現役ミュージシャンが語る、「KORG M01」はココが◎!

文●四本淑三

2010年09月04日 12時00分

 8月31日、新宿ロフトプラスワンで、「株式会社DETUNE 会社説明会」と称する謎のイベントが開催された。

 株式会社DETUNEとは、ニンテンドーDS用ソフト「KORG DS-10」の開発チームである岡宮道生(元AQインタラクティブ)、佐野信義(元キャビア)、光田康典(プロキオン・スタジオ)の三氏で設立されたソフトウェアメーカー(公式サイト)。かねてから何らかの音楽用ツールを開発していると噂さてれいたが、そのうちの1つがこのイベントで明らかに。

 それはニンテンドーDS用ソフト「KORG M01」だった。

KORG M01

※ ちなみにDS-10開発チームは、先日のCEDEC 2010のサウンド部門で最優秀賞を受賞している(公式サイト

 ソフトのモデルとなったのは、1988年に発売され、90年代初頭にかけての音楽シーンを支えたシンセサイザーのベストセラー機「KORG M1」。発売から2年で10万台を売り上げ、一説には世界で最も売れたシンセとも言われている。

 人気の理由は、マルチトラックシーケンサーを内蔵した、PCM音源搭載のオールインワンキーボードだったこと。24万8000円という価格は決して安くはなかったが、1台でオケをまかなえるためコストパフォーマンスは高かった。当時のコルグはこのモデルを「ミュージック・ワークステーション」と呼んでいた。

 そのPCM音源をすべて移植したのがKORG M01で、91年に発売された01/Wの一部音源と、新たに追加された音源を合わせて300音色を内蔵している。

公式デモムービー

 開発はDETUNEとコルグの共同で行なわれ、オーディオドライバのチューニングはプロキオンスタジオ、グラフィックはアウディオが担当。発売は2010年12月31日の予定。価格は5980円。販売元は、もちろん株式会社DETUNEだ。

M1とM01は何が違うのか?

 DS版「M01」のモデルとなったKORG M1の音源は、PCM波形をフィルタやエンベロープで編集する、現在のデジタルシンセサイザーと同じ構成だ。同時期にPCM波形を内蔵した「Roland D-50」というモデルもあったが、アタックのようなごく一部にPCMが当てられていただけで、楽器の再現性という意味ではKORG M1にかなわなかった。

KORG M1の音源 : ai(advanced integrated) Synthesis Systemと呼ばれていた

 その最たるものが「M1 Piano」と呼ばれるリアルなピアノの音色。この時代のサウンドアイコンと言えるほど、様々な楽曲に使われていた。

発表会では御本家「KORG M1」が持ちこまれた。KORG M01では、音色はもちろん、インターフェースにも相当のこだわりを見せる

 ニンテンドーDS用のKORG M01は、音色ごとにアタックとリリースタイムの設定はできるが、フィルター部分は省略されているため、積極的な音作りはできない。その代わりシーケンサーパートは8トラックで、同時発音数は12音のポリフォニック。カオスモードでは和音の入力もでき、指定したキーとスケールに沿った和音が出る仕組み。音色を作るシンセではなく、作曲のためのツールと考えたほうがいい。

 DS-10ではWiFiを使って8台までの同期が可能だったが、KORG M01では省略された。その理由について、会社説明会での佐野さん曰く「ほとんど誰も使ってなかったでしょ。みんな手動で上手く合わせてたじゃないですか、あんなに苦労してデバッグしたのに!」ということで省略が決まったらしい。

ひたすらしゃべる佐野さん

 作曲データはDS-10同様、ニンテンドーDS同士のWiFi接続で交換できるが、他の機器に書き出す機能はない。またMIDIの入出力もサポートしないし、オーディオ出力も本体のイヤホンジャックのみとなる。

インターフェイスは「ユーザーアンフレンドリー」!?

 さて、会社説明会はというと、KORG M01がいかにすごいかを株式会社DETUNEの三人が(というより佐野さんが)しゃべり倒し、ゲストミュージシャンとコルグ側の開発チームを呼んで演奏を披露するという内容。会社の資産内容やリクルーティングに関する説明のようなものは一切はなかった。

 コルグ側開発チームで企画担当の佐藤隆弘さんは、石井明美バージョンの「CHA-CHA-CHA」、開発担当の金森与明さんはデバッグ用に作ったというYMOの「パースペクティブ」や、ボビー・ブラウンのようなブラコンを彷彿とさせる、ああ、バブル期ってこの音だったよね……という曲を披露。

ゲストミュージシャンも次々に登場

 ゲストミュージシャンは、KORG DS-10のライブでもおなじみ、サイモンガー・モバイル、ヨナオケイシ、koishistyleの三氏。それぞれオリジナル曲、カバー曲、ネタ曲を披露。この会社説明会の1週間前にKORG M01のテスト版を渡され、急遽作曲を命じられたらしいが、さすがの完成度だった。

 そこで聴けた音は、もうKORG M1以外の何者でもなかった。聞けば、デザインも相当にこだわって作りこんだらしい。液晶表示の字体やLEDの明滅がそっくりなだけでない。なんとインターフェイスの見せ方も「ユーザーアンフレンドリー」を目指したという。

徹底的な「ユーザーアンフレンドリー」を目指したというインターフェース。写真はメニュー画面のもの。「HELLO!!! KORG M01」と、当時を思い出すものに

 たしかにKORG M1の操作系は使いやすいものとは言えず、その要素を省くとM1っぽくなくなってしまうわけだが……。しかし、実際のKORG M01は、アンフレンドリーなルックを装っていても、フィーリングは相当に良いらしい。

 とはいえ、現在までのところ、開発チーム以外にKORG M01を使い込んだのは、世界中に先のお三方しかいない。そこで実際に使ってみた印象をメールで伺っている。これを読んで大晦日までイメトレを重ねておこうではないか。

「会社説明会」で披露された楽曲

FamilyMart Jingle Arrange by Koishistyle


シェフ脱帽 by サイモンガー・モバイル

御三方が語る「KORG M01」 partI

Q1. まず第一印象を教えてください。

■ 作り手のメッセージが強いシーケンサー。(サイモンガー)

■ いろんなジャンルの曲が割と簡単に作れそう。やっぱりM1の音色群は良い。(ヨナオ)

■ ホントの第一印象は「そう来たか!」。DSでM1相当が動くとは思っていなかったので驚きました。ジャンルを選ばずに使えるという意味では、DS初の本格的な作曲ツールではないでしょうか。(koishi)

M01ではもちろんキーボードもエミュレート。「KORG M1の音」とも言われたピアノ音源がそのままに再現されているのが何よりの特徴

Q2. 音源がPCMで音色は作れないわけですが、オリジナリティは出せそうですか? 出せるとしたらどんな方法が考えられるでしょう?

■ 音色のオリジナリティと音楽のオリジナリティは別。自分に限って言うならば、どんなツールを使ってもやることは変わらないです。ただ、実機のM1を経験した我々世代(アラフォー)は、これで作ると80年代感にとらわれがちになるので、逆に今10代20代の、M1に対して先入観の無い世代の人たちがこれでどんな音楽を作るのか興味があります。(サイモンガー)

■ 音色の選び方、使い方、組み合わせ。そもそも音符だけでも十分に音楽的な個性は出せると思う。細かな打ち込みテクニックやミックス。楽曲構成など個性のあらわれる要素は色々ある。音色で推奨されていない音域の使用や変わった奏法の面白さが個人的には一番興味がある。(ヨナオ)

■ オリジナリティは音色より「楽曲」で決まると思っています。作れる楽曲の幅はグンと広がったのでむしろオリジナリティは出し易いんじゃないかなと。音作りは初心者が躓きやすいトコロですし、まずはコピーから入って……という使い方も出来るので、非常に敷居は低くなっていると思います。(koishi)

シンセ、ドラムの打ち込みに使うシーケンサー。これで音を打ち込み、作曲していくのがメインの楽しみ方になる

Q3. KORG DS-10と比較していかがですか?

■ DS-10を置き換えるものではなく、別の楽器として共存するもの。「M1があるからMS-10いらないや」とならないのと同じです。双方の違いを楽しみながら、適材適所で使っていきたいと思います。(サイモンガー)

■ 過去の素晴らしい楽器の再現、ガジェット化という意味で、コンセプト的には非常に似ていると思う。ブレてない感じ。DS-10が粘土をこねるように音楽を作るとしたら、M01はブロックを組み合わせて作る感じ。(ヨナオ)

■ ビックリするくらいお互いを補完する関係になっていると思いました。インターフェイスも結構違うのに、フィーリングは近くて、でも中身は本当に別物。シンセ部に関しては、アナログシンセとPCMシンセの関係なので、それは比較するものではないですよね。一長一短。シーケンサー部に関しては、本当にDS-10から素晴らしい進化を遂げたと思います。(koishi)

御三方が語る「KORG M01」 partII

Q4. カオスモードで面白い使い方はありますか?

■ ソロで使うのも面白いのですが、むしろミュートギターとかのバッキングを作るのに便利です。(サイモンガー)

■ ハモやコードで使うのが楽しいと思う。簡単に色んなパターンが鳴らせるので、リズムで使うのも楽しい。(ヨナオ)

■ カオスモードはコードがすごい。4音モードなんかは適当にやっててもオシャレなコードパターンを作ってくれるので、驚異に感じてます(笑)(koishi)

ペンタッチで音色を直感的にぐにゃぐにゃいじる「カオスモード」も搭載。インプロビゼーション(即興)の可能性が広がる

Q5. 今回はシーケンサー部がキモだと思うのですが、操作性の印象や、応用できそうなワザがあれば教えてください。

■ すごく妥当な操作性の、不足の無いシーケンサーだと思います。「ユーザーアンフレンドリー」と仰っておりましたが、ルックのアンフレンドリーさに対してフィールは妥当、と感じました。ピアノロール画面の鍵盤をタップするとその音が鳴るのは便利。演奏をしつつ、シーケンスを組みつつみたいなパフォーマンスがこれ使って出来るかも知れません。

 あとは、シーンのロック機能を使うことによって、JBがライブでやってたような、「展開するぞー、キーはGだぞー」と散々Xタイムで煽ってから展開部になだれこむようなのも出来るでしょう。(サイモンガー)

■ とても操作しやすいと思う。テンポの設定やSTEP数の設定により自由度はかなり高いと思う。音符の入力モード(ピアノロール)の鍵盤で音が出るのはかなり便利。タッチペンでの入力は既存のDAWよりも使いやすいと思う。パターンプレイやミュート・ソロプレイができるのでLIVEパフォーマンスの可能性はあると思う。(ヨナオ)

■ ピアノロール画面は、階層構造が全くないのが非常に使いやすいです。ノートを複数選択してムーブ、コピー、エディット等が出来たり、ボタンでページ単位の移動が出来たり、表示が1オクターブキッチリになったり、痒いところに手が届いた感じ。

 あとは、各シーンでステップ数(最大64)・テンポ(最大360)を個別設定出来るのが大きい。実質的にパターンという縛りから開放されたので、本当に自由に曲を作れます。ポップスはもちろん、オーケストラ的なものや民族系なども。(koishi)



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。


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