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クラウド時代を「Express5800/ECO CENTER」で乗り切れ! ― 第4回

完全外気空調+Atomサーバーで電力コストは20分の1へ

PUEは1.1?日本ラッドが目指す究極のエコデータセンター

2010年10月06日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田 元

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「サーバーで10分の1、データセンターで2分の1ですから、従来に比べて20分の1の電力で済みます」。衝撃的ともいえる完全外気空調を採用したデータセンター構想を明かしてくれたのが、日本ラッド ネットワークコンピューティング事業本部 システム運用部 部長の栗原豊氏である。このエコデータセンターの仕組みとAtomサーバーの役割を聞いてみた。

チャレンジを尊ぶ社風で 生まれたデータセンタービジネス

 データセンターでの電力増大という課題に、多くのメーカーや事業者が取り組んでいる。40年の歴史を持つ日本ラッドもそのうちの1社である。

 日本ラッドは、受託をメインとするソフトウェア開発会社で、「東大の数学科のメンバーが中心になって設立した理系の尖った会社なので、大手SIerがあきらめるような案件にどんどんチャレンジしています」(プロダクトマーケティング事業本部 取締役 事業本部長 須澤 通雅氏)という社風だ。もともと受託で開発したシステム自体を預かるという形が多かったため、データセンターは以前から運営していた。こうした場面で使っているサーバーやネットワークなどのインフラを外販し、積極的にビジネスにつなげようということで生まれた部署が、ネットワークコンピューティング本部である。

プロダクトマーケティング事業本部 取締役 事業本部長 須澤 通雅氏

 日本ラッドが第3四半期に発表するサービスは「Amazonと同等のクラウドサービスを半額で提供します」(須澤氏)という衝撃的なもの。CPUなどの拡張に上限のあるVPSではなく、ユーザーが思いのようにリソースを可変でき、スケールアウト可能なストレージまで利用できる 真のIaaS(Infrastructure as a Service)だというのだ。この背景には、米国主導のクラウドコンピューティングが台頭することで、情報流出や国内IT産業の空洞化といった危惧もあるという。このサービスを実現するために同社が開発したのが、スケール機能を実現するクラウド基盤システムと建築コストと利用電力を大幅削減するすることによって低価格を実現するための「排熱型データセンター」である。

国内初となる完全外気空調を 採用した「排熱型データセンター」

 繰り返しになるが、従来のデータセンターの課題は、サーバーを含むIT機器の増大により、冷却にコストがかかること。そして、排熱や電力の問題で高密度化が阻まれてきたことだ。これに対して日本ラッドが提唱する「排熱型データセンター」は、空調冷却機をなくし、完全外気冷却を行なうことで、大幅なコスト削減を実現するというもの。「建設コストを従来の800万円/1ラックから200万円/1ラック以下に。利用電力も2分の1にして、PUE1.2以下を実現します」(ネットワークコンピューティング事業本部 システム運用部 部長 栗原豊氏)とのことだ。

 日本ラッドの排熱型データセンターの構造はきわめてシンプル。サーバーラックを間に置き、隔壁を用いて部屋を吸気室と排気室に分離する。そして、大型のファンを使って、吸気室から排気室に送風を行なうというものだ。こんな単純な構造で、きちんと冷却ができるのか? 

日本ラッドの排熱型データセンターの構造

 実は同社は他社に先駆け2009年10月に、すでにこの排熱型データセンターでの実証実験を公表している。この結果を見ると、冷却は気温よりも送風量が重要であり、空調冷却機をなくしても、きちんと稼働することがわかった。むしろ外気冷却の場合、夏の暑さよりも冬の寒さのほうが課題で、CPU温度が下がりすぎ、不具合が発生してしまうという問題があった。そのため、冬場にはCPUの排熱を吸気室に一部環流することで、気温が下がりすぎるのを防ぐことにしたという。

 「実証実験の結果、CPU温度は外気温プラス10℃で安定していることがわかりました。国内のほとんどの地域では40℃を超えませんので、日本全国で稼働できます。また、コンテナ型データセンターと異なり、既設ビルを有効活用できるため、セキュリティも高く、コストも大きく抑えられます」(栗原氏)。さらに水冷式と比べると、完全外気冷却では設備を設けない分、低コストで、漏水などの危険性もないという。

40℃という画期的な温度条件を実現

 そして、この排熱型データセンターで消費電力を減らすもう1つの秘密兵器がNECのAtomプロセッサー搭載サーバー「Express5800/E110b-M」である。排熱型データセンターの設計とAtomプロセッサーのサーバーは、電力消費削減のためのまさに両輪となる要素といえる。「40℃の動作温度を保証してくれるという画期的な温度条件を実現してくれました。あと、大量導入のためのコストパフォーマンスも考えてもらいました。私たちには保守や運用の部隊もおりますので、サーバーには過度な信頼性は不要です。こうした点を考慮し、価格面でもずいぶんがんばってくれました」(栗原氏)とExpress5800/E110b-M導入の理由を語る。また、Atomの実力に関しても、そもそもパフォーマンスのボトルネックがCPU以外にあることも多く、Atomを非力だと考えるユーザー自体も少ないと考えている。実際に、検証段階で中堅/中小企業向けWebホスティングサービスの想定性能を満たしており、十分にサービス利用可能であるということを確認している。

ネットワークコンピューティング事業本部 システム運用部 部長 栗原豊氏

 実はAtomプロセッサー搭載のサーバーは、日本ラッドが製品化を熱望していたモノだった。つまり、日本ラッドにしてみれば、排熱型データセンターとともに省電力化の鍵であったAtomプロセッサー搭載サーバー製品化の願いが期せずしてかなった形になる。栗原氏は「省電力・省スペースを実現するAtomプロセッサー搭載のサーバーを作って欲しいと、いろいろなメーカーにおねがいしました。他社は営業さんで話が止まるけど、NECさんは開発とマーケティング部隊を連れてきて、話を聞いてくれました」とNECの顧客志向の姿勢を高く評価する。

 結果としてNECは本来サーバー向けではないAtomプロセッサーを搭載したサーバーの開発に着手した。モジュール型でありながら、ブレードサーバーのような複雑な構造を取らず、単一の電源を複数のサーバーで共有するというシンプルな構造を採用。省電力・省スペース、そして高い集積密度というデータセンター事業者を鷲づかみにするユニークな製品を実現した。日本ラッドも10月にExpress5800/E110b-Mを既存のデータセンターに導入し、11月にはいよいよ排熱型データセンターに実装する予定だ。

 今回のサーバー導入のやりとりを介して、須澤氏はNECに対して「省電力という分野に関しては、間違いなくNECは最先端を進んでいます。あと、最大の強みは顧客のニーズを聞いてみようという姿勢だと思います」という最大限の賛辞を送っている。まさしく日本のクラウドを大きく変えるデータセンターの誕生はまもなくだ。

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