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ヤフーとグーグルが提携、アルゴリズム検索技術にGoogleを採用

2010年07月27日 15時30分更新

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ヤフー株式会社とグーグル株式会社は2010年7月27日、日本における検索事業において提携すると発表した。ヤフーはグーグルのアルゴリズムサイト検索技術と検索広告(アドワーズ広告)を採用する。

グーグルは2001年から2004年にヤフーに検索エンジンのライセンスを提供してきたが、米Yahoo!独自の検索エンジン採用に伴い、一度は終了した。今回、ふたたびライセンスを供与し、Yahoo!JAPANでGoogleの検索エンジンが採用される。

ヤフーがプレスリリースで紹介している影響範囲の説明図。ウェブ検索、検索連動型広告が米グーグルのエンジンに変更される

米国でのYahoo!同様に、検索結果のUIはヤフーがコントロールし、バックエンドをGoogleが担当する。従って、自然検索結果はGoogleと同等になる一方で、外観はヤフー独自のものが採用されることになる。オークションやショッピング、知恵袋といったヤフー独自の編集コンテンツの結果もGoogleの検索結果に統合して表示される。さらに、検索広告プラットフォームもアドワーズ広告を採用する。


なぜマイクロソフトではなく、グーグルを選択したか

米Yahoo!と米Microsoftは2009年に検索事業提携を発表し、Yahoo!の検索技術と広告プラットフォームをMicrosoft(BingとMS adCenter)に切り替えることを決定した。合意に基づき、北米地域では今年のホリデーシーズン前の完全移行を目指した移行手続きを開始したほか、全世界でも2012年の完全移行を目指している。欧州米国をはじめ、グローバル市場においてGoogleは圧倒的な地位を築いており、これを追撃し、競争力を維持するための決断としてYST(Yahoo! Search Technology)の事実上の放棄とBing / adCenter採用だったわけだが、ヤフーがその目の敵であるグーグルと手を組むのは奇妙に見えるかもしれない。

しかしヤフーはソフトバンクが約40%の株式を保有するという資本関係の違いがあり、米国の提携内容に縛られないという事情がある(これは中国・アリババグループも同様)。今回は、ヤフーが検索サービスのバックエンドに採用するYSTの開発継続が望めないこと、日本市場という限られたマーケット向けに検索技術を開発・運用していくことは難しいことから、新たな検索パートナー探しを模索した。先述の理由によりマイクロソフトを選ぶ必然性はない。そこで日本で候補となる検索パートナー - マイクロソフト、グーグル。もちろんネイバーやバイドゥといった検索エンジンも存在するが、検索ビジネスはアルゴリズムサイト検索技術と検索広告が同一のプラットフォーム上で動作する方が好ましいことから、両社の分離はあり得ない。候補はグーグルとマイクロソフトに限られ、そしてグーグルが選択された。

今回の決定は、ヤフーは約4,200万人の利用者がいる検索サービスを通じて広告収益を上げられればよい、検索そのものにこだわりを持っていないことの反映であろう。利用者を維持し、今後も優れた検索サービスを提供していくのであれば、アルゴリズムサイト検索技術は将来にわたり継続的な技術革新が望め、利用者ニーズに適うサービスを提供できるパートナーが望ましい。すると、十分に実績があり、近年は日本ローカライズ展開も加速しているグーグルが最適と判断したのだろう。Bingは米国リリースから1年あまり経過しての正式版移行が象徴するように、スピーディな展開が望めないことと、日本語ローカライズという観点からも問題点が少なくない。将来化けるかもしれないBingよりも、現在ベストなグーグルを選ぶのも合理的だ。

検索連動型広告は、1つのプラットフォームに統一されることになる。アドワーズの管理画面からすべて出稿管理が行えるようになるならば、ガイドラインも1つになり、オンライン広告主も手間が省けてうれしい面があろうだろう。

マイクロソフトの対応は

2008年6月にGoogleとYahoo!が検索広告事業の提携を発表したものの、米政府の規制当局による、独占禁止法違反に関する懸念から最終的に断念した。日本でヤフーとグーグルが提携すると、市場の90%をGoogle1社が独占することになる。米国同様の動きを見せるだろうが、仮に認められた場合の懸念点は、検索市場の1社寡占化、Googleの影響力が強くなりすぎる点だ。


検索マーケティングへの影響は?

まずSEOにおいては、サイト管理者にとってうれしい知らせだろう。

なぜなら、最近のYahoo!検索は、

(1) rel=canonicalを指定した時の処理が適切に行われない
(2) 一般的な正規化処理が正常に行われない
(2) リダイレクト処理時の評価転送に不具合がある
(3) リダイレクト処理そのものの不具合
(4) かつて欧米で流行り、すでに廃れた小手先のリンクスパムで簡単に検索上位が表示可能であるなど例を挙げたらきりがないが、全般的にブラックハットな最適化手法にきわめて脆弱な検索アルゴリズム技術
(5) 明らかに検索システム側の不具合によると思われる、突然のインデックスからの消滅など、インデックスにかかわる問題(e.g. トップページが突然消滅する)
(6) インデックス速度が遅い。話題性の高いキーワード検索を行った際に、トピカルなページが表示されるまでの時間がGoogleと比較して数時間単位で遅れている
(7) 一部のキーワードにおいて順位が完全固定化されている

など、他社の検索エンジンでは考えられない不具合が少なくない。検索技術がGoogleに変わることによって、上記の問題はいずれも解消されるため、しょうもないことに悩む時間も減りそうでうれしい限りだ。

なお、Googleにおいては、巷でいう「Yahoo!SEO対策」で話題に上るような、小手先のリンク構築テクニックの多くは通用しない。手段も選ばず、ブラックハット手法を中心に展開してきた一部のSEO業者にとってはつらいニュースかもしれない。

なお、今回の発表を見る限り、関連検索ワードやキーワード入力補助関連はYahoo!JAPANが開発を継続するように読める。つまり、これらをターゲットとした一部悪質業者によるスパム広告商品は消滅しないかもしれない。


Yahoo!検索プラグインの今後は?

2008年12月に日本展開が発表された、Yahoo!検索プラグイン。今年春には一般開放された同サービスだが、バックエンド技術が変更されることで今後の展開は不透明だ。

グーグルは検索プラグインと同様に、検索結果にリッチな詳細情報を表示する「リッチスニペット」という機能を正式に提供している。ヤフー同様、マイクロデータやRDFなど、いわゆるセマンティックウェブを活用した検索サービスだ。機能的にも検索プラグインと比べて劣る面もないばかりか、「検索アプリ」と呼ばれるプラグイン開発が不要な点、ユーザにそのプラグインをインストールしてもらう必要がない点においてリッチスニペットの方が仕様的にうれしい面もある。

以上の点から、検索結果に優れた詳細情報を表示する機能自体は残っても、それはリッチスニペットに置き換わる可能性が高いのではないだろうか。

ちなみに米国でもBingとの間で同様の問題が発生している。提携発表直後に、Microsoft・シニアバイスプレジデントのYusuf Mehdi氏が、Yahoo! SearchMonkey(米国名称)を取り入れる意向を発表したものの、未だに正式決定はなされていない。


ネットレイティングス MegaView Search 2010年4月より

※ この記事は随時更新されます


公式発表 Yahoo! JAPAN のより良い検索と広告サービスのために
http://googlejapan.blogspot.com/2010/07/yahoo-japan.html

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