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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第11回

NokiaのCEOが交代 ソフト主導の新しい時代を築けるのか?

2010年09月22日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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NokiaはいつまでSymbianを採用し続ける?

 課題はいくつかあるが、最優先課題はプラットフォームだろう。歴史的経緯から採用し続けている「Symbian」を見直す必要がある(Nokiaは1998年にMotorolaやEricssonらとともに携帯電話用OSを開発・ライセンスするSymbianを設立、2009年に買収して非営利団体とした)。SymbianはPsionのプラットフォームを土台としており、マルチタッチ対応など新しいスマートフォン時代への対応が遅れた。

 IDCが9月初めに発表した動向予測では、現時点ではSymbianは最大のシェアを誇る(40.1%)が、2014年には32.9%に縮小、一方Androidは16.3%から24.6%に拡大すると予想している(ここ数ヵ月のAndroidの急激な繁殖をみていると、2014年にシェアが24.6%というのは控えめな予想にも感じるが)。

 Motorola、Sony Ericssonなど、かつてSymbian搭載機を開発していたベンダーはAndroidを選択して、新しさを打ち出している。一方のNokiaは昨年、タブレットで採用してきた自社Linuxプラットフォーム「Maemo」を搭載した初のスマートフォン「Nokia N900」を発表した。その後MaemoはIntelの「Moblin」とマージし、「MeeGo」となった。MeeGoにどのぐらいフォーカスするのかが気になるところだが、今のところメインはSymbianだ。MeeGo戦略をより具体的にすべきだし、Androidを採用するぐらいの変化があってもよさそうだが、どうなるのだろうか。

 プラットフォームに関連して、アプリケーションストア「Ovi Store」の活性化も急がれる。このあたりハードウェア主導でやってきたNokiaの弱みが、組織再編などの変化を試みたあとも残っていることをうかがわせる。

 それからタブレットの再度の開発もある。Nokiaは2005年にMaemoを搭載した「Nokia 770」を発売している。だが、時期の問題か、マーケティングや製品の訴求力の問題なのか、タブレットでも結局、後発のApple(「iPad」)がトレンドの火付け役となってしまった。NokiaがMeeGoベースのタブレットを出すうわさが少し前からあるが、SamsungなどのAndroidタブレットが登場し始めている。ここでも時間の余裕はなさそうに見える。

QWERTYキーボード搭載の「Nokia E7」。4型のマルチタッチスクリーンにキーボードとスマートフォンとしてもかなり大型

 Elop氏はこのような厳しい状況下で9月21日に就任した。Microsoftのビジネス部門トップからの移籍だが、Microsoftに在籍していたのは1年半程度、それ以前はMacromedia(その後、Adobe Systemsに買収)、Juniper NetworksのCOOを経ている。Nokiaの会長、Jorma Ollila氏はElop氏を指名した理由について、ソフトウェア分野の知識を評価したとコメントしている。今度こそNokiaがソフトウェア/サービス中心に据えられるかが注目される。そのElop氏は9月14日、15日に英ロンドンで開催した「Nokia World」に登場し、開発者に呼びかけたと報告されている。

 ちなみに次のCEO候補と目されていたスマートフォン事業トップ、Anssi Vanjoki氏がNokiaを去ることを発表している。建て直しが急がれるスマートフォン事業はトップが続けて交代しており、Vanjoki氏の後継が誰になるのかも気になるところだ。

4月に発表済の「Nokia N8」。1200万画素カメラに加えて、ソーシャルメディアへの連携が大きな特徴である

 なお、そのNokia Worldでは「Nokia E7」など「Symbian ^3」搭載スマートフォン3機種を発表、Symbian ^3機種は先に発表済みの「Nokia N8」と合わせて合計4機種となった。次期フラッグシップのN8は予約台数では過去最大を記録しているという。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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