SACDの失敗を超え、音楽配信時代に「DSD」を考えなおす
ご存知のようにSACDはCDの次世代フォーマットと言われながら、一般的に普及しているとは言いがたい状況が続いている。
理由はいくつか考えられるが、まず大多数のリスナーがCDの音質で満足していること、そしてSACDで販売されているタイトルが限られていることがあげられる。
コピープロテクトも施されているし、CD層を持つハイブリッド版は割高だ。なら普通のCDで良いというのが消費者心理だ。そもそもCDだって売れていないのだから。残念ながらパッケージメディアとしてのSACDには、ほとんど将来性を感じることはできない。
だが、DSD方式には、WAVやAIFFのようなPCMファイル同様、PC上で扱えるファイルフォーマットがいくつか存在する。配信する側にとっても、SACDのようなパッケージとして売るのはハードルが高いが、DSDファイルの配信ならローリスクで可能になる。
OTOTOYで配信されるのは「DSF」というフォーマット。元々はソニーがVAIOにプリインストールしていた「SonicStage Mastering Studio」というソフトのために策定したものだ。
残念ながら現行機種に設定はないが、「Sound Reality」と呼ばれる高音質サウンドチップを積んだVAIOと、SonicStage Mastering Studioの組み合わせは、DSDの可能性を身近に感じさせてくれるものがあった。
國崎編集長が試聴会場で「なぜか我々が配信を始めたらディスコン(製造中止)になってしまった」と嘆くのもむべなるかな、だ。
カジュアルな再生環境があれば、DSD配信はかなり魅力的だ。音楽配信と言えば非可逆圧縮方式のファイルが主流で、CDと比較しても音質面でのメリットはない状態だが、もし同じ値段でDSDが選べるなら「配信で買ってみようか」というモチベーションにもなるだろう。少なくとも私は大友良英と高田漣の演奏なら、DSDで欲しい。