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山谷剛史の「中国IT小話」 第76回

中国の住宅から考えるIT事情

2010年07月27日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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 CNNIC(China Internet Network Information Center)が中国のネット利用者の最新統計を発表した。それによれば、ブロードバンド利用者数が3億6381万人、携帯電話でのネット利用者を含めれば4億2000万人になった、としている。

中国の人口は13億2000万人なので、人口の27.5%がブロードバンド(とはいっても1~4Mbps程度なのだが)を利用していることになるが、「金持ちがネットを利用し貧乏人はネットを利用しない」ではなく、「若者は利用、中年以上は利用しない」という、金銭的な問題よりも興味を持っているか否かで普及が決まっている状況にある。

 ところで中国で住宅バブルがあったという話は聞いたことくらいはあると思う。住宅バブルは上海や北京などの大都市では一旦は落ち着いたが、内陸の100万都市やそれ以下の都市では引き続き住宅価格は値上がりの一途を辿っている。

 住宅価格が上がると信じる人々が多いことが需要に繋がっているが、また一方で、いまどきの生活を送るべく、10~20年前、もしくはそれ以前の社会主義時代に“割り当てられた”2DK程度の古くて狭い集合住宅から、“大金をはたいて手に入れる”新しくて広い3LDK以上の集合住宅に移りたいという意識が需要を生んでいる。

 結婚を機に新居を購入するパターンが最も多い。親に金を借りるか貰うかして、マイホーム購入後、片親も一緒に滞在しはじめる。いわゆる二世帯住宅になるわけだ。

 中国の住宅事情をビジュアルで把握するには見取り図だとわかりやすい。百度中国で「3室」と入力すれば、「3室2斤~」と予測表示されるので、予測された文字列を検索キーにして画像検索してみるといい。

「3室2斤2ヱ」で検索。できれば「大図(サイズ大)」でいまどきの中国の家の間取りをじっくりみてほしい

「3室2斤2ヱ」で検索。できれば「大図(サイズ大)」でいまどきの中国の家の間取りをじっくりみてほしい

 特に「3室2斤」で画像検索すれば、「3室2斤2ヱ」という名の見取り図が多数表示される(検索結果)。ここで書いてある「2斤」はLD、「ヱ」はトイレの意味(日本の漢字では「衛」)である。つまり「3室2斤2ヱ」は「3LDKトイレが2ヵ所」であり、それがスタンダードなのである。

テレビメーカーは薄型テレビの販売に大攻勢をかけているが……

テレビメーカーは薄型テレビの販売に大攻勢をかけているが……

ダイニングテーブルからリビングルームのテレビは遙か遠い

ダイニングテーブルからリビングルームのテレビは遙か遠い

 2LDKでなく2DKでは、食事の場と憩いの場が近接している。リビングルームが狭いから、ダイニングテーブルから容易にテレビが見える。ところが中国のいまどきの3LDKの家というのは百数十m2クラスが当たり前なので、その居間にしても、一般的な日本のリビングルーム(L)+ダイニングルーム(D)の2、3倍の広さがある。そんなわけで、時流に乗った中国の食卓での家族の団らんにテレビは用いない。

 テレビを見るタイミングというのは食事の前後となる。しかし冒頭で「若者はネットを利用」と書いたように、物欲のある若者は部屋に籠もってPCに向かってしまうのが普通の光景だ。

 この背景には、デフォルトで「中央の中央電視台(CCTV)数チャンネル」+「中国各省を代表するチャンネルが数十チャンネル」+「おらが省、おらが都市のチャンネルが各数チャンネル」という多チャンネル環境の上に、キラーコンテンツとなる話題の番組が極めて少ないことが挙げられる。「映像コンテンツを見るなら、PCで“優酷”(YOUKU)だの“土豆”(TUDOU)だのの動画共有サイトを見ていた方が遙かに面白い」と部屋籠もりするのも理解できる。

レノボからは、日本より中国で先行して20インチ前後のモニター一体型PCが登場したが、居間ではなくて寝室にPCを置くニーズが中国であるためだ

レノボからは、日本より中国で先行して20インチ前後のモニター一体型PCが登場したが、居間ではなくて寝室にPCを置くニーズが中国であるためだ

 さらに、そうした「無駄に多チャンネルで面白くない番組」ばかりの状況に、地デジ化が追い打ちをかける。しかも地デジ化することで受信料が値上がりするのだから、たまったモノではないと思う消費者も多い。この辺については「暗雲漂う中国での地デジ化」を読んでいただきたい。

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