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クラウド時代の舵取りをどうする?

シマンテック新社長が語る「水平展開こそ活きる道」

2010年07月09日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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7月8日、シマンテックは5月に新社長に就任した河村浩明氏による戦略説明会を開催した。セキュリティ、データ保護、ストレージ管理という3分野への注力を継続するとともに、パートナープログラムの強化やクラウド分野へのチャレンジなどを進めていくという。

水平展開型戦略を基本に据える

事業戦略を語るシマンテック 代表取締役社長 河村浩明氏

 河村氏は、EMCジャパン、日本オラクルの執行役員、サン・マイクロシステムズの代表取締役社長などのIT企業の要職を歴任し、2010年5月にシマンテックの代表取締役社長に就任した。挨拶に立った同氏はキートレンドとして、すでに麻薬取引と同じ規模となったサイバーアタックの脅威、そしてIT資産の所有から利用へのシフト、システム中心から情報中心のモデルへの移行などを挙げた。そして、こうした大きなトレンドのなか、セキュリティ、データ保護、ストレージ管理という3つの基幹製品領域に今後も注力していくと述べた。「現在、シマンテックは世界第4位のソフトウェア会社に成長し、約6000億円の年商を挙げるまでになった。そしてこのうち900億円をR&Dに投資している。こうしたテクノロジー指向の方向性は今後も変わらない」(河村氏)。

 また、同社の基本戦略として、他社との協業を中心にした水平展開型戦略を挙げた。河村氏は「1社ですべてできますという垂直統合型モデルをとる企業も多いが、私たちはパートナーとの提携による水平戦略でいく。どちらも一長一短あるが、ユーザーはいろんな選択肢を求めていると考えている」と述べた。

 そして、河村氏は本年度の重要施策として、以下の4つを掲げた。

本年度の4つの重要施策

パートナーにおけるシマンテックシェアの向上
パートナープログラム「SPP(Symantec Partner Program)」を一新。取り扱い額のみではなく、アーカイブ&検索、エンドポイント、情報漏えい対策、SMBなどに特化したパートナーを育成していく。2010年末には強化されたSPPを開始し、基準・特典の詳細を発表。2011年の第2四半期に新SPPの全面運用を開始し、新基準のレベル変更を行なう。その他、SSE(Symantec Sales Expert)やSTS(Symantec Technology Specialist)など認定資格者も拡充する。英語化されていた教育カリキュラムも、ほとんど日本語化を完了したとのことで、SSEを2400名、STSを600名に増やす予定。

新しいパートナープログラムの概要

OEMパートナーへのエンベデッドソリューション
OEMパートナーに対するソフトウェア提供を強化する。具体的には富士通のサーバーにストレージ管理ソフトウェア「Symantec FileStore」やHDDとBackupExec System Recoveryのような組み合わせを挙げた。
Big Enterpriseにおけるビジネス強化
通信事業者、金融、官公庁、教育、製造、物流・サービスなどの大企業へのハイタッチ営業強化を進める。単品の製品提供から、プラットフォームやスイート製品の提供への移行。また、日本での開発支援を行なうJDC(Japan Development Center)も活用を進めていく。
CSP(クラウドサービスプロバイダー)
クラウドに向けた戦略の推進。バックアップや高可用性を実現するプライベートクラウド向けの製品展開や、クラウドを展開事業者に対するインフラ支援を進める。また、シマンテックの技術や製品を用いたSaaSの推進を進める。「現状、クラウドの分野においてはビジネスモデルが確立していないのも大きな問題。一番営業利益のよいSaaSのベンダーでも、二桁いかないくらい」(河村氏)という認識もあり、シマンテックとしてはエコシステムをいかに構築していくかが今後の課題といえる。

 オンプレミスからクラウドへという流れのなかで、既存のビジネスモデルを大きく変更していく必要があるのは、先日戦略発表会を行なったマイクロソフトと共通している。2005年のベリタスソフトウェアとの統合以降、3人目の日本法人社長となる河村氏が今後どのように舵取りをしていくのか、注目される。

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