このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Apple Geeks 第5回

iWork '09の新機能「EPUB書き出し」を速攻テスト

2010年08月30日 22時00分更新

文● 海上忍

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説をあますことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

 UNIX使い向けをはじめ、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

 MPEG-LAが、ネット上で無償公開されるものに限り、H.264/AVCのライセンス料を恒久的に免除すると発表しました。これまでも2015年末までは無償で提供されてきましたが、それ以降の対応は明らかにされず、YouTubeなどの動画サイトの懸念材料とされてきました。HTML5のムービーフォーマットの件もあるため即断はできませんが、1ユーザーとしては歓迎したいですね。

 さて、今回は「ワープロソフト『Pages '09』でのEPUB書き出し」について。8月27日配布の「iWork アップデート 9.0.4」に「Pages '09」(バージョン4.0.4)の新機能として含まれた、「iBooks」にも採用されているオープンな電子書籍フォーマット「EPUB」の書き出し機能を検証してみたい。

「iWork '09」同梱のワープロソフト「Pages '09」。最新のバージョン4.0.4で、EPUB書き出し機能が追加された

PagesとEPUBは相性がいい?

 PagesにEPUB出力機能が追加された……と聞いたとき、筆者は正直なところ「予想よりも少し遅かったかな」と感じた。その根拠は2つある。

 1つは、Pagesのファイルフォーマット形式が、そもそもEPUBに変換しやすい特徴を備えているからだ。iWork '09に収録のPages 4で使用されるPagesファイルは、一見しただけでは「*.pages」という拡張子を持つバイナリファイルだが、実態はXMLで記述された文書部分とQuick Look用のJPEG/PDFファイルからなるZIPファイルだ。その証拠に、拡張子を「.zip」に変換して適当なツールで解凍すると、「index.xml」などのファイルに展開される。

Pagesファイルは、XML文書とQuick Look用のPDF/JPEGなどで構成されている

 ちなみに、EPUBの文章部分はXHTMLとCSSで構成されている。XHTMLは、XMLの文法に基づきHTMLを再定義したフォーマットで、文章のレイアウトに利用されるCSSとの組み合わせは現在のWeb標準となっている。XHTMLはXML文書の一種であり、XMLからXHTMLへの変換は比較的容易なことをあわせると、中身はXMLなPagesファイルをEPUBに変換することもまた容易だと考えられる。

Pagesファイルに含まれるXMLファイル。同じXMLベースであるだけに、EPUBで使われるXHTML+CSSへの変換は比較的容易か?

 もう1点、Pagesの開発元であるAppleの戦略も挙げられる。フォーマットにEPUBを採用した「iBooks Store」を展開するAppleは、コンテンツを拡充するためにEPUB生成ツールを製品ラインナップに加えたいはずで(それがプロフェッショナルの要望に応えられるかどうかは別問題)、早晩EPUB対応アプリケーションを出す可能性が指摘されていた。iBooks Storeのオープンからすでに4ヵ月が経過していることをあわせると、むしろ遅いくらいだ。

 若干話はそれるが、現行版Microsoft Office(2007以降)のファイルフォーマット「Office Open XML」(OOXML)も、やはりXMLベースだ。Microsoftは自前の電子書籍プラットフォームを持たないが、EPUBと(フォーマットおよび仕様策定団体とも)近い関係にある障がい者向け電子書籍規格「Digital Accessible Information System」(DAISY)に対応したWordアドイン「DAISY Translator」を、今年4月に提供開始している。EPUBの普及度合いにもよるだろうが、WordでEPUB出力がサポートされることも、そう遠い話ではないだろう。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中