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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第51回

開発者に聞く 2画面librettoはいかにして生まれたか

2010年07月16日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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「2画面」と「小型」の間で揺れる理想と現実

 W100には、ひとつ大きな問題がある。それは消費電力と発熱だ。すでに述べたように、この手の商品には珍しく、2コア/2スレッドタイプのCPUであり、Core i3の下位にあたる、比較的パワフルなものが使われている。

 その狙いは「メイン機としても使えるパフォーマンス」にあるわけだが、現実的に言えば、それだけではなかったようだ。

三好「現実的な話としては、Atomでは簡単に2画面が出せないんです。そこで無理をして2画面にするのか、バッテリー的に厳しくても性能を上げるか、という選択肢を迫られました。そこで我々は後者を選んだ、ということです」

「確かにその分、バッテリー駆動時間はかなりのトレードオフとなっています。そこは今後、もうひと頑張り必要なところだと感じています」

 現状でW100のバッテリー駆動時間は、標準バッテリーで最大2時間、大容量バッテリーパック(以下Lバッテリー)使用時で約4時間。どちらもJEITA測定法1.0の値なので、実働時間はこれよりも短くなる。

下側の画面は内部では、一般的なノートパソコンで言うところの『外部出力』を使って表示しています(渡辺)

渡辺「実はパネル自体の電力消費以前に、『2画面出力』そのものがバッテリーを消費しているのです。下側の画面は内部では、一般的なノートパソコンで言うところの『外部出力』を使って表示しています」

「1画面表示だけなら、GPU内部のバッファーからバーストでメインメモリーへ転送できるので、メインメモリーを『セルフリフレッシュモード』と呼ばれるパワーダウンモードに切り換えて、消費電力を落とせます。しかし2画面では内部のバッファーが使えないため、メインメモリーの消費電力が落とせません」

三好「現状では、我々が選択したチップでは超えられない壁です。スペック上はJEITA値で最大4時間(編注:Lバッテリー使用時)。実使用で2時間は厳しいが、なんとかそれに近づけられるよう、最終調整で努力しています」

「例えばWindows 7では、画面がオートオフになるまでの時間を『1分未満』に設定できません。そこで東芝独自の制御方式で、下画面のバックライトをより早くオートオフさせて、電力消費を下げています。もちろん、(2画面を1画面として使う)全画面表示で、頻繁にオートオフが働くのは不便ですので、むやみに効かないように自動設定しています」

「また、上画面だけの表示(シングルディスプレイモード)にすれば、弊社のほかのモバイルノート並の省電力設定が働きます。ですから4セルバッテリーでも、JEITA測定法で3時間はいけるはずです。シングルディスプレイモードに簡単に切り換えられるようにするユーティリティーも付属させます」

 マザーボード部分は上側のボディーに入っているため、本体下部はほとんどがディスプレーとバッテリーで占められている。Lバッテリーは下方向に伸びる形なので、多少分厚くはなるが、意外にもデザイン的な差違は小さい。

二宮「Lバッテリーだから出っ張る、といったかっこ悪いことはナシにしようということで、最初からLバッテリーもセットでデザインしています。バッテリーに刻み込まれた小さな突起は、すべて東芝の『T』の字になっているんですよ。25周年モデルなので遊びを入れてみようと」

三好「社内でも気付いてくれる人が少ないくらい細かい話ですが(笑)」

Lバッテリーを装着した状態

Lバッテリーを装着した状態(写真下)。Lバッテリーは分厚くなるが、デザインの印象はさほど変わらない

バッテリーの裏面についている細かな模様は……

バッテリーの裏面についている細かな模様は、東芝の「T」の字。拡大してご確認を

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