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デスクトップ仮想化のすべて 第9回

ターミナルサービスの元祖は多彩な方式を提供

ネットブート型も網羅するシトリックスのデスクトップ仮想化

2010年09月30日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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まだあるデスクトップ仮想化の実現方法

 上記の3種類はデスクトップ/アプリケーションの実行をリモートで行なう「サーバーサイドコンピューティング」という形での実装だ。しかし、それ以外にもXenDesktopではローカルでアプリケーションを実行する形のVDIも実現可能だ。

 まず、「Local Streamed Desktops」は、ネットブート技術によってサーバー側に保存したデスクトップイメージをローカルPC上で起動する。サーバーのディスク領域の一部をローカルのPCの起動ディスクとしてマウントするイメージだ。デスクトップイメージをサーバー側で一元管理できると同時に、クライアントPCの演算能力を活用できるため、運用管理負担の軽減とハイパフォーマンスを両立できる。

図3 ネットブートの技術を利用する「Local Streamed Desktops」

 一方、「Virtual Apps to Installed Desktops」は、ローカルで稼働しているデスクトップ上にサーバー側から仮想化されたアプリケーションを配信する。これは、上記のネットブートと同じような手法で、アプリケーションのメモリイメージをクライアントに配信し、クライアント側でアプリケーションを実行する形になる。

図4 アプリケーションイメージのみを配信する「Virtual Apps to Installed Desktops」

 この場合のメリットはLocal Streamed Desktopsとほぼ共通となるが、サーバー側で管理するのがデスクトップ全体ではなく、アプリケーション単位になるという違いがある。一度配信されたアプリケーションは、クライアントがオフラインの状態でも継続して実行可能なので、ノートPCを利用するモバイルユーザーをサポートする場合などにも有効だ。

 最後に、「Local VM-based Desktops(XenClient)」という手法もサポートされる。これは、ローカルのPC上で仮想化プラットフォームとしてハイパーバイザを実行し、そこに仮想化されたデスクトップイメージを配信して起動する「ローカルハイパーバイザ方式」のことだ。

図5 仮想マシンをクライアントPCで実行する「Local VM-based Desktops」

 この手法の利点は、デスクトップ全体が仮想化されていることで、ユーザーはローカルのPC上で複数の環境を利用できる点だ。業務用の環境とプライベート用の環境を用意しておき、勤務中は業務用環境を利用し、業務が終了したら個人用PCとして同じハードウェアを活用するスタイルが自然に実現できる。

画面4 2010年5月に発表された「XenClient」

XenDesktopの高速化への取り組み

 XenDesktopでは、ユーザーの使用感を向上させるための取り組みとしてCitrix HDX(High Definition eXperience)にも取り組んでいる。HDとは、TVなどでもよく耳にする高精細の意味だ。画面転送技術をベースとする場合、転送される画面のサイズは小さいほうが負荷は軽くなるが、今時の大サイズ高精細な画面表示になれたユーザーにとっては、データ転送の都合だけを考えた小サイズ画面で作業するのは耐え難いものだろう。そこでシトリックスでは、さまざまな高速化技術を取り入れることでユーザーがローカルPC上で作業するのと代わらない使用感を得られることを目標として掲げている。

 導入予定の技術としては、「HDX Media Stream」「HDX RealTime」「HDX 3D」「HDX Plug-n-Play」「HDX Broadcast」「HDX IntelliCache」「HDX Adaptive Orchestration」などがある。従来の画面転送技術が苦手としていたリアルタイム処理やマルチメディア、3Dといったアプリケーションへの対応を強化し、データ転送を最適化していく計画だ。

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