このページの本文へ

「電話も、インターネットもこれ1台!」をもう一度

ひかりの時代に帰還!ヤマハのSOHOルーター「NVR500」

2010年08月24日 13時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2006年のRT58iの登場から4年。SOHOルーターの王「NetVolante」が名前を変え、ひかりの時代に帰還する。Interop 2010で展示されていた「X10(開発コード)」の正式製品名は「NVR500」となった。ヤマハ サウンドネットワーク事業部 開発推進部 企画・知財グループ 技師補の平野尚志氏に新製品の概要を解説してもらった。

満を持して登場した定番SOHOルーターの後継

 「NetVolante(ネットボランチ)」は1998年に登場したヤマハの個人・SOHO向けのルーターブランドで、当時のコンセプトは「電話も、インターネットも、1台に統合したオールインワンルーター」というもの。ISDNをフル活用できる多彩な機能、充実したアナログインターフェイス、個人でも使いやすいGUIなどの特徴を持ったNetVolanteシリーズは、NEC「Atermシリーズ」やNTT-ME「MN128-SOHOシリーズ」とともにISDN全盛期を彩った。初代のNetVolante RTA50iから、ブロードバンド時代を経て、10機種目のNetVolante RT58iが2006年に登場。200Mbpsのスループット、USBポートの搭載、GUIの刷新といった特徴を盛り込んだRT58iは長らくSOHOルーターの定番として市場に君臨した。4年が経つのに価格が下がらないのは、人気の証ともいえるだろう。

2006年に登場したヤマハのSOHOルーター「NetVolante RT58i」

 とはいえ、4年という月日が経ち、ユーザーからも「RT59i」の登場を望む声が増えてきた。また、国内ブロードバンドはFTTHが主流になったほか、HSDPAなどモバイル・ブロードバンドも一般化してきた。こうした状況を踏まえ、満を持して登場したのがRT58iの後継機種「NVR500」である。

NVR500について説明するヤマハ サウンドネットワーク事業部 開発推進部 企画・知財グループ 技師補の平野尚志氏

 「NVR」はNetVolante Routerの省略形でもあるが、「新しい価値を創造するというNew Value Routerという意味もあります」(平野氏)という意気込みを表した。また、「500」に関しては既存の5x系と呼ばれていたNetVolanteシリーズの桁を1つ増やしたものだという。こうした鼻息の荒い名前に比して、中身も、オールギガ、モバイルインターネット回線活用、ひかり電話、カスタマイズ対応、ファイル共有などの高い価値を提供する製品になっている。

58iからの正常進化でこうなった

 まずサイズは、19インチの半分の幅というRT58iとまったく同じ。RT58iの黒い筐体デザインを踏襲しつつ、「バイクのエンジンが露出したような感じ」(平野氏)というスレットがアクセントとなっている。背面にギガビット対応のLANポート4つ、WANポート1つのほか、ISDNのS/T点端子やU点端子、アナログポートなども温存されているのがヤマハルーターならでは。一方で、前面にはmicroSDスロットが新設されたほか、USBポートも2ポートに増えている。電源オフ時にもメモリのログを自動保存する電源スイッチも搭載されている。

前面はmicroSDスロット、USBポート2つ、電源スイッチなど

背面はLAN/WANポートのほか、ISDNやアナログ系のインターフェイスも温存

 製品の特徴としては、まずギガビットに対応。「最大200MbpsのFTTHサービスが増えているので、ギガビットは必須だと思いました」(平野氏)。さらにNTT東西の「ひかり電話」も利用可能。アナログインターフェイスに電話機をつなぐと、ひかり電話のサーバーを経由して、音声通話が行なえる。ISDNからひかりの時代に移っても、「電話も、インターネットも、この1台に統合したオールインワンルーター」というコンセプトは有効というわけだ。

 また、モバイルブロードバンドに対応し、USBポートにデータ通信端末を接続できる。「RT58iにもUSBポートはあったのですが、メモリの利用前提だったので、給電能力が小さかったんです。NVR500では通常のUSBポートと同じ給電能力を持っているので、さまざまなデータ通信端末でつなげます」(平野氏)という強化が行なわれている。有線回線が提供されていないエリアやバックアップ回線の利用が想定されており、NTTドコモ、イー・モバイル、IIJモバイル、日本通信、ソフトバンク、ウィルコム、NTTコミュニケーションズなどのデータ通信端末で動作確認を行なう予定となっている。その他、USBポートにHDDを接続し、ファイル共有経由で利用することもできる。「同期機能があるので、Syslogや設定ファイルなどを他のNVR500と共用することが可能です」(平野氏)。

NTTドコモのデータ通信端末もハードディスクも利用できる

 さらに、顧客環境をカスタマイズするためのLuaスクリプトにも対応した。これは今年のInterop 2010で「Twitterでつぶやくルーター」を実現した機能で、上位機種にはすでに搭載されている。「ルーターの動作を制御することもできますし、HTTPのクライアントが入っているので、外部のサービスと連携することも可能です」(平野氏)ということで、通信機器をプログラムで制御できる。たとえば、固定回線がダウンした際に、複数の3Gのデータ通信端末を自動識別するよう登録したり、Webサービスに稼働状況をポストするといった処理のほか、利用者ごとにカスタムGUIを提供することも可能だという。

ハイエンド個人に戻ってきて欲しい

 NVR500の価格はオープンプライスだが、RT58iと同じ3万6800円程度の実売を予定しているという。こうした価格設定から、ユーザーはかなりの割合でビジネス用途だと思われるが、平野氏が考えるメインターゲットはやはり個人ユーザーだという。「もともとNetVolanteは、個人でも、ビジネスでもない『SOHO』という、とても曖昧なターゲットを狙っていったんです。その後、個人の方は低価格な製品に移っていったので、結果的にビジネスで使っている人は多いと思います。でも、私としてはゴリゴリ使いこなしているハイエンド個人の方々に戻ってきて欲しいと思っています」という。Interop 2010で「Twitterでつぶやく」という、あえてビジネスで役に立たない(立ちにくい)機能をアピールしたのも、まずは、この新しいルーターで遊んで欲しいという意図が込められていたわけだ。2010年の10月下旬を予定しているという発売が待ち遠しい。

初出時、「さらにNTT東西の「ひかり電話」の認定も取得。」という表現がありましたが、NTTのテストベッド環境を用いた接続確認を行なったという意味で、ひかり電話の技術認定はないとのことです。本文は修正済みです。お詫びして、訂正させていただきます。(2010年8月24日)

■関連サイト

カテゴリートップへ