四本淑三の「ミュージック・ギークス！」 第33回

あなたの声で歌うソフト「UTAU」の奇妙な世界

答えが一つじゃない音声合成は面白い

――　先日もSIGMUS^※があったりして歌声合成は盛り上がっているようですが。

飴屋　私の見方では盛り上がっているというより、初音ミクのキャラクター人気に後押しされて盛り上がった背景があるんで、情報処理研究の進化するスピードと、ボーカロイドがメディアで消費されるスピードは比較にならない。10年前の研究を発表しても喝采を受ける世界ですから。そういう意味での危惧はあります。

^{※ SIGMUS : 音楽情報科学研究会のこと（公式サイト）}

SIGMUS

――　音声関連の技術は日進月歩で急には進みませんからね。それで研究者はプレゼンが上手くなっちゃったり。

飴屋　私が思うのは、潜在的にこの分野に興味を持っていたり、大学で何をやっていいのか分からない人達が、こういうことを研究すればいいんだと、この機会に気づいてくれたらいいと。それが今後も十年、二十年続けばいいなと思っています。

――　SIGMASのニコ生を見て、この世界を初めて知った人達は多かったみたいですね。

飴屋　それはありますね。UTAUで原音設定^※を頑張ってくれている人がいて、感性工学を学んでいる学生さんらしいんですけど、UTAUにのめりこむようになってからでしょうね、ツイッターの呟きでは音響関係の講義には興味津々でもっと深く学びたいような雰囲気でした。SIGMUSも筑波まで行って参加してしまいましたし。

^{※ UTAUの原音設定 : 原音の発音開始のタイミングやオーバーラップなどの区間を細かく設定できる。詳しくは公式サイトで}

公式サイト。発音に関するこまかな設定が載っている

――　そのうち初音ミクが、ロボット研究者の鉄腕アトムみたいな存在みたいに言われるのかも知れないですね。

飴屋　そう。これで若い人が入ってくればいいと思いますよ。