」の3方向での拡張が可能、という意味で名付けられたものだ。

3Dスケーリング構造

会場で展示された実機

 スケールアップは、内蔵ドライブ数を増やすことでストレージ容量を拡張するという方向だ。1システムで最大1024HDD、80ポート、4プロセッサ、256GBキャッシュ、という規模まで拡大できる。スケールアウトは、2システムを並列に接続する形になる。ただし、単純に2システムを併置するのではなく、システム境界をまたぎ、全体を1つのLUNとして構成することが可能であり、利用上は単一のストレージシステムとして扱うことが可能になる点が特徴だ。最後のスケールディープはあまり馴染みのない言葉だが、第1弾として実装された定評ある技術であるストレージデバイス仮想化機能を使って他社製品を含めた既存ストレージを仮想統合することで容量の拡大が可能となることを指している。同社ではこうした拡張性を「クラウド環境に最適」としており、高度な自動化機能と組み合わせることでデータセンターでのクラウド基盤に最適なストレージ」だと位置づけている。

 また、従来から提供されている「Hitachi Virtual Storage Service」のサービスメニューがVSPに対応したことに加え、新サービスとして「エコノミックスサービス(Storage Economics service)」が新たに加えられた。これは、仮想化機能の導入効果を可視化するサービスとなる。ストレージ仮想化の導入効果はすでに常識化しており、「容量効率の改善/コスト削減」が実現できるということは周知のことといってよいだろう。ただし、実際にその改善効果は金額換算でいくらに相当し、ストレージ環境の更新に要する費用と比べてどうか、といった個別具体的な部分は簡単には見えてこない。エコノミックスサービスはこの問題を解消し、ユーザー企業が事前に導入効果を詳細に把握した上で導入に踏み切ることができるようになると期待される。

 なお、Hitachi Virtual Storage Platformの価格は、ファイバチャネル8ポートから、システム物理容量約718GBからで7715万2950円から、Hitachi Dynamic Tiering Softwareは220万5000円からと発表されており、出荷開始はいずれも10月4日の予定。

(次ページ、データは世界を動かす)


 

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